極めて大きな反響のあった「世界一のクリスマスツリーProject」ですが、中止を求める署名活動に多くの賛同が集まっています。詳細は以下から。
11月20日にBUZZAP!が掲載した「神戸市の樹齢150年のあすなろを使った「世界一のクリスマスツリーProject」が醜悪すぎると話題に」という記事はツイッターで5000RT、フェイスブックでは1.1万いいねという大きな反響を呼びました。
こちらのツイートのリプライに残されたコメントの多くは悲しみや憤りに満ちたもの。そして主催者の薄っぺらな美辞麗句に彩られた虚栄心と欺瞞への批判が並んでいます。
#世界一のクリスマスツリー という記録のために、大政奉還の時代からこの国でひっそりと生きてきた古木が見世物にされ、最期を迎えます。
— BUZZAP!(バザップ!) (@BUZZAP_JP) 2017年11月20日
神戸市の樹齢150年のあすなろを使った「世界一のクリスマスツリーProject」が醜悪すぎると話題に | Your News Online https://t.co/PZP5JbSsVa pic.twitter.com/UqFbtDBg8A
上記記事の冒頭でも述べていますが、人間は有史以来世界各地で木材を多くの用途に使い続けてきましたし、樹齢150年の木が建材として用いられる事も珍しいわけではありません。こちらの記事では伊勢神宮の式年遷宮で樹齢300年のヒノキが用いられている事が綴られています。
ではなぜ今回の「世界一のクリスマスツリーProject」がここまで多方面から批判の嵐となったのでしょうか。
それはこの樹齢150年のあすなろを「輝け、いのちの樹。」というキャッチコピーのもと、阪神大震災を始めとする被災地への鎮魂を込め「復興と再生のシンボル」と位置づけながら、クリスマスツリーとして見世物にし、オーナメントの数でギネス記録を狙うという軽薄さ。
また、このあすなろを植樹したかのように見せかけながら、結局は根付かせることもなくバラバラのバングルに加工してフェリシモからひとつ税込み送料込み3800円で売りさばくという欺瞞。
さらにはこのあすなろを150年山の中で生きてきたにもかかわらず「ヒノキになれない落ちこぼれの木」扱いしたこと、周りが山火事になって唯一生き残るというまさにその存在自体が被災者の目から見れば「復興と再生のシンボル」であったこの木を無残に死に追いやっている神経など、どこから突っ込めばいいのか分からないレベルの醜悪さの塊となっており、それぞれが徹底的に批判されています。
これまでは上記記事への反響やツイッターのハッシュタグ「#世界一のクリスマスツリー」を含め、SNS上での批判がメインでしたが、ウェブ署名サイトChange.org上で「キャンペーン ・ そら植物園株式会社、神戸市長_ 世界一のクリスマスツリーPROJECTを中止して下さい ・ Change.org」としたキャンペーンが始まっています。
キャンペーンが始まったのは11月24日で、3日間で5000筆の署名を集め、現在は6000筆に迫る勢いとなっています。主催は「世界一のクリスマスツリーイベント中止を願う市民一同」とされており、「関係者に過ちを認めていただき、イベントの中止と巨木の延命を求めてキャンペーンを立ち上げました」とされています。
こちらの署名活動では長生きしている古木を切ることそのものを批判してはおらず、主催者の主張と樹齢150年のあすなろを切るという行為の矛盾を指摘しています。そして日本人の古来寄りの木々への畏敬の念や愛着に触れ、このプロジェクトが日本社会の大切にしてきた規範を毀損すると指摘しています。
目的としては、根を酷く切断されていること、また巨額の輸送コストが発生するため富山県氷見市に戻すことは現実的ではないとして以下の事を求めています。
・木の生命を愚弄したことへ真摯な反省を主催者及び関係者に促す
・プロジェクトの中止
・アスナロ商品化を中止して神戸市内に移植する。それでも枯れたら、宗教的なモニュメントを作る等、活用方法を神戸市が公募する
既にSNS上でも指摘されていますが、主催者が単に「ロックフェラーセンターよりも大きな世界一のクリスマスツリーを建てたい!!」とだけ主張して最初から商業イベントと言い切っていたら、眉をひそめる人が多少いたにせよここまでの批判は起こらなかったでしょう。
震災への鎮魂や復興と再生といった、少なからぬ日本人にとって極めてセンシティヴで真摯な話をクリスマスとギネス記録という軽薄なお祭り騒ぎのために商業利用し、その上で古木を最終的には殺してバラバラにして売りさばくという主催者の醜悪すぎる欺瞞が批判されている事を主催者は認識すべきです。
この署名活動がどこまで広がるのか、そして「世界一のクリスマスツリーProject」は中止されるのかは現時点では未定ですが、このイベントで木の生命が愚弄されたことに悲しみ、憤った人はその気持ちがどこからどのようにして湧いてきたのか、じっくり見つめてみるとよいかもしれません。
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