夏の北欧の永遠に続くかのような黄昏の中をスナイフェルスネス半島へとひた走ります。目的地はアイスランドで最も美しい山です。
シンクヴェトリル国立公園を後にしたBUZZAP!取材班は、カークワフェル山(編集部注:キルキュフェトル山と表記することもあり)に向かいます。
時間は20時を回っていましたが、ようやく少しずつ夕焼けが始まったばかり。夜が訪れるまでに辿り着くことができるでしょうか。
スナイフェルネス半島は付け根の部分までで首都レイキャビクから150km程度。そこからカークワフェル山までもおよそ70kmとなります。
シンクヴェトリル国立公園から36号線を西進し、レイキャビク北東で1号線のリングロードにぶつかるのでそこから北上します。
クヴァルフィヨルズゥル湾の有料海底トンネル(1000ISK)を抜ける頃には車の数もだいぶ減ってきますが、やはり幹線道路のたそれなりに行き交っています。フィヨルド独特の光景をあちこちで見ることができます。
このような感じに夕日が北西の空からギラギラと照りつけます。どこまでも続く雄大な絶景の中、沈みそうでいつまで経っても沈まない太陽の姿には、異星に来てしまったかのような不思議な感覚を覚えさせられます。
この先の大橋を渡るとボルガルネースです。スナイフェルスネス半島までの中継地点であり、最も大きな街でもあります。この街でリングロードを外れて54号線に入ります。
ここまで来ると車の数はさらに少なくなります。シガーロスのMVそのもののような広大な原野の先に聳え立つ息を呑むような山々。徐々に夜の帳が降りてきましたが、時間の流れがスローモーションになっているかのようにゆっくりと、本当にゆっくりと暗くなっていきます。
本来ならば56号線を通って半島を横断するのですが、交通事情により54号線を直進して半島の先の方で横断して戻るルートに。この半島超えの時には7月であったにも関わらず雪がぱらつきました。しかも未舗装路の急な下り坂のため、運転に不慣れな人にはお勧めできません。
そして4時間ほどのドライブの末、ようやくカークワフェル山に辿り着きました。半島の南は暗かったものの、太陽が北側にあるためかこちら側ではまだ黄昏が残っていました。
この辺りが最もカークワフェル山が尖って見えるポイントでしょうか。
この辺りから見た稜線の滑らかさと水面に映える夕焼けの美しさはなんとも言葉にしようがありません。風の音だけが聞える、本当に静かな最果ての景色です。
この日の終わりなき夕焼けの情景は日本にいては決して見られないもの。惑星の運行そのものが作り出す美とでも言うべきでしょうか。
そして、この日の宿泊場所はさらに半島の先端へと走ったヘリサンドゥルのキャンプ場。奥に見えるのはスナイフェルスヨークトルです。
ジュール・ヴェルヌのSF小説「地底探検」にも登場した山といえばピンとくる人もいるのではないでしょうか。
キャンプ場には旅行者たちの車が所狭しと並んでいました。レンタカーもあれば自前のキャンピングカーも。
夕焼けが燃えるように美しくなってきたので、寝静まった街を歩いてみることにしました。
当然誰も歩いていません。現地時間で午前1時過ぎですが、この薄明かりです。
小さな港湾設備のようです。海の方に歩いてみます。
街の海辺にモニュメントがありました。
「いったい自分はどこまで来てしまったのだろう」という気分に浸れることは間違いありません。そんな最果て感の溢れる小さな街のモニュメントでした。
海を見ると、日は沈んだもののまだ夕焼けが残っています。夏至から1ヶ月が過ぎたこの時期でも、夜は完全に暗くならずに朝が訪れるとのこと。もしかしたらこれはもう朝焼けなのかもしれません。
最後にビーチに降りてみました。ひとり波打ち際に座って、沈みきることのない太陽の残照を眺めながら、この浜辺に永遠に寄せては返す波の音に耳をそばだててみるのもよいでしょう。
さて、最後に首都レイキャビクに戻り、この北欧通信は終わりを迎えます。
エンターブレイン
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