自民党ヘイトスピーチ対策PTで座長代理という立場の柴山昌彦衆議院議員がTVタックルで同性婚が少子化に拍車をかけるとデマを披露、ツイッター上などで大きく炎上しています。詳細は以下から。
問題となったのは3月2日深夜に放送された「ビートたけしのTVタックル」。この日は先日BUZZAP!でもお伝えした渋谷区の同性パートナーシップ制度に絡み、出演者らが同性婚の是非について討論となりました。
【追記あり】日本初、渋谷区が同性カップルに「結婚に相当する関係」と認める証明書を発行する条例案提出へ、世田谷区でも検討中 | Your News Online
その中で自民党のヘイトスピーチ対策プロジェクトチームで座長代理を務める柴山昌彦衆議院議員が持論を展開、同性婚を少子化と結びつけて「同性婚を制度化したときに少子化に拍車がかかる」と発言し、スタジオの出演者からは違和感を漏らす声が相次ぎ騒然としました。
この件はスタジオだけには当然収まらず、ネット上でもテレビの視聴者らを中心に多くのネットユーザーの怒りを買い、炎上は今も収まっていません。では柴山議員の発言のどこが問題だったのでしょうか。
まず、多様な原因によって引き起こされている少子化問題を、同性婚を求めるLGBTという属性を持つマイノリティに結びつけて「拍車がかかる」と悪者扱いしている時点で、性的マイノリティに対する差別を煽動する明確なヘイトスピーチです。
ヘイトスピーチとは人種、民族、血統、宗教、セクシュアリティなどの変更不可能もしくは困難な属性に対し、マイノリティへの憎悪と差別を煽動する言論及び表現を指します。
柴山議員は先にも述べたように自民党のヘイトスピーチ対策PTで座長代理を務めています。そうした立場の人間が意識的にか無意識的にかヘイトスピーチを行ってしまうというのは非常に大きな問題。また、ネット上での批判を受けた3日早朝には……
おっしゃるとおり。ましてや私の発言はヘイトなどではありません。 RT @sinXdeepest: 罵倒とヘイトは全く別物です。基本のキですよ。
— 柴山昌彦 (@shiba_masa) 2015, 3月 2
と発言しており、ヘイトスピーチとは何か全く理解していないことを曝け出しています。罵詈雑言とヘイトスピーチが別物であることは言うに及びませんが、BUZZAP!で先日繰り返し批判した曽野綾子のアパルトヘイト推奨コラムのように、乱暴な罵倒を含まないヘイトスピーチはいくらでも存在し得るものです。
【追記あり】産経新聞、今度は曽野綾子が人種差別(アパルトヘイト)を肯定するトンデモ全開コラムを掲載 | Your News Online
なお、この発言はヘイトスピーチであるだけでなく、事実に大きく反しています。柴山議員に対するツイートの中で繰り返し添付された画像がこちら。世界銀行統計に基づいた、同性カップル法的保障制定後の出生率の上下を示したデータです。
(クリックして拡大)
11カ国のうち出生率が上昇傾向にあるのが6カ国。ほぼ横ばいなのが3カ国。下降傾向にあるのはわずか2カ国に過ぎません。同性婚もしくはそれに類する同性パートナーシップ制度ができたとしても「少子化に拍車がかかる」ことはなく、むしろ出生率が上昇している国が半数を超えており、この時点で柴山議員の「同性婚を制度化したときに少子化に拍車がかかる」という意見がなんら科学的な根拠を持たないデマでしかないことが明確に示されています。
しかし柴山議員は「科学的に証明されてないことは当然知ってます」としつつも「制度化により全く影響がないとも言えない」などと、いわゆる「悪魔の証明」ができていないことを理由に食い下がり、「開き直り」「バカじゃないのか」などとコメントが殺到、さらに炎上が拡大しています。
科学的に証明されてないことは当然知ってますが、制度化により全く影響がないとも言えていません。RT @tundratiger:…同性婚問題で既に議論し尽くされた話題を出してコンマ数秒でカウンター食らって悶絶してる様を見ると。
— 柴山昌彦 (@shiba_masa) 2015, 3月 2
さらに柴山議員の発言の救いようのなさは「同性愛者に同性婚を認めなければ渋々でも異性婚をして子供を作るだろう」という思い込みの裏返しであるということが挙げられます。同性婚が制度化されることによって少子化に拍車がかかるという主張は「現時点で渋々異性婚をして子供を作っている同性愛者」の存在が想定されていなければ存在し得ない話です。
つまり柴山議員は「現時点で渋々異性婚をして子供を作っている同性愛者に同性婚を認めないことで、これからも渋々でも異性婚をして子供を作れ」と言っているに等しいのです。そこには同性愛者のセクシュアリティの尊重は全く見られません。ここにも多くの批判が為されています。
同性婚=少子化っていう発想にどうしても理屈をつけようと考えると、そう言ってるやつらは少子化解消のために無理矢理同性愛者を異性と結婚させて子供を産ませるつもりであるということしか考えつかないんですけどそれで合ってますか
— takeuchi (@takeuchi_gr) 2015, 3月 2
テレビタックルは深夜になってよい番組になった。今日の同性婚議論は、慎重派の柴山昌彦が明らかにバカに見えて良かった。いや、実際「同性婚を認めると少子化に悪影響」なんて「結婚が認められないから異性愛者になって子供を産もう」になるわけないんだから、言う奴は全員バカだが
— 笑の内閣上皇 (@waraino_naikaku) 2015, 3月 2
また、この柴山議員の一連の発言の問題はLGBTだけに留まりません。出演者の阿川佐和子の発言は非常に重要な指摘です。
柴山の「同性婚を制度化したときに少子化に拍車がかかる」発言の後、
阿川さん「私みたいに異性愛者で、子どもを産んでいない人間、子どもを産まない国の役に立たない人間は認めないって話じゃないですか!」
— てろめあ (@zaitokukaianti) 2015, 3月 3
つまり柴山議員の「同性婚を制度化したときに少子化に拍車がかかる」発言は結婚制度やそれによって結びつくパートナーを子供を生み、少子化を解消させる装置としてしか見ていないということに直接つながります。ツイッター上でもこの点に関して多くの指摘が寄せられています。
柴山議員の主張の根本的に恐ろしいところは、
「出産可能性のないカップルの結婚を認めない」
という点にある。
これは、同性愛カップルだけに対して投げかけられたものではない。
— タクラミックス (@takuramix) 2015, 3月 3
出産可能性を根拠に結婚を認めるの認めないのという話にしてしまうのは、
人間を、その存在によってでなく、機能によって選別し、序列をつける発想そのものだ。
機能を持たない人間は認めない。
その発想はあらゆる所に適用されうる。
議員が公にこんな発言をしたら少子化周辺に留まる話では無い。
— タクラミックス (@takuramix) 2015, 3月 3
柴山昌彦は「個人の権利である結婚」を「少子化という国の側の帳尻合わせ」の為に認めてはいけないと主張しているわけか
「お前ら同性愛者も全く性的興奮を覚えない相手と交尾して繁殖しろ」と言いたいわけだよね
幾ら綺麗事を言おうが「同性婚を認めたら少子化」論には他の意味は全く含まれていない
— 西大立目@普通の日本人 (@relark) 2015, 3月 3
柴山議員は同性婚の実現について「経済的な制度と違って家族制だとか文化伝統の問題というのは一挙手一投足には変えられないもの」との政府の立場からの説明もしていますが、「少子化に拍車がかかるから」という理由で同性婚にブレーキをかけるのであれば、それは文化伝統の問題ではなく国にとっての経済的、もしくは政治的な理由でしかありません。
自民党の柴山昌彦議員 「同性婚は少子化に拍車がかかる」発言で騒然 - ライブドアニュース
実際には結婚、出産を望んでいても現状および将来の経済的な理由、保育園や育児休暇などの社会的な理由で困難な層は少なくありません。そうした層への「経済的な制度」上の施策が進まないまま、同性愛者に少子化の原因を押し付けてスケープゴートにすることは到底許されるものではありません。
【追記】
TVタックルの当該議論の書き起こし記事を以下にリンクします。非常に有意義な議論なのでぜひご一読いただきたい内容ですが、それゆえに柴山議員の差別意識が浮き彫りとなっています。
ゲイのための総合情報サイト g-lad xx(グラァド) 『TVタックル』で同性婚について議論されました
こちらの記事でも同議論が取り上げられています。同性婚の目的、少数者の「幸福追求」などの切り口でも論じています。
自民党・柴山昌彦氏の同性婚をめぐる発言に激しい批判 DailyNK Japan(デイリーNKジャパン)
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