自殺者を減らすのに、最低賃金を上げると効果的なことが判明



考えてみれば当たり前の話にようやく科学の光が当たりました。詳細は以下から。


ひと口に自殺といっても多種多様な状況や原因があり、単にひとつの要素だけを改善させて済む話ではありません。失恋、病気、人間関係、ハラスメント、差別、別離など、数え上げても切りがありませんが、その中でも経済問題は小さからぬ位置を占めています。

アメリカ合衆国のエモリー大学のJohn Kaufman博士はアメリカ各州とワシントンDCの1990年と2015年の賃金上昇と自殺率の関係性を調査。アメリカ合衆国では連邦法上は2009年以来最低賃金は上昇していませんが、半数以上の州でその後も最低賃金は上昇し続けており、これらの比較が行われています。

Journal of Epidemiology and Community Health」に発表された最新の研究によると、時給が1ドル(約110円)上がるごとに、高卒以下の学歴を持つ18歳から64歳の自殺率が3.5~6%減少しています。

Kaufman博士は2009年の連邦法での2ドルの最低賃金上昇が2009年から2015年の間で26000人の自殺する可能性のあった人の命を救ったと計算しています。

もちろんこれは因果関係とは言えませんが、極めて強い相関関係があることが分かります。低学歴の人の自殺率が最低賃金とリンクする理由として、Kaufman博士は低学歴であるほど低賃金で精神的なストレスを抱え込む仕事に就かざるを得ない場合が多いからだと指摘します。


アメリカ合衆国では心身に不調をきたした場合、保険の問題から医療機関に掛かるのは非常に高額な選択肢となっています。金銭的な問題から適切な医療を受けられない場合に自殺率が上がることは十分に考えられます。

また日本で言うブラック企業に就職してしまったり、会社でハラスメントを受けた場合もお金があれば余裕を持って転職を考えられますが、常にカツカツではそうもいきません。

高学歴の人の自殺率についてはここでは言及されていませんが、ご存じのように大企業で十分な賃金をもらっている場合でも(4年前の電通の新入社員のように)自殺に走る可能性はあります。こちらはまた別の対策が必要ということ。

最低賃金の議論をする時に、自殺の全てではなくとも賃金で救える命があることは意識しておいた方がよさそうです。

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