信頼できる?安倍首相の「加計学園獣医学部申請知ったのは今年の1月20日」発言を丁寧に検証してみた



記録を付き合わせてみると、どう考えても虚偽答弁だったことが分かります。詳細は以下から。


7月24日に行われた安倍首相出席での衆院予算委の閉会中審査。安倍首相はこれまでと打って変わって丁寧な姿勢をアピールしていましたが、発言内容はその限りではありませんでした。

問題となっている発言は民進党の大串議員との質疑の中で行われたもの。安倍首相が国家戦略特区を活用した加計学園の獣医学部新設計画の申請を知った時期を問われ、国家戦略特区諮問会議で加計学園を事業者とすることを正式決定した「今年(2017年)1月20日」だったと答弁したのです。

ですがこれは完全に無理筋。安倍首相は国家戦略特区諮問会議の議長であり、今治市が国家戦略特区に選ばれた2015年12月も、獣医学部新設が認められた2016年11月も当然諮問会議には出席しています。

そして、安倍首相は40年来の腹心の友である加計孝太郎理事長が獣医学部を作りたいと考えていることを構造改革特区提案の時点から知っていたことは既に国会答弁などによって明らかにされています。公の記録を紐解きつつ、ひとつずつ丁寧に見ていきましょう。

◆宮崎岳志議員の質問への答弁
2017年5月8日の民進党の宮崎岳志の「加計孝太郎氏が獣医学部を作りたがっているということはいつからご存じだったのでしょうか?また、国家戦略特区という枠組みを使いたがっているという事はいつからご存じだったのでしょうか?」という質問に安倍首相が回答しています。質問は動画の32:47からですが、安倍首相は延々と回答をはぐらかして時間稼ぎ続けます。ようやく37:47からこの問題に触れます。

獣医学部を新設する主体については平成19年(2007年)11月の今治市等による構造改革特区提案において加計学園から、加計学園が候補として記載されていました。

第2次安倍政権発足後も内閣総理大臣が本部長である構造改革特区本部においてこの提案に対する政府の対応方針を決定しており、多くの案件と同様、本件についても知りうる立場にあったというのはご承知のとおりだろうと思いますが、他方この加計学園から私に依頼等があった事は一切ないということは申し添えておきたいと思います。



【衆議院】~平成29年5月8日 予算委員会・集中審議~ 《昭恵夫人の田植えに公務員随行は!?》 民進党 宮崎岳志 vs 安倍総理 - YouTube


ちなみにこの平成19年11月は第1次安倍内閣が倒れた直後の福田康夫内閣の時のこと。安倍首相のこの回答ではどんなに遅くとも第2次安倍政権が発足し、構造改革特区本部長として対応方針を決定し始めた時点で「加計孝太郎氏が獣医学部を作りたがっている」事を知っていたことになります。

◆福島みずほ議員の質問主意書への答弁書
また2017年4月18日に提出された社民党の福島みずほ議員の質問主意書には以下のような質問があります。

加計学園の獣医学部新設に関する質問主意書

一 安倍首相は、学校法人加計学園の加計孝太郎理事長が今治市に獣医学部を作りたいと考えていることを二〇一六年十一月九日以前に知っていたか。知っていたのであれば、いつから知っていたのか。

質問主意書:参議院より引用)



そして答弁書では

参議院議員福島みずほ君提出加計学園の獣医学部新設に関する質問に対する答弁書

一について

 獣医学部の新設については、平成十九年十一月の愛媛県今治市等からの構造改革特別区域法(平成十四年法律第百八十九号)第三条第三項に規定されている提案に係る説明資料において、学校法人加計学園がその候補となる者である旨記載されており、こうした提案を受けて、安倍内閣総理大臣を本部長とする構造改革特別区域推進本部において、平成二十五年十月十一日、平成二十六年五月十九日及び平成二十七年八月二十五日に構造改革特別区域の提案等に対する政府の対応方針を決定するとともに、平成二十七年六月三十日に「「日本再興戦略」改訂二○一五」を閣議決定したところである。

質問主意書:参議院より引用)



ということで、上記の答弁と同じように安倍首相が「加計孝太郎氏が獣医学部を作りたがっている」事を知っていたことが分かります。

◆福島みずほ議員の質問への答弁
これに加えて3月13日の福島みずほ議員の質問に対する答弁も見過ごすことはできません。これは福島議員を恫喝しながら私はもし働きかけて決めているんであればこれは私責任取りますよ。当たり前じゃないですかという例の発言が行われた答弁でもあります。

当該質問は17:28から。11月9日に獣医学部新設が認められ、1月4日に告示があって規制緩和をするとして、同日から11日まで8日間のみ公募が行われ、加計学園だけが手を挙げたという事実から、あまりに早すぎるため安倍首相が加計学園についてあらかじめ予測していたのではないかという質問。

そして問題の1月20日に安倍首相が「1年前に国家戦略特区に規定した今治市で画期的な事業が実現します。獣医学部が来年にも52年ぶりに新設され、医師を育成します」と発言したことも紹介されます。

加計学園で安倍晋三が大興奮3_13福島みずほ:参院・予算委員会 - YouTube


安倍首相はこの質問に対し

まず15年間特区は申請され続けてきたんですよ。そうであれば他の大学だって取り組もうと思えば取り組めたわけです。しかし諦めず続けてきたところがあったのは事実。それが加計学園だったわけです。

そこで民間事業者の選定は国家戦略特区法の原則に従い公募手続きが取られ、学校法人加計学園より応募があったわけです。公募期間は8日間としたが、この期間は他の事業と同程度。これだけ早かったわけではない。

だいたい特区というのは国家戦略特区ですから、その前にこれをやるということは大体決まっていて、多くの人たちは知ってるんです。関係者はみんな知ってるんですよ。知っている中においてもうこれはそういう方向で進んでいるということは多くの人たちが知っているんですよ。

その中で8日間。他と比べて特別短ければ別ですよ。これ大体他と同じですから。その後6日間の追加申し出の手続きを行いましたが他の事業者から応募はなかった。応募の内容については分科会や区域会議、諮問会議において新設に必要な要件を十分に満たしていることを適切に確認しております。

なお、獣医学部の新設に関心を持つ事業者や自治体に対しては特区で取り上げられるに至る前段階から内閣府が随時提案や相談を受け付ける体制を整えています。急にたった8日間でやったんではない。もうちょっと勉強してから質問してくださいよ。



つまり、しっかり勉強して理解している安倍首相の答弁から考えるに、加計学園が獣医学部を新設することは「国家戦略特区ですから、関係者はみんな知ってる」事になります。国家戦略特区を主導する内閣総理大臣である安倍首相が関係者の筆頭であることは言うまでもありません。

そして「応募の内容については分科会や区域会議、諮問会議において新設に必要な要件を十分に満たしていること」も適切に確認されます。諮問会議の議長である安倍首相が適切に確認していないわけはありません。

さらに、知っているだけに留まらず、「獣医学部の新設に関心を持つ事業者や自治体に対しては特区で取り上げられるに至る前段階から、内閣府が随時提案や相談を受け付ける体制を整えて」いるのですから、内閣府のトップである行政府の長の安倍首相が何も知らないというのはどう考えても不自然ということになります。

上述の宮崎岳志議員への答弁と福島みずほ議員の答弁書は構造改革特区についてですが、この答弁は明確に国家戦略特区についてのもの。福島議員の無知を嘲笑うかのようにひけらかした内情が、今になって自らの首を絞めるという極めて皮肉な事態になっています。

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