改正目前、風営法はどのように変わるのか、そして「遊興」とは何なのか?



今国会での改正を目前に迎えている風営法のダンス規制の改正。自民党の秋元司議員が内閣委員会での質問で詳細が明らかになっています。


既に閣議決定され、現在開催中の通常国会での可決が濃厚となっている風営法のダンス規制に関する改正案。ナイトクラブは店内の明るさが10ルクスを超えるかどうかで分類が変わるなど、これまでと規制の掛け方が変更になる他、「遊興」という聞きなれない言葉が登場したことでも話題となりました。

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果たして風営法はどのように変わるのか、そしてクラブに関わる人々にとってその変化はどのような意味を持つのでしょうか。

3月25日の内閣委員会ではダンス文化議員連盟に所属する自民党の秋元司議員が質問に立ち、警察庁の辻生活安全局長からそれらに関する方針の詳細を聞き出しています。

まず最初に秋元議員が指摘したのは、風営法改正案が可決されたとしてもその改正案だけで詳細な規制が決まるわけではなく、「国家公安委員会規則によってどのように運用されるかがポイントとなる」ということ。

秋元議員はそうした規則について警察庁がどのように想定しているかについて詳しく質問しています。

◆「遊興」とはなにか?
まず秋元議員が質問したのは、非常にあやふやに感じられる「遊興」とは何かということ。これに関しては質疑の当該部分をすべて書き下ろします。

秋元司議員:
ダンスだけでなく遊興全般を深夜行うことが禁止とされていますが、「遊興」とはそれでは何なのか?カラオケボックスは風営法の範疇ではない。遊興とカラオケボックスは何が違うのか。遊興の定義とは?

辻生活安全局長:
「遊興」という擁護は一般には「遊び興じる」という意味で、法律上では現行法でも既に使用しています。風営法の規制の対象となる「遊興」は「営業者の積極的な働きかけにより客に遊び興じさせる行為」と解釈しています。具体的には音楽を流して不特定の客にダンスをさせる行為、不特定の客にダンス、ショー、演芸等を見せる行為、歌、バンドの生演奏を不特定の客に聞かせる行為、のど自慢大会等の不特定の客が参加する遊戯、ゲーム、競技等を主催する行為がこれに該当するとして警察庁のサイトでも公表している。



警察庁はこのように、遊興とは「営業者の積極的な働きかけにより客に遊び興じさせる行為」全般を指すものと考えています。

例示された内容を見るに、ダンスに限らずかなり幅広いエンターテインメントが含まれています。ただし、この「遊興をさせる」ことが問題となるのは店内が10ルクス超かつ深夜営業を行い、酒類を提供する「特定遊興飲食店」の話。

深夜0時までの営業の場合、深夜営業でも酒類を提供しない場合は通常の飲食店として24時間営業が可能となります。

◆照度の測定方法
次に、照度をどのように測るかという質問です。クラブでは通常映像や照明による演出が行われますが、照度で規制のラインを引く場合はそのラインが何ルクスかということ、そしてどこをどのように測定するのかが大きな問題になってきます。

改正案では照度の基準は10ルクスとされています。しかしスマホアプリなどで計測してみると分かりますが、照度はほんの少し向きや場所を変えただけでも大きく変化してしまいます。よって、店内のどこでどのように測るかによって許容される明るさは全く違うものになってしまいます。

この質問に対しての答えは以下のとおり。

辻:
照度の測定方法は現行の風営適正化法施行規則第29条において、例えば食卓等の飲食物を置く設備がある場合はその上面、食卓等がなければ椅子があればその座面、それもなければ通常客が利用する場所の床面などで測定する旨が定められている。

客に遊興をさせる営業においては、演出のために照度を下げる必要があることが一般的です。この法案が成立した場合は、その後照度の測定方法を定めることとなるが、それに際して以下の2通りの業態については所要の配慮を検討している。

1つ目はナイトクラブのように、客に遊興をさせる部分で常に照明の演出を行う業態。これについては原則として遊興をさせる部分は照度の測定の場所とはせず、飲食のための客席のみで測定をし、客席が常に10ルクス超であれば低照度飲食店には当たらないとすることを考えている。

ただし例外として極端に客席を小さくして店内の殆どを暗くするという、いわば脱法的な営業を防ぐために飲食用の客席の面積が客室全体の面積の一定程度の割合以下となる場合は遊興させる部分でも照度を測定することを併せて考えている。

また、ショーパブのように、ショーの上演中にステージは明るくて客席の照度を下げる業態があります。これについては営業時間の半分以上客席の照度が10ルクス超であれば低照度飲食店には当たらないとすることを一案として考えている。

どちらにしても営業実態を踏まえた実質的なものとなるように検討を進めるとともに、改正法成立時には照度の測定法を施行規則で具体的に規定し、適切な取り締まりが行われるように都道府県警察を指導していきたい。



基本的には飲食をする食卓の上、なければ椅子の座面、椅子もなければ床面で計測するということ。そしてクラブでは遊興させる場所、いわゆるダンスフロアやDJブース内ではなく、バーやテーブル席で測定するということです。ただし、客席が極端に小さい場合はダンスフロアなどでも測定することを考えているとしています。

大バコであれば比較的対処もできそうですが、小バコではフロアの面積をどこまで削って客席にするのか、「極端に小さい場合」が恣意的に使われれば摘発の格好の理由とされてしまう可能性もあり、具体的な規定が必要です。

◆面積要件
それでは店はどの程度の大きさであれば問題ないのか。これまでは66平米と大バコ以外は全てモグリとなってしまう状況が続いていましたが、これに関しても具体的な数字が回答されています。

辻:
面積要件について、ダンスをする営業については66平米と定まっています。この度の改正法案では特定遊興飲食店営業、深夜に種類を提供させて飲食させ、ダンスをさせる営業だが、この面積の基準は国家公安委員会規則で定めるとしている。しかしあまりに小規模な店舗を認めると狭い客室内でいかがわしい行為が行われる可能性がある。

しかし他方である程度小さな店を認めないと、却って無許可の営業が横行する恐れがあるので、適切な基準を定める必要がある。その基準を定めるにあたって、特定遊興飲食店営業においては遊興をさせる中で接待の形になってはいけないということで、不特定の客を対象としたサービスを提供して頂く必要があることから、少なくとも16.5平米の2倍程度の客室面積が必要となるのではないかと考えている。よって、特定遊興飲食店営業の客室面積を33平米以上とすることを国家公安委員会規則で定めることが一案として上がっている。



特定の客の接待にならない「不特定の客を対象としたサービスを提供する必要」があるため、33平米という基準が提示されています。果たしてこのざっくり2倍という数字が妥当であるかは議論がありそうです。

なお、33平米は21畳半と考えると、小さなDJバーなどは少し厳しいかもしれません。

◆法改正後の動き
具体的な計測方法や数値などが警察庁からこの時点で明らかにされたことには大きな意味があります。法改正後の施行までの1年間に行われるであろう国家公安委員会規則の策定とその運用方針の如何についての議論のまさにスタートラインが見えたと言っても過言ではないでしょう。

ただし、地域制限の問題など今回明らかにされなかった論点もあり、引き続き情報を求め、妥当性を議論してより改正後の風営法とその運用を適正化していく努力は必須と言えます。

参考までに、昨年11月に閣議決定された時点での照度の測定方法、面積要件は以下のとおり。現在の警察庁の見解とほぼ同じものとなっています。

風営法改正案 クラブは店内の明るさで3つに分類  :日本経済新聞

なお、秋元議員は法改正に関して「深夜の遊興ができるようになったという画期的な改定だ」との認識を示しており、質問の中で

「遊興」はダンスだけでなくのど自慢や生バンドなども含まれるので、今深夜営業できないジャズバーなども深夜営業ができるようになっていくと。遊興のポテンシャルを引き上げることでこれは成長戦略になる。



と述べています。「遊興」の考え方が持ち込まれることによってダンスだけの問題ではなくなった風営法改正問題、より多くの業種にとってプラスになるかマイナスになるか、改正後が真の正念場となることは間違いありません。

実際の内閣委員会の動画は以下から。秋元議員の質問は1:34:25から始まります。

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