自民党が佐川氏証人喚問で逃げ切ったと安堵、「官僚に勝手に公文書を改ざんされる」というガバナンス能力の問題を忘れてしまう



民主主義国家の根幹が破壊されたという未曾有の事態のはずですが、政権与党としてその認識があるのでしょうか?詳細は以下から。


◆何も解明されなかった証人喚問
3月27日に実施された佐川前国税庁長官への証人喚問。数十回に渡って「刑事訴追の恐れがありますので、証言を控えさせていただきます」と証言拒否を行い、明らかに刑事訴追とは関係の無い質問に対してまで証言を拒否するなど、公文書改ざんという憲政史上最悪クラスの事件の真相はまったく解明されないままに終わりました。

証人喚問の最後の「本日の発言で国民が知りたい真相を解明できたと思うか」との問いに佐川氏本人が(今日の証言では)満足できないだろう。(改ざんを)どういう経緯で誰が指示したか答えていないので(真相は)明らかになっていない。それは裁判、司法の方になると自ら指摘するなど、誰がどう見てもこの問題は終わってはいません。

◆自民党、謎の「勝利宣言」
ですが、政権与党の自民党の反応は全く違ったものでした。二階俊博自民党幹事長は安倍晋三首相を始め、政治家がどういう関わりあいを持っておったか、一つの焦点だったと思うが、幸いにして(関わりは)なかったことが明白になったと発言。

さらに自民党幹部からは「佐川氏の勝ち」「あれだけはっきり関与はないと言ったのだから、昭恵氏を国会に呼ぶ必要はない」などという信じられない言葉も飛び出していることが報じられています。

勝ち負けの問題ではないことは改めて指摘するまでもありませんが、自民党のこれらのポイントが「安倍首相と昭恵夫人との関わりが無いという証言が行われた、よかったよかった」というものである事は一目瞭然です。

つまり、自民党は佐川氏が安倍夫妻が関係していた事を明らかにせずに証人喚問を乗り切ることが「勝利条件」だと考えているということになります。

ですが、これで仮に「安倍夫妻の関与はなく、公文書改ざんを財務省の理財局が独自判断で行った」ということになると、これは安倍政権にとってモリ・カケ問題どころではない極めて致命的な問題になってしまいます。

◆本当なら問題は「安倍政権のガバナンス能力の致命的な欠如」
あの証人喚問で幾度も繰り返された証言拒否を見て真相が解明されたと思う日本国民は希有な存在かと思われますが、もし仮に佐川氏の口からわずかに漏れた「財務省単独犯」が事の真相だとすると、極めて大きな問題が生じます。

それはつまり日本という国家の官僚組織が、国民の代表たる政治家による国権の発動の最高機関たる国会において、国民に対して改ざんされた公文書を元にして内閣に虚偽の答弁をさせたということになります。

これは公務員としては絶対にあるまじき国民に対する背任行為ですし、行政府の長たる内閣総理大臣を筆頭とした内閣への反逆でもあります。つまり「財務省単独犯」であればこそ安倍首相も政府与党である自民党も「安倍夫妻は無関係」などと喜んでいる場合ではないはずなのです。

そして、この事実は2012年から6年目となる長期政権であり、国会では2/3という絶対安定の議席を有する安倍政権が、実は自らが率いる行政府の官僚組織を統轄できておらず、公文書改ざんという民主主義国家の信頼の根幹を粉々に破壊する犯罪行為をみすみす見逃してきたということを意味します。

また特筆すべき事としては、安倍政権の下では2014年に設置された内閣人事局は各省の幹部人事を内閣総理大臣を中心とする内閣が一括して行い、政治主導の行政運営を実現するためのもの。つまり、内閣はこれ以前に比べて官僚の人事において極めて強い力を持つようになりました。

これは自らが人事を握って任命した官僚組織の下で発生した事件(財務省の調査を信用するのであれば改ざんは2017年4月4日)であり、任命責任は2014年以前に比べて格段に重いもので、「知らなかった」「部下が勝手にやった」で済ませられる問題では到底ありません。

◆どうあっても自民党に「勝ち」はない
自民党がどのようなつもりであれ、この公文書改ざん問題に「勝ち」はありません。既に公文書改ざんが発生した時点で、日本は民主主義国家としては致命傷を受けました。

そして「安倍夫妻が関与した」のであれば当然首相は自らの発言に従って総理大臣も議員も辞めなければなりませんし、「安倍夫妻は関与せず財務省が勝手にやった」のであれば安倍政権はガバナンス能力が致命的に欠如しており、政権担当能力が無いことは自明となります。

まだ今回の公文書改ざん問題を「たかだか8億円の使い道に対して1年以上ギャーギャー騒いでるだけの森友学園問題」だと勘違いしている人が多いようですが、その認識は残念ながら間違っています。

きっかけは確かに森友学園問題でしたが、その些細だったはずの問題が今や世界に日本という国家の信頼性を完全に崩し去る公文書の改ざんというこの上なく深刻な問題となっている事は忘れてはならないでしょう。

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