日本の学問研究の場がさらに不安定なものになってゆきます。詳細は以下から。
文部科学省が7月31日、国立大の新規採用教員の給与規定に2019年度以降に順次年俸制を導入していく方針を示しました。
これは新教員に限ったものではなく、既に在職している教員にも「本人の同意を前提」として適用を目指します。今秋にはガイドラインを策定して各大学に実施を促しますが、導入の進捗状況に合わせて運営費交付金の配分を連動させる、ある種の「人質」とも呼べる仕組みも導入予定です。
年俸制は業績評価により受取額が変動しやすくなるため、教員の意欲向上や人材流動化に繋がることが期待されていますが、専門分野で評価指標が異なっていること、また最先端の分野などでいったい誰が正確な業績評価を行えるかなどの問題が既に指摘されています。
この方針は、経営合理化を目指した04年の独立行政法人化後も年功序列の色彩が強い国立大の給与体系を抜本的に見直すためのものとされていますが、この時を大きなターニングポイントとして日本の学問研究は現在凋落の一途を辿っています。
2018年版の科学技術白書が「わが国の国際的な地位のすう勢は低下していると言わざるを得ない」と明言したことは既にBUZZAP!でも報じていますが、論文数でも予算でも日本の研究力の低迷は国が正式に認めざるを得ないレベルとなっています。
白書は政府に対しては若手研究者等が独創的・挑戦的な研究を進めるための環境整備や、知識・資金の好循環をつくるシステムの構築を求めていますが、大学教育や研究に対して付けられる予算は厳しくなる一方。その中でも多くの若手の研究者が有期雇用や非正規雇用扱いにされている現状は、日本の学問研究の将来性を著しく損なうものとなっています。
今回の年俸制の導入は不透明な業績評価による「減収の可能性」を含むものであり、次世代の研究者の待遇を更に不安定化させるものと考えざるを得ません。
ただでさえ先細りの日本の大学から人材までもがさらに逃げ出すような事態となれば、「人が資源」として先進技術を売りにしてきた日本の未来はさらに暗澹たるものとなります。まずは潤沢な予算を割き、若手の研究者に将来性の見込める雇用形態を保証する事が急務なのではないでしょうか?
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