今年のあの猛暑や立て続けの災害の前の調査だというところがポイントです。詳細は以下から。
NHKが2020年に開催予定の東京オリンピックのボランティアについての意識調査の結果を報じています。
◆参加希望と回答した人は1/4未満
これは笹川スポーツ財団がスポーツのボランティアに対する意識を調査するため、2018年3月にネットで全国の20代から60代の合わせて1万人から回答を得た「スポーツボランティアに関する調査」によって明らかになったもの。
それによると、大会期間中の競技会場や周辺でのボランティアを行いたいと希望するかという問いに「ぜひ行いたい」と「できれば行いたい」が合わせて23.1%、「あまり行いたくない」と「全く行いたくない」が合わせて60.1%となりました。
参加希望理由としては「日本で開催されるから」が4割弱、「スポーツが好きだから」「選手のプレーをそばで見たいから」がそれぞれ15%強となっています。
◆この結果すら「盛れてる」可能性
国を挙げて盛り上げているはずの東京オリンピックにボランティアとして参加したいと答えた人が全体の1/4にも満たないというショッキングな結果となりましたが、実はこの数字ですら多過ぎるのではないかと考えられる要素があります。
まず、調査方法が「調査会社の登録モニターを用いたインターネット調査」ということで、無作為抽出ではありません。また調査会社については匿名となっていることは脇に置くとしても、「積極的に自らモニター登録を行う」というメンタリティの人物像を考えると、ここに偏りがないと明言することはできません。
次に「全国の20代から60代」への調査ということで、「東京から遠くて実際に参加は無理でも気持ちだけはやってみたい」というタイプの人も「できれば行いたい」と回答できてしまいます。交通費のほとんどと最低10日分宿泊費は自腹のため、地方在住者の実際の参加へのハードルは極めて高いものとなりますので、この辺りも「盛れて」しまう一因と言えます。
そして調査が行われたのが2018年3月という時期にも注目する必要があります。速報値の公表まで6ヶ月掛かっている理由もここでは脇に置きますが、あれから半年の間にこの日本には多くのことが起きました。
6月の大阪北部地震、7月の西日本豪雨、9月には台風21号に北海道の震度7を記録する大地震など、立て続けに極めて大規模で激烈な災害が発生しています。
そして東京オリンピック開催時期である7月後半から8月に掛けては日本列島を記録的な猛暑が襲いました。7月には過去最大の熱中症での死亡者が発生し、小池都知事が打ち水や濡れタオルを推奨し、的外れなサマータイム導入論までが取り沙汰されました。
こうした中でネット上ではオリンピックを「中止」「返上」すべきだという声がこれまでよりも囁かれるようになっています。
「これだけ災害が続いているのだから予算を災害復興に当て、ボランティアもそちらに回すべき」「今ならオリンピック止めても世界中が納得してくれるはず」という災害復興を優先すべき声や「あんな暑い中でボランティアなんてできるわけないだろ」「ボランティアは経費自腹でブラックなのに役員は年収2400万円?」など五輪ボランティアのブラックぶりへの怒りなど意見は様々ですが、少なくとも3月と今では状況が全く違います。
オリンピックの開催の是非と五輪ボランティアへの参加希望については、現時点で改めて世論調査を行ってみる必要がありそうです。
◆学徒動員だけでは足りず企業からも「徴用」
実際に、五輪ボランティアの人手不足はかなり大きなものとなりそうです。既に高専生や大学生へのなりふり構わない「学徒動員」についてはBUZZAP!でも何度も言及しており、中高生への動員も計画されていることはお伝えしたとおり。
それに加えて企業に対してもノルマを設定した五輪ボランティアの「徴用」が始まっています。「東京2020オリンピックゴールドパートナー」の富士通や三井不動産が組織委員会からボランティア枠300人のノルマを課せられた事を日刊ゲンダイが報じています。
富士通はこの「徴用」に対して社員個人の「積み立て休暇や有休を利用してもらう予定」とのことで、通常業務を離れた炎天下での過酷な労働を「個人の都合」として行わされるという理不尽な方針が計画されています。
なお、東京オリンピックの国内パートナー企業は45社で各300人を「徴用」しても1万3500人にしかならず、8万人の目標には全く届きません。今後はそうしたパートナー企業の下請け、孫請け業者を中心に「徴用」が拡大しそうな気配ですが、規模の小さな企業ほど10日間も複数の従業員を抜かれる影響は大きくなります。
東京オリンピックは日本に取ってどれだけプラスになるのでしょうか?
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