ヘイトスピーチに刑事罰が下されることになりました。詳細は以下から。
◆全国初の刑事罰付き反ヘイト条例が成立
川崎市議会は12月12日、差別を禁止し、ヘイトスピ-チ(差別扇動表現)を繰り返した人物に刑事罰を科す「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(差別根絶条例)を全会一致で可決、成立しました。ヘイトスピーチに刑事罰を科す条例は全国初となります。
この条例の罰則対象の差別的行為は、市内の道路や公園など公共の場において、拡声器やプラカ-ドなどを使った言動によって、「居住する地域から退去させることを扇動、告知する」「生命、身体、自由、名誉、財産に危害を加えることを扇動、告知する」「人以外のものにたとえるなど、著しく侮辱する」ものであると規定。
これらは法務省人権擁護局の「ヘイトスピーチ対策プロジェクトチーム」がヘイトスピーチ対策法を踏まえて例示した「典型的なヘイトスピーチ」に準ずるもので、極めて網羅的であり妥当な基準と言えます。
条例では、市の勧告・命令に従わずに3回目のヘイトスピ-チを行った場合に氏名を公表。その上で捜査機関に告発。これで起訴されて刑事裁判で有罪になれば、最高50万円の罰金が科せられることに。この罰則は2020年7月1日から適用されることになります。
ただし、表現の自由に配慮して勧告・命令・氏名公表の前には識者らで構成する審査会の意見を聞き、ヘイトに該当するかを検討することで行政側の恣意的な判断を防ぐとされています。
◆ネット上のヘイトスピーチは対象外
ただし大きな問題は、この条例が適用されるのは現実世界でのヘイトスピーチのみということ。蔓延するインターネット上のヘイトスピーチは罰則対象となりません。
実際にはYouTubeでは昨年の差別動画削除運動で1000チャンネル・50万本以上が削除された事からも分かるように、ヘイトスピーチの「本丸」はインターネットといっても過言ではありません。
大手ヘイトデマまとめサイトの「保守速報」はヘイトスピーチ訴訟で敗訴したものの、ヘイトスピーチを垂れ流すまとめサイトは未だに多数存在しています。
差別と戦う動きも本格化しているものの、これらは広大なネットの海に存在するヘイトスピーチの氷山の一角に過ぎず、現在もツイッターをはじめとしたSNS上や巨大掲示板などでは大量のヘイトスピーチが生み出されています。
今回の条例は大きな一歩ではありますが、インターネット上のヘイトスピーチをどのように禁止していくか、大きな課題が浮き彫りになった形です。
(Photo by Robert Brown, Kaje, )
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