大規模イベントの自粛要請などをめぐり、新型コロナウイルスの感染拡大対策の方向性が迷走しています。詳細は以下から。
◆政府が感染拡大防止のためにイベント自粛を「要請」
イベントの自粛要請の発端は、新型コロナウイルス感染拡大に伴って政府が2月26日にコンサートなどの大規模イベントを「この1~2週間が感染拡大防止に極めて重要だ」として2週間程度自粛し、中止や延期、規模縮小などの措置を取るよう呼び掛けたもの。
自粛要請の期限が切れる3月10日に安倍首相は「今後10日間程度これまでの取り組みを継続するようお願いしたい」として自粛の継続を求めていました。
ただし、これはあくまで自粛の「要請」であり、法的拘束力のある禁止ではありません。あくまで主催者の責任のもとに判断することを求めており、自粛に伴って生じる経済的な損失について政府は明示しませんでした。
イベント主催者側は中止や延期で極めて大きな経済的な打撃を受けることになり、出演者やスタッフなど関係者の多くも生活に大きな影響を受けることになります。
そのため、政府が責任を取らずに損失補償もなしに主催者に判断と負担を丸投げする「要請」には多くの批判と当事者からの阿鼻叫喚が投げかけられていました。
◆イベント自粛「一律要請はしない」と方向転換
こうした反応を受けてか、3月19日に開催された第8回目の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議ではイベントの開催について一律自粛は要請しないことが決められました。
ただしこれも地域の感染状況に応じて主催者が判断してほしいとされ、やはり同様に実質的な丸投げとなります。
これを受けてか、三連休には多くの大規模イベントが開催されました。東京オリンピックの聖火を東日本大震災の被災3県で巡回展示する「復興の火」が21日に仙台市で行われ、約5時間半の間に想定の5倍となる約5万2000人が観覧。聖火をひと目見ようと500mに及ぶ行列ができ、数時間並んで聖火と記念撮影などを行っていました。
また安倍首相が3月14日に「卒業式も安全面での工夫を行った上でぜひ、実施して頂きたい」と呼びかけていたこともあり、防衛大学校では3月22日に卒業式が行われ、安倍首相が出席してスピーチを行う一幕も。
加えて3月22日、「K1-1 WORLD GP」がさいたまスーパーアリーナで開催され、6500人が歓声を上げて試合を楽しんでいます。
桜の開花シーズンを迎えていることから、全国の公園などでは宴会こそ禁止されたものの、多くの人が花見に繰り出し、咲き誇る桜の花を楽しんでいたことが報じられています。
◆再び全国的イベントの開催自粛を要請するも方針は迷走
そんな中、菅義偉官房長官は3月23日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために大規模な全国的イベントの開催自粛を再要請しました。
「K1-1 WORLD GP」が開催されたことについては「『慎重な対応が求められる』との専門家会議の見解を踏まえ、引き続き慎重な対応をお願いする」と述べています。
厚生労働省も「大規模イベントに参加されていた皆様へ」とした呼びかけを行うなど、三連休で広がった新型コロナの感染拡大が終息に向かっているかのようなムードを引き締めるためとも言えそうですが、政府の対策はどうにもちぐはぐです。
3月22日に政府は30兆円規模の緊急経済対策として、外食や旅行代金の一部を政府が助成する案を検討。内容は飲食店やホテルなどの割引クーポンを発行したり、ネット上の予約サービスで支払いをした際に一部をポイントで還元したりするというもの。
これは不要不急の外出やイベントなどを自粛するように求めながら、外食や旅行を推進するという誰が見ても矛盾した方針となります。
また萩生田文科相は3月23日の参院予算委員会で一斉休校要請に関し「爆発的な感染拡大には進んでいない。原則として全ての学校が再開されることとなる」として全校再開を決めています。
「爆発的な感染拡大」を起こさせないための一斉休校だったはずですが、なぜかその「爆発的な感染拡大」が起こっていないことを理由に再開するという、こちらも奇妙な決定となっています。
諸外国では感染拡大防止のために外出禁止を含む強い措置が取られ、それで生じる損失を政府が補償するといった政策が取られています。
現在の日本の対策が有効に作用するものなのかは半月後の感染状況が明らかにするとも言えそうですが、甘く見て一度感染が広がってしまえば終息が限りなく遠のくことはイタリアなどの事例からも明らかです。
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