Photo by Bob Doran
医療大麻が世界各地で広がっていますが、脳の老化にもよいことが判明しました。詳細は以下から。
大麻の有効成分であるカンナビノイドのTHCを老齢のマウスに少量摂取したところ、老化に関連する認知機能低下を逆進させることにが分かりました。Newseek誌やIndipendens紙が伝えています。
ドイツのライン・フリードリヒ・ヴィルヘルム大学ボンのAndreas Zimmer博士が主導する研究チームは先日ジャーナル「Nature Medicine」上で、大麻の有効成分であるカンナビノイドのTHCがマウス実験で老齢に伴う認知機能低下に極めて有効であると発表しました。
THCは脳内の痛み、気分、記憶、欲求など多数の生理機能を含む内在性カンナビノイド系に作用します。これまでの研究で、内在性カンナビノイド系の活動が年齢に伴って低下すると、老化の兆候が現われることが分かっていました。
今回の研究ではTHCが老化した脳にどのような影響を及ぼすのかを調べるため、研究者らは2ヶ月、12ヶ月、18ヶ月の3段階のライフステージにあるマウスにそれぞれ少量のTHCを投与しました。2番目のグループは熟年、3番目のグループは老年に属します。
研究チームは3つの実験を実施しました。ひとつ目は水中迷路を使った実験で、マウスはゴールに辿り着くためにどのように進めばいいかを学習し、記憶する必要があります。対照実験のグループでは、熟年と老年のマウスは若年のマウスに比べて成績が悪かったのですが、THCを投与した場合に老年のグループの製背は改善、若年の成績は大幅に悪化しました。
2番目の実験ではある物を特定の場所に置くという実験でしたが、THCを投与した老年マウスは素面の若年マウスと同等の成績を収めました。3番目の実験は相手認識に関する物でしたが、熟年マウス、老年マウスにおいて記憶力を改善させました。
「3つの実験の結果から、認知パフォーマンスの重大で長続きする改善が少量のTHC投与によって熟年、老年マウスに生じた」と研究チームは結論づけています。
人間に対しての実験はまだ行われておらず、マウスに比べて寿命が長いことから今すぐにその有効性を実験結果として得ることは難しいかも知れません。しかし、老年に至った脳の認知機能がTHCによって若年のレベルにまで「回復」するのであれば、アルツハイマー病を始めとする認知症に対しても大きな効果が期待できます。
なお、若年マウスにTHCを投与して成績が下がるのは、若い脳には過剰投与となり、脳の機能がオーバードライブするためではないかと研究者らは考えています。これは大麻が合法化された国や地域でも未成年には禁止されていることと重なります。
現在大麻の薬効に関する研究は急ピッチで進んでおり、例えばイギリスでは1000万ユーロ(約12億円)を掛けてカンナビノイドの分子的、細胞的、組織的なメカニズムを調べ、新たな医療技術を確立する研究が行われています。
今回の発見もそうした世界的な潮流の中で行われたもの。医療大麻は高齢者医療の現場で緩和ケアなどにも用いられていますが、痴呆症にも効果があるとなれば、高齢化の進む日本でも極めて重要な発見となります。
覚醒剤やヘロインなどのドラッグと同一視して「ダメ・ゼッタイ」を続けることが今後も高齢化の進展が確実視される日本の取るべき道なのでしょうか?追いつけないほどに研究レベルが引き離される前によくよく考えるべきテーマです。
Can Marijuana Restore Memory_ New Study Shows Cannabis Can Reverse Cognitive Decline in Mice
Cannabis 'could reverse ageing process' after THC found to improve memory and learning in older mice _ The Independent
(Photo by Bob Doran)
・関連記事
Sigur Ros(シガー・ロス)が大麻入りグミを発売 | BUZZAP!(バザップ!)
合法化された大麻をシアトルの3人のおばあちゃんが初体験する映像が世界中で大反響 | BUZZAP!(バザップ!)
アメリカ合衆国で高齢者の大麻使用が爆増中、理由はもちろん… | BUZZAP!(バザップ!)
米の医療大麻のシェアが拡大、165億円規模の医療費削減に | BUZZAP!(バザップ!)
医療大麻が合法化されたアメリカの州、解禁後5年ほどで肥満率が減少していたことが判明 | BUZZAP!(バザップ!)
米大麻合法化進展に伴い、未成年の大麻入手が調査開始以来最も困難に | BUZZAP!(バザップ!)