赤ちゃんの誕生を社会全体が祝ってくれるかのような「ベビーパッケージ」が贈られる育児先進国・フィンランドの取り組みがすごい



日本でもネットなどで知られるようになった育児先進国フィンランドの「ベビーパッケージ」を紹介する展覧会が行われています。実際に現場を訪れてきたのでその模様をレポートします。


世界のどこであれ、人類は子供を産み、そして育ててきました。子供は私たちの次の世代を生きる人々であり、人類の未来そのものと言っても過言ではありません。

そんな子供をどのように産み育てるのかは世界の国や文化よってもそれぞれ異なっていますが、その中でも育児先進国として名高いのが福祉大国として知られる北欧のフィンランド。

「お母さんにやさしい国ランキング2013&2014」(セーブ・ザ・チルドレン)では1位に輝き、「男女格差ランキング2015」(世界経済フォーラム)でも2位になるなど、男女が平等で子育てに積極的な国として定評があります。

フィンランドでは大学までの全ての学費が無料であり、児童手当や母親手当、育児休暇なども非常に充実しています。また1973年できた保育園法によって、全ての子どもたちに保育施設を用意することが自治体の義務に。待機児童問題に国が積極的に取り組んでいます。

このように日本から見ると桃源郷のような子育て環境ですが、その中でも1938年から80年に渡って赤ちゃんのために支給されるプレゼントが「ベビーパッケージ」。約50点のアイテムが詰め込まれ、箱はベビーベッドにもなるという、まさに赤ちゃんが生まれてくることを社会全体が祝福してくれているかのような素敵な優しさの詰め合わせとなっているのです。

この「ベビーパッケージ」を中心にフィンランドの育児についての展覧会「生まれてはじめてもらうプレゼント ”フィンランドのベビーパッケージ”」が東京の東陽町にある竹中工務店東京本店1F「GALLERY A4(ギャラリー エー クワッド)」にて開催されていたので訪れてみました。


フィンランド国旗をリボンを掛けたプレゼントのようにあしらった素敵なデザインです。


中に入ってみます。


主催側からの挨拶とコンセプトなど。




室内の様子はこんな感じです。北欧らしいポップなカラフルさです。






動画で見てみましょう。

育児先進国「フィンランドのベビーパッケージ展」を見てきた - YouTube


ベビーパッケージの説明です。このベビーパッケージは母親手当の一環として140ユーロの現金支給との選択制。何人も子供がいる(つまりはお下がりが使える)家庭でなければこちらを選ぶ人がほとんどとのこと。


ベビーパッケージに非常に関わりが深いのが「ネウボラ」という組織。妊娠期から赤ちゃんが小学校に上がるまでの期間を総合的にサポートしており、ほぼ100%の親が利用しています。ベビーパッケージの支給条件がこのネウボラの利用となっており、利用率向上に役立ったとのこと。


フィンランドでは父親が「育児を手伝う」事はありません。その代わりに母親と共同で「育児をする」のが当たり前です。日本の常識と思想の根本から違うことがよく分かりますね。「イクメン」などという薄っぺらな言葉も当然存在しません。そして、ひとり親であっても安心して子供を産み育てる社会保障制度が充実しています。


ベビーパッケージの歴史が時系列に沿って詳しく記されています。グラフはフィンランドと日本の出生率の比較です。


じっくり見ていってみましょう。ベビーパッケージの箱は清潔なベッドのない貧困家庭にとっては赤ちゃんの衛生状況を保つための重要な設備である事が分かります。


第二次世界大戦前から戦後までの状況です。戦争中は繊維品不足が多く、代用品が多くなったとのこと。日本でも「この世界の片隅に」で純綿の布が貴重であった事が描かれていましたが、ここで使われたレーヨンや再生繊維はいわゆる「スフ」のことを指します。



戦後は日本、フィンランドともアップダウンはありつつも出生率は減少。フィンランドの出生率は一時は日本よりも低下します。


1980年代に入って国民生活が安定し、ベビーパッケージ要否の議論がありましたが、フィンランドは継続を選択。90年代には支給が養父母にも拡大され、この辺りでフィンランドの出生率は底を打ち、緩やかに回復に向かいます。


その後はご覧の通り。2を切ってはいますが安定しており、現在は1.8となっています。



動画で見てみましょう。

育児先進国・フィンランド日本の出生率を分かりやすく比較 - YouTube


さてお待ちかね、実際のベビーパッケージを見ていきましょう。まずこちらは2014年版。


こちらは2015年版。いずれもフィンランド社会保険庁の作ったものですが、デザインからして秀逸です。


中身はこんな感じで、どれも可愛いのです。


そしてこれが最新の2018年版。やはりフィンランド社会保険庁によるもので、ボックスのデザインには子供たちも参加。そして今年から母親手当が増額されるため、6月からはボックスの内容が更に充実してしまうという、日本からは考えられない神対応です。



こちらがその中身です。普通に買いたいという日本のお母さんも多そうです。





フィンランドで赤ちゃんが生まれた家庭に支給されるベビーパッケージ 2018年版 - YouTube


こちらはフィンランド・ベビー・ボックス社によるもの。海外からの希望を受けて設立された会社ということ。こちらも可愛い。



これは同社によるムーミン版のベビーパッケージ。お馴染みのキャラクターが勢揃いしています。ファン垂涎ですね。






ベビーパッケージの取り組みはフィンランドだけに留まってはいません。この日本でも地方自治体などでベビーパッケージを中心としたフィンランドの育児にインスパイアされた施策が行われています。


東京都板橋区と千葉県浦安市の取り組みです。



東京都八王子市と東京都文京区。


こちらは北海道のコープさっぽろによる取り組みです。



ベビーパッケージ使用後の使い方アイディアコンペも行われていました。




興味をもった方はぜひ実際に現地を訪れて本物のベビーパッケージを目の当たりにしてみてください。会場は東京メトロ東陽町駅から徒歩3分の「GALLERY A4(ギャラリー エー クワッド)」で、開催期間は2018年5月11日から2018年8月3日まで。入場は無料です。

イベント名:生まれてはじめてもらうプレゼント ”フィンランドのベビーパッケージ”
場所:東陽町にある竹中工務店東京本店1F「GALLERY A4(ギャラリー エー クワッド)」
会期:2018年5月11日(金)~ 2018年8月3日(金)

生まれてはじめてもらうプレゼント - フィンランドのベビーパッケージ - フィンランド大使館・東京 _ イベントカレンダー


ママゴト 1 (ビームコミックス)
松田 洋子
エンターブレイン

フィンランド式 叱らない子育て―――自分で考える子どもになる5つのルール
ベン・ファーマン
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 225,492

・関連記事
全国民に毎月11万円、フィンランドが世界初のベーシックインカム導入へ | BUZZAP!(バザップ!)

乳児用液体ミルクがついに国内製造へ、喜びの声が溢れる | BUZZAP!(バザップ!)

赤ちゃんの健康を見守り異常を即座に検知する「新生児用スマートソックス」が誕生 | BUZZAP!(バザップ!)

今さら「日本は手遅れになる」と安倍首相が明言した少子高齢化問題、子育て世代への過酷な仕打ちの数々をまとめてみた | BUZZAP!(バザップ!)

出生数が2年連続で100万人割れの94万1千人、昨年を3万6千人下回り過去最低を更新 | BUZZAP!(バザップ!)