Visual by VJ Spike-Bloom
60年代のヒッピーカルチャーを彩るドラッグ、LSD。謎に包まれた脳への影響が世界で初めて可視化されました。
1960年代にティモシー・レアリーらの活動によって若者たちの間に広まり、ヒッピーカルチャーに決定的な役割を与えたサイケデリック・ドラッグ、それがLSD(編集部注:リゼルグ酸ジエチルアミドのこと。Lucy in the Sky with Diamondsの略ではない)です。
Lucy in the Sky with Diamonds (Official Video) HD 投稿者 robomartian
LSDを摂取した際には極彩色の幻覚が見えるなどの効果が知られている一方、自我の消滅する「忘我の境地」や大宇宙や神と合一する「ワンネス体験」をするケースも顕著。インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者らのLSDの脳への影響を調べる新しい研究では、こうした現象の根底にあるプロセスを探ろうとしています。
WALACEA crowdfunding video for Worlds first LSD Brain Imaging Study - YouTube
研究の共著者Enzo Tagliazucchi博士によると、研究チームはLSDの神経学的な効果を観察しようと努め、特に視覚的な幻覚に注目しました。しかし驚いたことに、最も特徴的なLSDの効果はそうした視覚効果ではなく、自我の溶解にありました。
実験では20人の健康なボランティアに対して75μgのLSDもしくはプラシーボの生理食塩水を注射し、fMRIを用いて被験者らの脳をスキャン。ASL、BOLD、MEGという3種類の測定方法を用いて脳の活性状態を調べ、その後被験者らの主観的なLSD体験を聞き取り、LSDの効果と神経学的プロセスをすり合わせようとしました。
その結果、LSDの最も顕著な特徴が「自我の溶解」であることが判明。これはつまり「自分自身を個別の存在であると認識する能力を本質的に失い、自己認識ができなくなる」ことを指します。この状態と極めて強い関わりを持つのが内観ネットワークとも表現し得るDMNと呼ばれる部位。DMNは脳の様々な自己に関する部位のネットワークで、自分自身を内省している時に活動的になります。
通常これらの脳のネットワークは安定して揺るぎないものなのですが、LSDの注射の後に起こったのは、このDMNと外部世界を認識する部位で処理される情報の過剰接続とも呼べる現象。これによって自分と外部の間にある自他の区別という確固たる障壁が揺らぎ、場合によっては完全に消滅してしまいます。
LSD注射後は目をつむり、安静にしていたはずの被験者らの脳は内省の時に活性化するDMNだけでなく、広範囲に渡って活性化していることが一目瞭然です。
そして興味深いことに、脳のこの状態が何に似ているかというと、赤ちゃんの脳の状態に非常に似ているとのこと。大人の脳は成長の過程で強力に区分され、無理矢理に仕立て上げられているけれど、LSDを摂取した状態の脳は自由で感じやすく、創造的な赤ちゃんの脳に近いというのです。
LSDの摂取によって今までの自分が死に、新たな自分に生まれ変わるという体験談もありますが、それは自我が溶解し、赤ちゃんのようなまっさらな脳に一時的に戻るという体験を意味しているのかもしれません。
Trippy Visual Rainbow Candy -Twisted LSD- Taste [HD] - YouTube
この研究は今後も継続されるもので、心理療法的な治療にとって画期的な成果を上げることも期待されます。以前BUZZAP!では違法薬物とされているケタミンが「即効性の抗うつ剤」としての絶大な効果を持っていることを伝えましたが、LSDによる研究が進むことでサイケデリック・ドラッグとされる向精神物質の精神疾患治療への応用の道を切り開くことに繋がる可能性もあります。
First Images of the Brain on LSD Show Ultra-Connected State of Consciousness
Study Shows How LSD Mimics Infant's Mind as Ego Dissolves Big Think
Researchers Have Imaged The Brain On LSD For The First Time IFLScience
(Visual by VJ Spike-Bloom)
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