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改正風営法が懸念されていたとおりの事態を招きました。詳細は以下から。
警視庁は1月28日午前2時20分頃に大音量の音楽を流して客にダンスをさせるという「遊興」を無許可でさせる営業をしたとして、東京都渋谷区の老舗として知られるクラブ「青山蜂」経営者の後藤寛さんら3人を風俗営業法違反(特定遊興飲食店の無許可営業)の疑いで逮捕したことを発表しました。
風営法は2016年に改正され、新たに深夜帯に客に酒類を提供し、遊興をさせる「特定遊興飲食店営業」という区分が作り出され、多くのクラブやDJバーはこのカテゴリに属することとなりました。
ですが、この改正ではダンス規制がなくなった代わりに新たに「遊興」という考え方が導入され、ダンスを含めた「営業者の積極的な働きかけにより客に遊び興じさせる行為」全般が規制される事態となっていました。
「遊興」が何を指すかは極めて曖昧だったため、取締当局がいくらでも恣意的に運用できてしまうという大きな問題が改正前から指摘されていました。
また、同時に「特定遊興飲食店営業」ができる地域が繁華街などの極一部に限られており、場合によってはひとつの県に営業可能な地域がまったく存在しないという状況まで発生していました。これにより、少なからぬ既存のクラブが法改正後に廃業するかグレーゾーンで営業を続けるかという選択を迫られることになっていたのです。
今回の「青山蜂」の場合は後者に該当しています。同店は「特定遊興飲食店営業」の禁止地域内にあり、法改正以降は無許可での営業を続けていました。逮捕容疑も無許可で客に酒類を提供して音楽を流してダンスをさせるという「遊興」をさせていたというもの。
現在地理的な条件から無許可で営業せざるを得なくなったクラブの中にも、風営法改正まで草の根で営業を続けてきたクラブは全国に少なからず存在しています。それらは現在のクラブシーンという文化の基礎を作り続けてきた豊かな土壌であり、それらを違法化して夜のエンターテインメントのインバウンドばかりを手にしようというのはさすがに虫が良すぎる話です。
ただし、今回の摘発は騒音などの問題から近隣町会が渋谷署に同店の取り締まりを求める嘆願書を出していたという事情も報じられています。
風営法改正運動の中では、クラブ側が近隣の住民らとコミュニケーションを取り、騒音やゴミ、喧嘩などの問題を共有して解決することはクラブの存続にとって必須であるという認識は盛んに叫ばれましたが、今回どこまでそれができていたのかはしっかりと見定める必要はありそうです。
渋谷のクラブ「青山蜂」経営者ら3人を逮捕 無許可で未明に営業、風営法改正後の初適用
未明にクラブ無許可営業 容疑の経営者ら逮捕、全国初 - 芸能社会 - SANSPO.COM(サンスポ)
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