マジックマッシュルームはたった1度で脳の失われた神経結合を再生させる、抗うつ作用のメカニズムが判明



うつ病にマジックマッシュルームが効くとする研究結果は数年前から何度も報じられてきましたが、脳にどのように影響するかについての驚くべき結果が明らかになりました。詳細は以下から。


現在、多くの国で違法薬物扱いのマジックマッシュルームやケタミン、MDMAやLSDなどは、5年ほど前からうつ病やPTSDの画期的な治療薬として大きな注目を集めてきました。

その中でもマジックマッシュルームに含まれる有効成分シロシビンは広く研究され、すでに「鼻スプレー」式の製品も登場。ただし長く違法薬物として研究が困難だったことから、効果のメカニズムの解明は道半ばの段階でした。


今回イェール大学のAlex Kwan准教授らの研究チームは、たった1回のシロシビンの投与が極めて迅速かつ長期間にわたる神経結合の増加をもたらすことを発見しました。

Kwan准教授はシロシビンの投与で神経結合が10%増加したことに加え、平均して10%大きくなっていると指摘。これは神経結合がより強化されたのを意味するとのこと。


脳内の神経細胞のシナプスにある樹状突起と呼ばれる他の神経細胞との接続部分は、神経生物学的な変化の中で育ったり縮小したりします。そしてうつ病では前頭前野皮質における樹状突起の数や大きさが減少することが知られています。

実験ではマウスにシロシビンを1回投与し、その後の脳の変化を2光子励起顕微鏡を用いて観察。その結果驚くべきことに、24時間後に対照実験のマウスに比べて樹状突起スパインと呼ばれる小器官の密度とサイズが増加。

さらに実験の1週間後もこのスパインの半分が残っており、34日間が経過した後でもおよそ1/3が残っていたことが判明しました。


こうしたスパインのほとんどが残った樹状突起がある一方で、ほぼ完全に失った樹状突起もあるなど、残存分布も興味深いものとなっていましたが、理由は現時点では不明とのこと。

加えて、シロシビン投与マウスは電気ショックを用いたストレス耐性テストでも対照実験のマウスよりも良好な成績を収めており、単に脳内の変化だけでなく行動にも影響が出ていることが判明しました。

これまでは効果があることが分かっていたもののメカニズムはまだ謎に包まれていたマジックマッシュルームの抗うつ作用。今回の研究でその仕組みにまで光が当てられたことになります。

(Photo by Zhi virgo
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