パーティドラッグとして知られるMDMA、精神療法の一環として合法化に向けた動きが活発化しています。詳細は以下から。
90年代のレイヴカルチャーを彩ったパーティドラッグ、「エクスタシー」の主成分として世界中に広まったMDMA(3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン)。現時点では世界中の国で違法薬物として禁止されていますが、国際的な研究者のネットワークが幅広い臨床試験を実施しており、最短で5年後には薬局で処方されるようになるかもしれません。
MDMAの危険はこれまでも指摘されてきましたが、その危険性の大きな理由のひとつは違法であるが故に正式な規制を受けておらず、粗悪な混ぜ物が添加されてきたことにあります。
しかし、医学的に管理された状態での摂取実験によって、この物質が精神療法上の意義深い潜在能力を持っていることが明らかにされています。この大きな理由はMDMAが脳に対し、「気分」を規定する鍵となる役割を担う神経伝達物質、セロトニンを大量に分泌させることにあります。この効果は摂取者の開放性と自分と他人に向けた愛を増幅させる効果を持っており、かつてレイヴカルチャーでは「ラブドラッグ」と呼ばれた他、「共感をもたらすもの(empathogen)」という呼び名もあります。
アメリカ合衆国のカリフォルニア州サンタクルスに拠点を置くサイケデリック研究学際組織(Multidisciplinary Association for Psychedelic Studies、通称:MAPS)は世界中のMDMAを用いた実験に資金を供給しており、合法的な医薬品としてのMDMAの効果と安全性を証明しようとしています。現在は2021年に精神療法用に使用される薬品として米国食品医薬品局(FDA)から承認を得ようとしています。
例えばロサンゼルスでは研究者らはMDMAが自閉症の成人の社会的不安を減退させる効果について研究を行っています。一方カリフォルニア州では末期的な状態の病人が症状と折り合いを付ける上でどのように使えるかを研究しています。また、カナダの研究者らはPTSDの緩和にMDMAが使えるかについて調べているところ。
MAPSがサポートする実験の多くは現在効果と安全性を比較的少人数の被験者でテストするフェイズ2の段階にあります。このステージがパスできれば、大きな集団の被験者を集めてより広範囲に詳細を研究するフェイズ3へと移行するとのこと。実験は着々と進んでおり、遅かれ早かれMDMAの精神療法用の医薬品としての合法化が行われることは間違いなさそうです。
先にBUZZAP!では現在違法薬物とされているケタミンやLSDの精神療法上の可能性についてもお伝えしましたが、かつてはドラッグとして闇社会で扱われていた物質が医療用として研究され、人々の精神的な健康を回復させるために使われるようになるのだとしたら、ようやく正しい使い方にたどり着いたと言うべきなのかもしれません。
MDMA Could Become A Legal Medication By 2021 IFLScience
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