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安倍政権に批判的な報道を行うメディアに対する圧力の存在が次々と明るみに出ています。詳細は以下から。
先日BUZZAP!では元官僚の古賀茂明氏の発言に対する菅官房長官の放送法をタテにしたテレビ朝日への圧力についての記事を掲載しましたが、テレビ朝日への圧力が昨年の衆院選前から存在していたことが明らかになっており、さらには海外メディアへの外務省からの圧力も暴かれています。
菅官房長官、古賀茂明氏の「官邸のバッシング」を事実無根で不適切としながら「放送法」をタテにテレビ朝日に圧力 | Your News Online
◆衆院選前の報道ステーションに対する要請書
テレビ朝日への圧力があったとされるのは2014年11月24日の、やはり「報道ステーション」に対してのもの。自民党の福井照報道局長の名前で「アベノミクスの効果が、大企業や富裕層のみに及び、それ以外の国民には及んでいないかのごとく、特定の富裕層のライフスタイルを強調して紹介する内容」であると批判する要請書を送付しています。
また、前述の菅官房長官と同様に放送法を持ち出し「意見が対立している問題は、できるだけ多くの角度から論点を明らかにしなければならないとされている放送法4条4号の規定に照らし、特殊な事例をいたずらに強調した編集及び解説は十分な意を尽くしているとは言えない」などと批判しており、「公平中立な番組作成に取り組むよう、特段の配慮を」とテレビ朝日に対して要求しています。
政権与党の報道局がメディアの政府に批判的な報道に対し、放送法を持ちだして「公平中立」を求めることは圧力と呼んで差し支えないもの。自民党報道局は要請書を送ったことは間違いないとしながらも、毎日新聞の取材に対して「報道に対する圧力ではないかと言われるが、文面を見ればそういうものではないと理解してもらえると思う」と回答しています。
テレビ朝日 衆院選前、自民が中立要請 アベノミクスで - 毎日新聞
なお、同日に自民党の谷垣幹事長はこの問題に対して「言論の自由があり、我々はできるだけ圧力と捉えられないよう相当注意して振る舞っているつもりだ」と述べていますが、いかに「公平中立」という言葉を用いようと、政権与党が放送法を持ちだして「特段の配慮」を要求している以上圧力と言う他なさそうです。
テレ朝 谷垣氏「圧力」を否定 「公平中立な」番組要請 - 毎日新聞
◆ドイツ紙の東京特派員からの指摘
また、ネット上で先日から話題になっているのがドイツの保守系新聞「フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング」の東京特派員Carsten Germisさんが離任に際して記したコラムです。
FCCJ - On My Watch(英語)
Germisさんはコラムの中で日本について「今私が離れようとしている国は2010年の1月に来た国とは違ってしまっている」と述べます。
外務省やある種の日本のメディアにとって、Germisさんは自らが他のドイツのジャーナリスト達と同様に、不快な批判記事しか書けない「日本叩き屋」と認識されるようになった。そして日経新聞ベルリン特派員の言葉を借りれば、日独両国間の関係が「友好的でなくなった」責任は我々にあると考えているようだ。
と外務省とメディアの姿勢に疑問を投げかけます。そしてGermisさんは外務省から自分のみならず、本国の編集部に直接圧力がかけられた事件についても同コラムの中で記述しています。
5年前には考えられなかった新たな事態は、外務省からの攻撃が私自身のみならずドイツの編集部に対してまで及んだことだ。私が安倍政権の歴史修正主義について書いた批判的な記事が掲載された後、編集部の外交政策のシニアエディターのところに日本のフランクフルト総領事が訪れ、「東京」からの異議を申し立てた。彼は私の記事が中国の反日プロパガンダに使われていると説明したのだ。
さらに悪いことに、90分に渡る冷ややかな会合の後にエディターが総領事に対して記事が間違いである証拠を求めたのだが、総領事からの回答は得られなかった。「金の絡んだ問題であると考えざるを得ない」と外交官は言った。これは私と編集者と本紙全体への侮辱にほかならない。彼は私の書いた記事の切り抜きをフォルダから取り出し、私が中国のビザを取得するために、こんな親中プロパガンダの記事を嫌々ながらも書く必要があると解釈していることを述べた。
私が?北京に雇われたスパイ?私は中国に行ったことがないばかりかビザを申請したこともないのに?これが安倍政権が日本の目標を世界に理解させるための新たなアプローチだとしたら、それは前途多難であると言わざるを得ないだろう。
(FCCJ - On My Watchより引用・拙訳)
政権に対する監視と批判はメディアの最も重要な役割のひとつであり、Germisさんが行っていることはまさにその役割です。そうした批判を真摯に受け止めずにバッシングであると嫌うのみならず、外務官僚が「反日記事を書くのは中国から利益を得るため」というあまりにも幼稚なストーリーに基づいた異議を申し立てたことには絶句するしかありません。
こうしたやり方が海外に向けて通用すると思い込んでいるとしたら、とんだガラパゴス的思考だと言われても仕方ないのではないでしょうか。
なおGermisさんのコラムの全文日本語訳を神戸女学院大学の内田樹名誉教授が自らのブログに掲載しています。以下リンクから閲覧可能です。
内田樹の研究室 ドイツのあるジャーナリストの日本論
(Photo by Sheila)
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