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警察庁は10日にダンス営業の規制緩和を議論する有識者勉強会の委員として7人を選出したと発表しました。この人選がクラブシーンやダンス業界とまったく無縁の場所での勉強会になるのではないかと大きな懸念が示されています。
警察庁が風営法のダンス営業の規制緩和について議論する勉強会の名前は「風俗行政研究会」。時事通信によると選ばれた委員は以下の7名です。
・NPO法人「日本ガーディアン・エンジェルス」の小田啓二理事長
学習院大法学部の桜井敬子教授(行政法) Wikipedia
・シンクロナイズドスイミング五輪銀メダリストで三重大の武田美保特任教授 Wikipedia
・東京都新宿区の中山弘子区長 Wikipedia
・電通の永江禎・法務マネジメント局長
・首都大学東京法科大学院の前田雅英教授(刑法) Wikipedia
・明治大理工学部の山本俊哉教授(都市計画)
電通の永江禎さんは民間企業の局長とのことでプロフィールやWikipediaでの記事はありませんでしたが、他の委員に関してはクラブシーンやダンス業界との関わりを示唆するような来歴、著書などは確認できません。
シンクロナイズドスイミングのメダリストである武田美保さんが辛うじてダンスに関係があると言えなくもないのかもしれませんが、風営法2条1項3号のいわゆる「ダンス営業」とも4号の「ダンス教室」とも関係はありません。
また、記事によると議論の内容として想定されているのは
議論は、飲食を伴わないダンス教室などの営業を風営法から除外することの是非や、クラブなど飲食を伴うダンス営業の時間規制(遅くとも原則午前1時まで)を緩和するか否かが柱。業界団体や、クラブが立地する繁華街の町内会などに聞き取りも行う。
とのことで、業界団体はあくまで蚊帳の外の聞き取り対象とされていることが分かります。
ダンス営業規制に対してはこれまでLet's Danceによって15万筆を集めた署名活動を始め、4月に大阪地裁で無罪判決の出された風営法で摘発されたClub NOONの裁判、規制改革会議によるダンス規制緩和の提言、ダンス文化推進議員連盟による改正案など、多くの取り組みがクラブ・ダンス業界からアーティスト、ファンらを巻き込んでなされており、これまでの多くの議論の積み重ねがしっかりこの勉強会に反映される必要があります。
クラブ・ダンス関係者を敢えて排除したとも取れる今回の警察庁の人選に対しては、「翌朝までの営業を認める」などの緩和と引き換えにむしろ何らかの形での規制強化を目論んでいるのではないかとの声も聞かれるほど。
もちろんダンス文化推進議員連盟は秋の臨時国会に向けて新たな改正案を策定中であり、そちらの案との摺り合わせも今後発生してくると考えられます。その際には自民党の内閣部会での「子供に夜中まで騒ぐことを許すことになる」のような理不尽な印象論を排し、実際の要望や問題を踏まえたものにしていかなくては、ダンス文化を東京オリンピックの際にクールジャパンのおもてなしとして賞賛される観光資源にはできないのではないでしょうか。
メダリストら7氏選任=ダンス規制の緩和議論―警察庁 (時事通信) - Yahoo!ニュース
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