海の家の音楽を完全禁止した逗子のビーチの海水浴客が1/6に大激減


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海の家のクラブ化が問題となり、市条例で海の家での音楽を禁止した逗子のビーチの海水浴客が昨年に比べて激減したことが分かりました。


神奈川新聞が報じたところによると、昨年までの海の家の「クラブ化」を防いで治安や風紀を改善するために海の家での音楽やビーチでの飲酒を禁止し、海の家の営業時間も18時半までと市条例で定めた逗子のビーチの海水浴場の来場者数が1/6に大激減していたことが分かりました。

「規制のビーチ ”2014夏@湘南」(6)逗子の海が来場者激減 組合に焦り「客戻るか」 カナロコ

湘南では大音量で音楽を鳴らして踊る、いわゆる「クラブ化」した海の家の騒音を始めとした苦情が一昨年頃から大きく取り上げらるようになりました。昨年は江ノ島を臨む藤沢市の片瀬西浜海水浴場で、海の家を営む業者らの組合である江の島海水浴場協同組合が市や警察当局の要請を受け、「音楽放送全面禁止」という自主規制を行ったことが話題となりました。

湘南の「海の家での音楽放送全面禁止」に見るクラブと近隣問題と風営法 BUZZAP!(バザップ!)

逗子のビーチはこうした自主規制とは異なり、今年3月に「安全で快適な海水浴場の確保に関する条例」という市条例として公布されたもの。海の家ではサウンドシステムを用いた音楽はもちろん、アコースティック楽器の演奏までもが禁じられています。

さらにはビーチでの飲酒、BBQも禁止され、海の家の営業時間もこれまでの20時半から18時半と定められました。例えば7月16日の日の入時間は18時57分ですから、この時間設定がいかに早いかがよく分かります。


安全で快適な逗子海水浴場の確保に関する条例及び施行規則 逗子市

この結果、今年の6月27日の海開きから7月16日までの来場者数は前年の同じ時期に比べて約7万1千人少ない約1万4320人でした。台風8号の悪天候も影響しているとの見方もありますが、実に1/6にとどまっています。

海の家経営者らによる逗子海岸営業協同組合は市条例に反発しながらも、「今、市との対立を深めてしまえば、自分たちを応援してくれている市民まで離れてしまう」として今月末までこのルールに準拠していくことを決めています。

音楽やお酒などは確かに日常の羽目を少し外すことになるでしょう。しかし、休日のレジャーとしての海水浴はもちろんただ海で泳ぐためだけに来るものではありません。ビーチで冷たいビールを飲み、好きな音楽に身を委ねて踊れるということもそのビーチを訪れたいと感じるきっかけのひとつにもなります。

そうした楽しみを自主規制でもなく上意下達で押さえつけることが、それまでその場所が持っていた魅力やポテンシャルを奪ってしまう悪い例と言えそうです。記事中のライフガードの男性の

「治安や風紀は改善しているよ。何しろ人が全然いないからね」

という言葉はこの状況に対し非常に示唆に富んでいます。風営法のダンス営業規制問題でも規制改革会議が提言する「東京オリンピック開催が決定している中、ダンス文化を活用した魅力ある街づくりを進め、海外観光客を呼び込む」という方針を鑑みるに、単に治安や風紀だけを考えるのではなく、多様な魅力ある街づくりという観点からの共存が必要です。

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