【追記あり】東大法学部卒で弁護士の柴山文科相が政治活動と選挙運動の違いを理解していない事が判明、「本人なの?」と疑われる事態に



このアカウントの「中の人」が本当に柴山文科相なのか疑わざるを得ないレベルの受け答えとなっています。詳細は以下から。


◆「無敵論法」の柴山文科相の炎上が止まらない
先月大学入試共通テスト問題に関して「サイレントマジョリティは賛成です」という無敵論法を繰り出してしまった柴山文科相がまたしても炎上していますが、現役閣僚としてちょっと信じられないレベルにまで達しています。

最初に確認しておきますが、柴山昌彦文部科学大臣は自身の公式サイトによると東京大学の法学部を卒業、司法試験にも合格し、弁護士資格を取得している人物です。

柴山文科相は2020年度から始まる予定の上記の大学入試共通テスト問題に関し、当事者となる10代の高校生らからツイッター上などで繰り返しこの方針の撤回を求められ、批判を浴びてきています。

◆高校生が「昼食の時間に政治の話」したら「選挙運動」という誤解
そうした中で、高校生が柴山文科相のツイートへのコメント欄で「参院選の際も昼食の時間に政治の話をしていたりしていた」という内容に対して柴山文科相は9月8日に「こうした行為は適切でしょうか?」とツイート。これには女性自身柴山文科大臣 Twitterで高校生の政治話に疑問呈し非難殺到という記事で大きく批判しています。



なお、当初はこの高校生のコメント欄での対話相手の教師が安倍政権に批判的なため、こちらのアカウントとと間違えて返信をしているのではないかとの憶測もありました。



もちろん日本は北朝鮮や中華人民共和国とは違って表現の自由が憲法に明記されているため、政治を議論をする中で現政権への批判が出てくる事は特に問題ありません。ただしこれまでの柴山文科相の発言を見るに、この「誤爆」説が有力かと思われていました。

しかし9月9日になって柴山文科相は女性自身の記事について公選法を持ち出して批判。その中で上記高校生のコメントを画像で掲載し、誤爆説を自ら完全払拭してしまいました。



続けて以下のツイートで「学生が旬の時事問題を取り上げて議論することに何の異論もない」としながらも「しかし未成年者(18歳未満に引き下げられたが高3はかなりが含まれる)の党派色を伴う選挙運動は法律上禁止されている」としています。



つまり、普通に日本語を読めば「昼食の時間に政治の話」をすることをことを「党派色を伴う選挙運動」であり、違法行為だと指摘していることになります。

ですが「昼食の時間に政治の話」をすることは、いわゆる「政治活動」には当たるものの「選挙運動」とは言えません。加えてこの高校生アカウントは当時から既に18歳であったことをツイートしており、選挙運動をしていたとしても何ら問題はありません。

なお、自民党は2019年4月30日に多くの18歳未満の有名人を起用した♯自民党2019「新時代」篇60秒という動画をアップしており、仮に「昼食の時間に政治の話」が「党派色を伴う選挙運動」というのであれば、こちらも完全アウトとなってしまいます。


◆「政治活動」と「選挙運動」の違いって?
さて、この問題について東大法学部卒で弁護士の柴山文科相は、批判に対して「選挙運動の定義を調べてみて下さい」とツイート。せっかくなので調べてみましょう。



新宿区の政治活動についてというページが分かりやすいため、一部を引用します。

政治活動とは、「一般的には政治上の目的をもって行われる一切の活動、すなわち政治上の主義、施策を推進し、支持し、若しくはこれに反対し又は候補者を推薦し、支持し、若しくはこれに反対することを目的として行う直接間接の一切の行為をいう。」ものとされています。したがって、この行為の中には、特定の候補者の当選を図るために行う選挙運動にわたる活動も含まれることとなります。

政治活動について:新宿区より引用)


ということで、一般的な政治活動には「政治上の目的をもって行われる一切の活動」が含まれるため、選挙運動もこの一環ということになります。しかし、注意が必要なのは続く以下の部分。

しかしながら、公職選挙法においては、「政治活動」と「選挙運動」を理論上はっきり区別しており、ここにいう政治活動とは、「政治上の目的をもって行われるすべての行為の中から、選挙運動にわたる行為を除いた一切の行為をいう。」ものとされています。

政治活動について:新宿区より引用)


つまり選挙運動は広義の政治活動には含まれるものの、公職選挙法の観点からは政治活動は「政治上の目的をもって行われるすべての行為の中から、選挙運動にわたる行為を除いた一切の行為をいう」とされます。

柴山文科相が公職選挙法を念頭に置いていることは以下のツイートからも明白です。



総務省は選挙運動を「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」と定義しており、「昼食の時間に政治の話」をすること不適切だと考えることは完全に無理筋です。

もし「昼食の時間に政治の話」をして、その議論の中で「〇〇党はよくやってる」「××党がいいんじゃない」程度のやりとりがあったとしてもなんら問題はありませんし、18歳以上であれば特定候補を応援しても違法行為にはなりません。

つまり総務省の定義に従うならば、柴山文科相は東大法学部卒かつ弁護士の現役文部科学大臣という立場ながら、政治活動と選挙運動の違いを区別できていないことが分かります。

ネット上では当然全方位から批判が上がっており、国民民主党の原口一博元総務相からは「本当に柴山さんですか?」と疑われる事態となっています。




なお、文部科学省は2015年の「高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について(通知)で高校生の政治的教養の教育について以下のように通知しています。

政治的教養の教育においては、議会制民主主義など民主主義の意義とともに、選挙や投票が政策に及ぼす影響などの政策形成の仕組みや選挙の具体的な投票方法など、政治や選挙についての理解を重視すること。あわせて、学校教育全体を通じて育むことが求められる、論理的思考力、現実社会の諸課題について多面的・多角的に考察し、公正に判断する力、現実社会の諸課題を見いだし、協働的に追究し解決する力、公共的な事柄に自ら参画しようとする意欲や態度を身に付けさせること。

高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について(通知):文部科学省より引用)


「昼食の時間に政治の話をする18歳の高校生」はまさにこの文科省の目指す輝かしい成功例のはずですが、どの辺りがお気に召さないのでしょうか。

【9/9 16:30追記】
柴山文科相がここまでの批判に応える形でNHKの記事を引用していますが、どう読んでもさらなる「自爆の上塗り」となっています。



この「先に述べたようなやり取り」というのは、文脈上コメント欄での高校生と教師のやりとりか、柴山文科相と他のアカウントのやりとりのどちらかということになります。

柴山文科相がリンクしたのはNHKの「ドイツの政治教育と中立性」(視点・論点) _ 視点・論点 _ 解説アーカイブス _ NHK 解説委員室という早稲田大学の近藤孝弘教授によるドイツの政治教育に関する解説記事。

「政治教育における中立性」が大きなテーマとなっており、非常に読み応えのある記事なのですが、柴山文科相が批判したやりとりを全力で肯定する内容となっています。

一部のみ引用しますが、これを「都合のいい切り取りだ!」と考える方はぜひとも全文を読んでみてください。

学校は様々な意見や考え方が出会う場所として考えられる必要があります。中立的であるとは、みんなが自由に意見を述べることが期待されているということであって、政治的な意見を持ち込んではいけないというのでは本末転倒です。

個々の教員も市民である以上、自分の意見を表明するのは当然であるという理解がまずあります。中立性は、厳密な意味では、学校の設置者である政府や地方公共団体に対して求められるものです。

政治教育では、現実の社会には様々な見解があると教えるのですから、生徒は教員の意見もそのなかの1つとして理解することになります。

政治教育は一人ひとりの生徒に自分の意見を持つように求めているのですから、教員がそれをしないのでは、悪い見本を示すことになってしまいます。

「ドイツの政治教育と中立性」(視点・論点) _ 視点・論点 _ 解説アーカイブス _ NHK 解説委員室より引用)


「こういう考え方も取り組みも成熟していない日本は、確かにドイツとは『雲泥の差』だよね」とアクロバット擁護も可能かもしれませんが、文科相としての日本語の文章読解力に大きな疑問符が付いても致し方ありません。

柴山文科相は最終段落の筆者の警句を繰り返し声に出して読んでみてはいかがでしょうか。

むしろ、自分は政治教育らしい政治教育を受けたことがなく、また中立性について深く考えたことがなかった私たち大人が、民主主義をともに担う若者のために、どれだけ真面目に政治教育について考えることができるのか、このことがいま問われているのだと私は考えています。

「ドイツの政治教育と中立性」(視点・論点) _ 視点・論点 _ 解説アーカイブス _ NHK 解説委員室より引用)


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