【追記あり】「南京事件はなかった」とする講演会で自民・希望の現職4議員が演説へ



安倍首相も認める南京大虐殺を否定する講演会で、自民党と希望の党の国会議員4人が演説をすることが分かりました。詳細は以下から。


◆南京大虐殺否定の講演会で自民・希望議員4人が演説へ
12月13日に開催される「外務省 目覚めよ! 南京事件はなかった」などとする大講演会において、原田義昭(衆議院議員・自民党)、松原仁(衆議院議員・希望の党)、山田宏(参議院議員・自民党)、渡辺周(衆議院議員・希望の党)の4人の現職国会議員が演説を行う事が新しい歴史教科書をつくる会のツイッター公式アカウントによって発表されました。



魚拓

このツイートに添付された講演会のフライヤーでは南京大虐殺を「中華民国の戦時宣伝」であると断じ、「歴史捏造」だと非難します。そして南京大虐殺を認めたのが外務省であるとして「ホームページから南京事件の項目を消せ」と迫るという歴史修正主義のお手本のような内容となっています。

◆日中共同歴史研究は安倍首相のプロジェクト
しかし、外務省を批判する中で示される日中共同歴史研究は2006年に安倍首相と胡錦濤国家主席(当時)が立ち上げたもの。

2006年に就任したばかりの安倍首相は中国を訪問して胡錦濤国家主席(当時)と会談し、両国は相手側の「平和的発展」を評価するとともに、両国の責任は「アジア及び世界の平和、安定及び発展に対して共に建設的な貢献を行うこと」だと主張しました。

そしてその一環として日中両国の研究者が未来志向の日中関係の枠組みの下で歴史共同研究を実施することになり、日中からそれぞれ10名の研究者を選出、共同研究委員会を組織して古代・中近世史と近現代史の研究テーマを決定して論文が執筆されたのです。

Photo by Wikipedia

つまりこの日中共同歴史研究は安倍首相肝いりのプロジェクトであり、南京大虐殺はその研究の内容として両国が正式に認めたもの。決して外務省が独断で記載しているものではありません。長くなりますが研究論文から当該部分を引用します。

中支那方面軍は、上海戦以来の不軍紀行為の頻発から、南京陥落後における城内進入部隊を想定して、「軍紀風紀を特に厳粛にし」という厳格な規制策(「南京攻略要領」)を通達していた。しかし、日本軍による捕虜、敗残兵、便衣兵、及び一部の市民に対して集団的、個別的な虐殺事件が発生し、強姦、略奪や放火も頻発した。日本軍による虐殺行為の犠牲者数は、極東国際軍事裁判における判決では20万人以上(松井司令官に対する判決文では10万人以上)、1947年の南京戦犯裁判軍事法廷では30万人以上とされ、中国の見解は後者の判決に依拠している。一方、日本側の研究では20万人を上限として、4万人、2万人など様々な推計がなされている。このように犠牲者数に諸説がある背景には、「虐殺」(不法殺害)の定義、対象とする地域・期間、埋葬記録、人口統計など資料に対する検証の相違が存在している。

日本軍による暴行は、外国のメディアによって報道されるとともに、南京国際安全区委員会の日本大使館に対する抗議を通して外務省にもたらされ、さらに陸軍中央部にも伝えられていた。その結果、38年1月4日には、閑院宮参謀総長名で、松井司令官宛に「軍紀・風紀ノ振作ニ関シテ切ニ要望ス」との異例の要望が発せられたのであった。

虐殺などが生起した原因について、宣戦布告がなされず「事変」にとどまっていたため、日本側に、俘虜(捕虜)の取扱いに関する指針や占領後の住民保護を含む軍政計画が欠けており、また軍紀を取り締まる憲兵の数が少なかった点、食糧や物資補給を無視して南京攻略を敢行した結果、略奪行為が生起し、それが軍紀弛緩をもたらし不法行為を誘発した点などが指摘されている。戦後、極東国際軍事裁判で松井司令官が、南京戦犯軍事法廷で谷寿夫第6師団長が、それぞれ責任を問われ、死刑に処せられた。

第2章 日中戦争―日本軍の侵略と中国の抗戦 より引用)



南京大虐殺を「歴史捏造」だと否定することは、安倍首相がこの「歴史捏造」のトップにいることを認めて非難することになりますが、演説を行う4議員はそのことを理解できているのでしょうか?

【11/14 15:40訂正・追記】
当該講演会の主催者は「新しい歴史教科書をつくる会」ではなく、「南京戦の真実を追求する会(会長 阿羅健一)」であると「新しい歴史教科書をつくる会」から指摘がありましたので記事内容を訂正致しました。

公式アカウントで「外務省 目覚めよ! 南京事件はなかった」に対して「是非ご参加下さい」と呼びかけていた理由については現在問い合わせ中であり、返答を頂き次第さらに追記致します。

なお、南京戦の真実を追求する会の会長である阿羅健一氏はつくる会の「ユネスコ「南京」登録に反撃する国際シンポジウム」の開催呼びかけ人や「「河村発言」支持・「南京虐殺」の虚構を撃つ緊急国民集会」の登壇者であり、つくる会の会報誌「史」97号には「いま起こっている「展転社裁判」の意味するもの」という文章も寄稿している人物です。

また、「外務省 目覚めよ! 南京事件はなかった」の共催に名前を連ねる「南京の真実国民運動」は上記の「ユネスコ「南京」登録に反撃する国際シンポジウム」をつくる会と共催しており、連絡先・署名送付先も「歴史教科書をつくる会気付 南京の真実国民運動」とされています。

【11/14 18:20追記】
「新しい歴史教科書をつくる会」から「外務省 目覚めよ! 南京事件はなかった」講演会に対して「是非ご参加下さい」と呼びかけていた理由について問い合わせたところ、同会事務局より丁寧な回答を得ることができました。

それによると、講演会の告知は阿羅健一氏からの依頼を受けたもの。阿羅健一氏が以前からつくる会のの教科書改善運動、さらにつくる会も加盟している「南京の真実国民運動」にも協力している縁から依頼を受けたということ。

また、「南京戦の真実を追求する会」に限らず、関係者から依頼があったり当会役員が登壇の予定があれば、主催でなくともSNSでのイベントの告知はこれまでも行ってきたということです。

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