絶滅危惧種のクロサイを救うために「クロサイを1頭ハントする権利」がオークションに


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地球上に5000頭しかいないクロサイという種を守るためなら、そのうちの1頭を大金持ちのハンターの趣味のために殺すことは許されるのでしょうか?大きな論争が巻き起こっています。


クロサイの角は中国を始めとしたアジア諸地域で万能薬とされ、ワシントン条約で取引が禁じられているにもかかわらず闇で高額で取引されています。そのため密猟者が絶えず、1970年代から個体数は90%も減少しています。

アメリカ合衆国テキサス州のハンターグループ、Dallas Safari Club(DSC)は、現在地球上に5000頭程しか生き残っていないこの絶滅危惧種のクロサイを守るために、なんと「クロサイを1頭狩ることのできる権利」をオークションにかけようとしています。

オークションの開始価格は25万ドル(約2500万円)で落札予想価格はおよそ100万ドル(約1億円)とされており、DSCが毎年行う定期総会(来年1月開催)で実際のオークションに掛けられる予定です。なお、落札金は100%ナミビアのクロサイ保護信託基金に寄付されるとしています。

DSC取締役のBen Carterさんによると、ナミビア政府は国立公園内のクロサイ1頭をハントする権利をオークションに掛けるために彼らのハンターグループを選んだとのこと。現在ナミビアには国内に現存する1795頭のクロサイのうち、年間5頭を狩る権利が認められています。

オークションの落札者は背景調査を受け、ナミビアの野生動物局のガイドを雇う必要があります。そしてナミビア政府が種の保存のために殺しても問題無いと認可した個体が狩りのターゲットとして選ばれます。

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アメリカ合衆国魚類野生生物局の許認可部門主任のTim Van Normanさんによると、ナミビア政府は既に子孫を残し、生殖能力の衰えた個体を狩りの対象として選ぶだろうとしています。



「クロサイは縄張り意識が強いため、年長のオスが若いメスを囲って若いオスの生殖を妨げます。そうした年寄りのオスを排除することで、生殖を増やすことが期待されます。より若いオスたちがメスを妊娠させることで、より多くの子孫を残すことができるでしょう」





Ben Cartarさんはまた別の説明を行っています。



「クロサイの死亡率は意外と高い。概して言えば、2000頭のうち2,3頭を狩ったところで群れ全体には何の影響もない。

これは現代的な野生動物のマネジメントの基本的な前提に立脚した話なのだが、この狩りには生物学的に意味があるんだ。個体数が問題なのであって、特定の1個体が問題なんじゃあない。非生産的な個体を取り除くことで、クロサイの個体数自体は間違いなく増えるんだよ」





なお、アメリカ合衆国魚類野生生物局によると、現時点ではアメリカ合衆国政府はクロサイの死体をアメリカ国内に持ち込む許可を出しておらず、最終的な決断がどうなるかは多くの要素が絡んでおり未定です。

このオークションに対し、動物愛護団体のHumane Society of the United States(HSUS)は反発し、死体の持ち込みを阻止しようとキャンペーンを開始しています。



「世界は密猟者に狙われ、絶滅に瀕したクロサイを始めとしたサイの保護への努力を中止している。スポーツハンティング目的の富裕層などお呼びではない。

野生のクロサイを射殺するのは停まっている車を撃つのと同じくらい簡単なものだ。富裕層がクロサイを保護したいのであればそのために金を使えばよく、わざわざ大口径の弾丸に変える必要はない」





としています。

「種を守るために1頭を犠牲にする」という考え方はヤマタノオロチに生贄として娘を差し出した神話を思い出させると同時に、「種全体の個体数が問題でそれぞれの個体はどうでもよく、非生産的な個体を排除するのはむしろ理にかなう」という発想は近年の新自由主義的な(もしくはブラック企業的な)考え方にも見えます。

一見合理的なもっともらしい選択肢にも見えますが、「金さえたくさん積めば、絶滅危惧種だって殺して遊べちゃう!」という選択は果たしてアリなのでしょうか?今後の成り行きが注目されます。

Texas hunters pledge to save endangered black rhinos by killing one Al Jazeera America

Texas 'Save the rhino' fundraiser auctions off chance to shoot endangered black rhino dead Mail Online

(Photo by gmacfadyen, Romain

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