日本でも大麻規制の見直しを求めるオンライン署名活動がスタート


Photo by Coleen Whitfield

アメリカ合衆国で続々と合法化の進んでいる大麻。日本でも規制見直しを認めるオンライン署名活動が始まっています。詳細は以下から。


BUZZAP!ではアメリカ合衆国の大麻合法化や取り扱い状況の変化についてこれまでもお伝えしてきましたが、日本でも「国際条約による大麻規制の見直し」を要望するオンライン署名活動が始まりました。

この署名活動は2016年の国際連合総会の臨時会議(UNGASS2016)が「世界の薬物問題」をテーマに開催されることを受けて始められたもの。日本政府に対して現代の科学的知見に基づき、国際条約による大麻の規制分類を見直し、「より広い範囲での治療薬としての利用、健康と人権に配慮した適切に機能する政策の実現を可能にする」よう国連に働きかけることを要望しています。

キャンペーン ・ 外務大臣 国際条約による大麻規制の見直しを求める要望[UNGASS2016] ・ Change.org


日本の大麻規制といえば大麻取締法なのですが、この署名活動がターゲットとするのはそこではなく、1961年に採択され、1964年に日本が加盟した麻薬に関する単一条約(麻薬単一条約)。大麻はこの条約の附表I及びIVに記載され、ヘロインなどのハードドラッグと共に最も厳しい統制措置の対象となっています。

署名発起人に寄ると、この条約での大麻の規制は1957年にWHOが出した「大麻が身体的中毒性を持つ」とした定義に基づくものですが、1965年WHOは大麻には身体的依存性はほとんどないと述べており、1997年には大麻に関して「これまでのところ、退薬症候群の生成について一般的な合意がない」としており、1957年の知見によって行われた規制には「学的根拠や論理的整合性を欠く」としています。

2014年1月にオバマ大統領が「大麻が酒よりも危険だとは考えない」と述べ、危険性がアルコールの1/114でしかないとの研究結果が報告されるなど、大麻の危険性や依存性に対する知見は続々とアップデートされており、もはや「ダメ・ゼッタイ」な麻薬であると考えるのは時代遅れ以前に勉強不足と言わざるをえない状況となっています。

オバマ大統領が「大麻が酒よりも危険だとは考えない」とインタビューで回答 | BUZZAP!(バザップ!)

大麻の危険性はアルコールに比べてたった1/114でしかないことが明らかに | BUZZAP!(バザップ!)


実際に医療大麻のみならず嗜好品としてもアメリカ合衆国では州ごとに合法化が進んでおり、連邦法でも医療大麻を取り締まらず、科学的研究への制限も大幅に緩和されています。

オバマ政権が「大麻の規制分類を議会が変更したいと考えるなら喜んで協力する」と表明 | BUZZAP!(バザップ!)

アメリカ合衆国が連邦法で医療大麻を取り締まらないことを決定 | BUZZAP!(バザップ!)

ホワイトハウスが大麻の科学的研究に対する制限を大幅に緩和 | BUZZAP!(バザップ!)


また、麻薬に関する単一条約に関しては、条約交付から50年目の2011年に薬物政策国際委員会が、この条約から始まった、麻薬を違法化して麻薬取引を撲滅させようとする薬物戦争が失敗に終わったことを宣言し、厳しい規制ではなく大麻の合法化などを含む「これまでと違ったアプローチ」を採用するよう勧告しています。

「世界的な麻薬戦争は失敗」  国際委員会が別の対策を勧告(字幕・2日) Reuters.com


実際に大麻の完全合法化が行われたアメリカ合衆国コロラド州の、合法化から1年後の様子については以下のとおり。心配された未成年者の乱用についてはむしろ減少しているという結果が出ています。

大麻完全合法化から1年、コロラド州で起こったこと、起こらなかったことについて | BUZZAP!(バザップ!)

こうした状況の中で、NYタイムスやナショナルジオグラフィックといった世界的なメディアも大麻に対して大麻の規制に対して社説で撤廃を求めたり、広範で詳細な特集を組むなど、大麻への認識は大きく変化しています。

NYタイムズが大麻禁止の連邦法の撤廃を求める社説を掲載、世界中で大反響に | BUZZAP!(バザップ!)

【レビュー】ナショナルジオグラフィック紙が特集「マリファナ 秘められた力」を掲載、「ダメ・ゼッタイ」の誤解を払拭する画期的な内容に | BUZZAP!(バザップ!)


50年以上前の知見では危険とされたものの、その後の研究によって危険性が小さいことが明らかとなり、また薬物戦争という規制手法が失敗であることも宣言され、アメリカ合衆国を始めとした少なからぬ国々で規制や取り扱いの見直しが行われているというのが大麻を巡る現状と言ってよいでしょう。

この署名の発起人も「世界各国における大麻政策の諸問題が、古い国際条約による大麻の規制分類に起因するものであり、これを早急に改める必要がある事は明らかである」とした上で、日本政府に対して以下のように要望します。

全ての人の生命と人権を尊重し、科学的根拠に基づいて、50年以上前の古い規制分類を見直し、大麻、大麻樹脂並びに大麻の抽出物及びチンキを1961年の麻薬に関する単一条約の附表I及びⅣから削除し、加盟国に国際条約を破棄することなく、大麻のより広い範囲での治療薬としての利用、適切に機能する政策の採択を可能にするよう国連に働きかけることを求める。

キャンペーン ・ 外務大臣 国際条約による大麻規制の見直しを求める要望[UNGASS2016] ・ Change.orgより引用)



変わりゆく世界の大麻に関する認識の中で、いまだに「ダメ・ゼッタイ」を続ける日本政府。来年のUNGASS2016で大麻の規制が変化すれば取り締まりの根拠が崩れ去ることすらあり得ます。そうした状況が到来した際にいかに対応するべきか。この署名活動はそうした遠くない将来を見通す一石となるかもしれません。

(Photo by Coleen Whitfield

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