厚労省が新たな奴隷要員として引きこもりを狙い撃ち、「働きがい」を感じてもらう就労体験参加強化のため自宅突撃を強化へ



いくらなんでもツッコミどころが多すぎます。詳細は以下から。


人手不足が蔓延する中、厚生労働省が生活困窮者らに働くための能力を身に付けてもらう就労準備支援事業の一環として引きこもり状態の人への訪問支援を強化することを決め、来年度予算案に関連経費5億8000万円を盛り込みました。

既に年金受給開始年齢が65歳に引き上げられ、コンビニや飲食店で働く高齢者の姿を見ることも珍しくなくなった現代日本。それでも人手不足は深刻な問題で、多くの外国人留学生や現代日本の奴隷である外国人技能実習生らが日本の労働人口を下支えしています。

◆あまりに多すぎるツッコミどころ
そんな中で厚労省は次なるターゲットとして「引きこもりの人」を狙って労働力として駆り出す方針を強化していますが、効果の程はもちろんツッコミどころが多すぎます。

厚労省が推進しようとしているのは自治体担当者らが自宅を訪問して本人や家族に状況を聞いた上で、近所で行われる就労体験への参加を直接働き掛ける事業で、まずは商店街や公民館、農園などで地域の一員としての働きがいを感じてもらった上で企業での就労につなげたいとのこと。

これは自治体が就労準備支援事業で、社会人としてのマナーを学ぶセミナーなどへの参加を呼び掛けても外に出ることが難しかったり、就労体験できる企業などが近くになかったりするケースが多発したことからの方向転換となります。

まずは自宅突撃という手法ですが、その道のプロフェッショナルでもない自治体担当者が自宅に行ったくらいで引きこもりが外に出てくるなら、そもそも引きこもりはここまで大きな社会問題になっていません。

Photo by Marixa Namir Andrade

どう考えたらセミナー参加のために外に出ることが難しい人が、近所の商店街や公民館や農園での就労体験に参加できるなどという結論に至れるのでしょうか?

また、引きこもりの多くは実家で引きこもるため、近所の商店街なり公民館、農園などはいわゆる「世間の目」に晒される場となります。東京都内ならいざしらず、田舎に行けば行くほどこうした場で就労体験に参加しているという事実は近隣に知れ渡ることとなり、参加への心理的障壁は高くなります。

もちろん商店街などというものが未だに機能している自治体がどれだけあるのかという話もありますし、農園での就労体験が外国人実習生らが受けているような極めてブラックな労働とならない保証もどこにもありません。いったい厚労省は「働きがい」というワードが既にブラック企業発見器となっている現状を理解しているのでしょうか?極めて怪しいところです。

ここまで見てきたように、ほんの少し内実を考えてみればこの方針はまったく現実味のない「やってる感」の演出でしかないわけです。

Photo by tokyoform

◆貧困対策というそもそも論から見る勘違い
さらにそもそも論に立ち返ると「生活困窮者らに働くための能力を身に付けてもらう就労準備支援事業」であるならば、今現在引きこもれる環境にある人の前に、ひとり親家庭を筆頭に働いていながらもギリギリの生活水準で貧困にあえいでいる人が大勢いるわけです。

中には介護士や保育士のように資格を取得していながらも低賃金・低待遇の苛烈な長時間労働を強いられている職種も少なくないわけですから、そうした目の前に顕在している貧困に即座に手を差し伸べるのが優先順位のトップに来なければならないはず。

そしてそのためには生活困窮者らへの支援のみならず、貧困に至る構造を変えるという視点での働きかけが必須であり、厚生労働省はまさにそのための省庁なのですから、小手先だけの方針を示しているわけでは税金泥棒と後ろ指を指されても致し方ありません。

厚労省は昨年末には貧困層がさらに困窮してるから生活保護もそれに併せて減額するという本末転倒の方針を打ち出して強い批判を受けましたが、まっとうな方針を出すことはできないのでしょうか?

引きこもりの人の就労後押し=訪問支援に補助-厚労省:時事ドットコム

(Photo by tokyoform, Marixa Namir Andrade)


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