マジックマッシュルームに重篤なうつ病を和らげる効果が発見される


Photo by Zhi virgo

違法薬物のケタミンに続き、マジックマッシュルームにもうつ病治療の効果が発見されました。詳細は以下から。


先日BUZZAP!では現在世界中で違法薬物に指定されている麻酔薬、ケタミンが「即効性の抗うつ剤」としての絶大な効果を持っていることが判明したとお伝えしました。驚くべきことに今度は、やはり違法薬物として規制されるマジックマッシュルームにも重篤な鬱病を和らげる効果が見つかりました。ドラッグとは何なのか、もう一度考え直す必要がありそうです。

この研究を行ったのはイギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドン。男性6人、女性6人のうつ病患者に対し、マジックマッシュルームの有効成分である「シロシビン」が投与されました。この12人のうつ病患者は平均で、17.8年という長期間うつ病を患っており、これまでに最低2種類の治療を受けたことがありますが、芳しい効果が見られませんでした。

この結果、被験者の全員がシロシビン投与から3週間以内に著しい症状の改善を経験しました。3ヶ月後には5人の被験者が不完全寛解にまで達し、うつ病の症状や兆候が見られなかったと報告しました。

実験では最初にバッドトリップに陥らないかを試す目的で少量のシロシビンが投与され、その1週間後により多量のシロシビンの投与が行われました。実験は特別に用意した部屋で行われ、そこでは音楽が流され、2人の精神科医が常に被験者らに話しかけていました。サイケデリック体験は5時間ほど続いたとのこと。

被験者のひとり、ロンドン在住の45歳のKirk Rutterさんは母親の死からうつ病になり、カウンセリングや投薬治療でも治りませんでした。彼はこう語っています。

どちらのシロシビン投与でも私は「サイケデリックな乱気流」とでも呼ばれる状態を経験しました。これはサイケデリックな状態への変遷期で、寒さと不安を感じました。ですがその状態はすぐに過ぎ、ほぼ快適で、時に美しい経験をしました。

セッションの中では試される瞬間もありました。例えば私は重篤な病気の母親と病院にいるという体験をしました。そしてシロシビン多量摂取のセッションの時、私は自分の回復を妨げ、それゆえに母と繋がり続けることを可能としてきた深い悲しみを潰瘍として視覚化しました。しかしながら、記憶を巡り、母との関係の中で愛を感じたことにより、私は悲しみを手放すことが母の記憶を手放すことではないと知ったのです。



現在主にうつ病治療に使われているSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)で不完全寛解に至る割合は20%台となっており、効果の著しさがうかがえます。なお、全員がシロシビン投与前と投与中に一時的な不安を訴えましたが、それ以外の副作用は研究の間は報告されませんでした。初めてサイケデリック・ドラッグを治療のために摂取するのですから当然と言えば当然ですが…。

なお、この実験は被験者の母数が極めて少ないこと、プラシーボを使った対照実験を行っていないことから、実験としての信頼性が高くないことは研究者らも認めるところ。マジックマッシュルームはサイケデリック体験を伴うことから、プラシーボかどうかが容易に被験者に分かってしまうため、これには困難が伴うとのこと。

ですが、この前向きな結果は政府に働きかけ、医学界の違法薬物研究に一石を投じることになりそうです。これは先日お伝えしたケタミンと同様に、現代では嗜好品のドラッグとして規制されている物質が、真摯な科学研究によって有用性が発見されたケースとなります。

単に規制すべき厄介物と思われていたこれらの物質が、多くの精神的な病を抱える現代の人々の希望の星となるのかもしれません。

Magic mushrooms lift severe depression in clinical trial Science The Guardian

(Photo by Zhi virgo


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