今は世界中で規制されているハードドラッグにもかつて合法だった時代がありました。その頃はどんなウリ文句の広告が出されていたのでしょうか。詳細は以下から。
コカ・コーラの最初期のレシピにコカインが入っていたり、覚醒剤がヒロポンいう名前で滋養強壮剤として売られているなど、今は違法薬物とされているハードドラッグも、発見当初は合法的に売られていたものも少なくありません。
では、その頃そうした物質はどのような広告の下で売りだされていたのでしょうか?
・コカイン
ローマ法王レオ13世がこよなく愛したとされるMariani Wineと呼ばれるワインはボルドーワインとコカの葉を用いた飲料。ショットグラス1杯辺りに6mgから7.2mg相当のコカインが入っていた計算になります。このMariani Wine、効能としては滋養強壮を謳っており、飲むとすぐに健康で強靭になり、活力が漲ってくるとされている辺り、まさにコカインの効き目そのものです。
また、それだけでなく喉の痛みや風邪、インフルエンザ用の錠剤、花粉症の薬、さらには歯痛や乳歯が生えるときの痛み止めにまで入れられていたというので驚きです。シャーロック・ホームズが愛用していたという作中の設定も頷ける広まり方ですね。
・ヘロイン
ヘロインと同様に阿片から作られるモルヒネは現代でも厳重な管理のもと鎮痛剤として医療用に用いられていますが、ヘロインは19世紀当時から頭痛や喉の痛みなどのための鎮痛剤、そしてまたもや幼児が乳歯の生えるときの痛みを止めて寝かしつけるためのシロップにも入れられていました。
確かに方向性としては大きな間違いではないのかもしれませんが、簡単に家庭で購入できてしまい、子供にまで使われていたというのはちょっとなかなか信じられません。
・覚醒剤
ご存知、大日本帝国時代の日本で開発されたのが覚醒剤。太平洋戦争の始まる1941年に大日本製薬がヒロポンを発売。特攻隊員に「突撃錠」としてヒロポンの錠剤が与えられた話は有名ですが、それ以外の戦闘員や軍需工場の作業員にも与えていました。
突撃錠、猫目錠―覚せい剤の軍事使用|覚せい剤問題の歴史4 弁護士小森榮の薬物問題ノート ウェブリブログ
効能としては疲労回復から眠気覚まし、作業効率アップ、頭脳の明晰化までが謳われています。ヒロポンは戦後の1950年までは合法で販売されており、焼け跡からのがむしゃらな復興を支えたという言い方をされることもありますが、その貢献度は定かではありません。
この時期には長谷川町子がサザエさんの前身となるマンガ「似たもの一家」でヒロポンを扱っていたりもします。作家の伊佐坂先生が執筆用にヒロポンを常備しており、ワカメとタラちゃんを思わせる子供たちが誤飲して「エヘラエへラエヘラ」と笑ったり東京ブギウギを歌い出したりとラリった様子を見せています。
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今はどれも違法なドラッグとして厳しい規制のもとにあるこれらの薬物。同じような効能を謳ったものは現在でも存在し、滋養強壮や疲労回復、眠気覚ましを謳ったコカインや覚醒剤などのアッパー系ドラッグはカフェインや、カフェインを含んだエナジードリンクとなり、痛み止めとしてはロキソニンのような薬剤や、場所によっては医療大麻などが用いられています。
私達が日常的に使っているこれらの薬品やサプリなども、ある日突然危険性が指摘され、規制されて過去のものになってしまうのかもしれません。
Empire of Drugs Vintage ads for when cocaine and heroin were legal Dangerous Minds
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