Photo by Ivan Turkouski
もはや違法ドラッグというくくりのみで語ることはできません。詳細は以下から。
以前BUZZAP!でもマジックマッシュルームの有効成分シロシビンがうつ病をやわらげるという実験結果を報じましたが、さらに研究が進んでいます。
上記記事でも取り上げたインペリアル・カレッジ・ロンドンの科学者らは中程度から重度のうつ病の患者のグループへのマジックマッシュルームの有効成分シロシビンを用いた治療セッションを行い、大きな成果を得たことがジャーナル「Neuropharmacology」に掲載されました。
研究では20人の被験者らが1週間おきに2度のシロシビンを用いた治療セッションが行われました。
科学者らは被験者らに第1セッションの1週間前と第2セッションの翌日にMRIスキャンを行い、シロシビンの扁桃体という感情的反応やストレス、恐怖などの情動反応の処理で主要な役割を持つ部位をモニターしました。その際に被験者らは無表情、恐怖、幸福の3つの表情の画像を見せられます。
シロシビンでのセッションを終えた後のモニターでは恐怖や幸福の表情に対する右扁桃体の反応が増大。恐怖の表情への反応の増大は治療セッションの1週間後の病状の改善と相関していました。
研究を主導したLeor Rosemanさんは「シロシビンを用いた治療は感情の繋がりを増大させることでうつ病を和らげているといえます。これは無気力・無関心をもたらす前頭葉類似症候群(frontal lobe-like syndrome)を引き起こすと批判されている従来の抗うつ剤であるSSRIとはまったく違います」と指摘します。
シロシビンはうつ病の症状と同様に扁桃体への血流を低下させますが、研究者らによるとこの「残光」が効果的に患者の脳をリセットするのだということです。そして興味深い事に、SSRIが患者の感情の受容性を抑制するのに対し、シロシビンは強化するように働きます。
「2つの薬品の根本的な違いは、SSRIがネガティブな感情を鎮静させる一方、シロシビンは患者がそうした感情に立ち向かい、処理させるところだ」とのこと。
まだまだ被験者数が少なく、対照実験が行われず、期間も短いなどの欠点を抱える初期研究の段階ではありますが、極めて興味深い結果が出ていることには要注目です。治療セッションに参加した2人の参加者のコメントが研究報告に添付されています。
「何かが解放されたような心の軽さを感じる。これは感情の浄化だ。重圧と不安と抑うつが晴れたんだ」
「私は受容できたと感じた。苦悩を、倦怠を、孤独を受容できたんだ。辛かった時のことをいとわず受け入れようと思えた一方、素晴らしかった時に感謝しようとも思えたんだ」
遊び目的ではなく治療のために正しく使われた時、マジックマッシュルームは有史以前にシャーマンたちにもたらしたような真価を発揮するのかもしれません。
Magic Mushrooms Could Treat Depression Without The Emotional Numbing Caused By Traditional Antidepressants _ IFLScience
(Photo by Ivan Turkouski)
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