憲法審査会「しばらく休む」と自民党の船田元憲法改正推進本部長が逃亡を宣言



「戦争法案」を違憲と断じた6月4日の衆院憲法審査会。長谷部恭男教授を参考人として推薦した自民党の船田元憲法改正推進本部長が憲法審査会を当面開かないとする認識を示しました。詳細は以下から。


自民党の船田元憲法改正推進本部長は18日のBS日テレの番組に出演し「しばらく憲法審査会は、お休みをする予定だ。(休めという党内の)空気は感じている」と発言。

憲法審、当面開かぬ=自民・船田氏 - WSJ

違憲指摘の学者の人選「正直ミスだった」自民・船田氏:朝日新聞デジタル


BUZZAP!では先日自民党の佐藤勉国対委員長が憲法審査会を「平和安全法制に影響がないようにしていただきたい」との理由から「今後は開催しないでほしい。こちらからもめ事の原因を作るのはやめてほしい」と党国対会議で発言していたことを報じましたが、こうした意見が自民党内に蔓延していることが明らかになった形です。

自民党の佐藤勉国対委員長、「戦争法案は違憲」と断じた憲法審査会を「もめ事の原因を作る」として凍結を要請 | Your News Online

違憲であるとの指摘がこの参考人の3人のみならず、安保関連法案に反対し、そのすみやかな廃案を求める憲法研究者の声明呼びかけ人と賛同人が併せて200人を超え、報道ステーションのアンケートでも「戦争法案」を合憲と考える憲法学者は151人の回答中3人に留まっています。




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このように専門家のほとんどが明確に違憲であると断ずる法案が審議中である現時点では、むしろ憲法審査会は連日開催して議論してよい程に大切なもの。当然憲法に反する法律は制定できませんので、違憲であるとの声を真摯に聞き、明確な違憲性を取り除くことが政治家としての責任であるはずです。

違憲であるとの声にも目をつぶって、憲法を護る責任を放棄して、内閣の独自解釈に固執をするのは、まさに政治家としての責任の放棄だと言われても仕方がないのではないでしょうか。

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また、船田議員は自らが推薦した長谷部恭男教授が「戦争法案」を違憲であるとしたことについて

(以前)特定秘密保護法で(自民党の)参考人として来られたとき、ご理解のある発言だったので、少し安心して選んだ。正直、ミスだった。

最初に人選した方が具合が悪く、二番手になった。急きょ決めた。これ以上、お聞きにはならないでください。



など、人選ミスであるとして逃げ腰。ですが、当初予定していた佐藤幸治京大名誉教授は6月6日の1400人が集まった「立憲デモクラシーの会」のシンポジウム「立憲主義の危機」の基調講演で

「憲法の個別的事柄に修正すべきことがあるのは否定しないが、根幹を変えてしまう発想は英米独にはない。日本ではいつまでぐだぐだ(根幹を揺るがすようなことを)言うのか、腹立たしくなる」

安保法制:憲法学者が不信感 シンポに1400人 - 毎日新聞より引用)



と日本国憲法の根幹である立憲主義を揺るがす現状を厳しく批判しており、断られなかったとしても違憲の判断は間違いなかったでしょう。つまるところ、合憲とする学者が3人しかいなかったことからも、参考人の見解は日本の憲法学を代表しており、決して船田元議員の人選ミスということはありません。単に自民党の提出した法案が「憲法違反」というミスを犯していただけと言えるでしょう。

なお、菅官房長官が「戦争法案」を合憲とする憲法学者をたくさん示せなかったことは日本中の失笑を買いましたが、かろうじて示せた3人が全員とも安倍首相を始め内閣の8割近くが所属し、改憲を強く求める日本会議と深い関わりがあることが明らかにされています。

衆院憲法審査会で「違憲」と述べた参考人のひとりである小林節教授も長谷部恭男教授との共同会見の中で、日本会議と「戦争法案」を合憲とする学者について以下のように述べていることは注目に値します。

-新しい憲法解釈を支持する著名学者は、日本会議にみんな属している。影響力をどう見ているか。

小林:日本会議には知り合いがたくさんいますが、彼らに共通する思いは、第2次大戦で負けたことが受け入れがたい。その前の日本に戻したい。彼らの憲法改正は明治憲法と同じですし、今回も、明治憲法下の5大軍事大国となって世界に進軍したい。そういう思いを共有する人々が集まっていて、自民党の中に広く根を張っていて、よく見ると明治憲法下でエスタブリッシュだった人の子孫が多い。そうすると意味がわかるでしょ?

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明確な違憲性を突き付けられた「戦争法案」を、それでもなぜ安倍政権が執拗に成立させようと目論むのか、根はこうしたところにあるようです。

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