政治的知識の乏しい人ほど「自分は政治を分かってる」と思い込みがちになるという研究報告



心当たりのある人も多いのではないでしょうか?詳細は以下から。


初心者がその分野の幅広さや奥深さに気付けず、自分の知識が広大無辺なものであると信じ込んでしまうという誤りはよく見られるものですが、政治についても同様のことが言えることが研究の結果判明しました。

ジャーナルPolitical Psychologyに掲載された新しい研究によると、政治的知識の乏しい人に限って自分の政治的知識に自信を持ってしまうとのこと。しかも悪い事に、その傾向は政治的に偏っていればいるほど悪化してしまいます。

この研究を主導したメリーランド州ボルチモアにあるメリーランド大学のIan Anson助教は能力の低い人物が自らの容姿や発言・行動などについて、実際よりも高い評価を行ってしまう優越の錯覚を生み出す認知バイアスであるダニング=クルーガー効果が政治の分野でも発揮されると指摘。

その結果、逆説的なことに政治について知識の無い人が多くのトピックについて自信満々になり、見識のある人が自らの知識を低く見積もるという現象が起きているとのこと。

Anson助教は2606人の成人のアメリカ人に2つの調査をオンラインで行いました。最初のものは被験者の政治的知識をクイズ形式で問うもの。上院議員の任期や現在のエネルギー長官の名前、ヘルスケアについてより保守的な党、下院で過半数を押さえている党、4つの政策のうち合衆国連邦政府が最も歳費を使っていないもの、などなどが出題されました。

多くの被験者のクイズの成績は芳しくないものでしたが、点数の悪い人ほど自らの得点を過大評価していたことが判明しました。Anson助教は「多くのアメリカ人は極端に自らの政治的な知識を過大評価していましたが、それは自分にいかに政治的知識が無いかを知る方法がなかったという状況によるものだ」と指摘します。

その上で「共和党支持者にせよ民主党支持者にせよ、彼らが党派制を帯びた考え方をする時にこの効果はそれ以前に比べて強化されることが分かりました」としています。


もうひとつの調査として、党支持者に反対の党の支持者が回答したと装った偽の答案を評価してもらった際、知識の少ない被験者ほど実際の知識よりも政党のバイアスの掛かった評価を行っていました。

ある党の支持者が支持者でない人と話す時、極めて頻繁に自身と話している相手の政治的知識を判定し損ねるということがあり、党派制を帯びた人は、実際に極めて政治的知識に富んだ人でさえ、自分たちを党の支持者以外の人々よりも政治的に知識があると考えがちだとAnson助教は指摘します。

どう見ても勉強していないアカウントがプロの政治学者や憲法学者を頭ごなしに馬鹿にしたり「小学生から勉強し直しては?」などという失笑もののリプライを送る光景は日本のSNSでも日常光景となっており、この実験結果は納得のいくものではあります。

Anson助教はこの研究のきっかけを2016年のアメリカ合衆国大統領選挙だったと述べていますが、この研究ではフェイクニュースとの接触がこうした政治的な「自信」にどのように影響を与えているかについては調査していません。

現代では過去に比べてインターネットを通じた情報へのアクセスが極めて容易になっており、「知識の無さ」を知る機会は増えたものの、その無知さに付け込むフェイクニュースが蔓延していることも事実。

これ見よがしにフェイクニュースを拡散する人物が日米共に政権中枢やメディア、知識人にまで広がっている現状は前代未聞といっても過言ではありませんが、「扇情的で悪意に満ちたフェイクニュースで武装した知識の足りない人」がどのような発想で言動を行うのか、調査が必要な段階に来ているのではないでしょうか?

Study_ People with less political knowledge think they know a lot about politics

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