【コラム】「都構想」否決でも止める気ゼロ、吉村知事「もう挑戦しない」でもまったく安心できないいくつかの理由



「大阪都構想」の愛称で維新の会が推進していた「大阪市廃止・特別区設置」の住民投票が反対多数により否決されました。

維新の吉村大阪知事は否決を受けて「都構想」について「挑戦することはもうない」と語りましたが、三度復活させる気満々なため注意が必要です。詳細は以下から。


◆維新の「大阪都構想」が2回連続となる敗北
11月1日に投開票された大阪市廃止・特別区設置住民投票。反対票69万2996票、賛成票67万5829票となり、1万7167票差で維新の会が推進した「都構想」は否決され、大阪市の存続が決定しました。


投票率は前回2015年の際から4.48ポイント下回る62.35%ながら、賛成と反対の差は前回の約1万741票から開いた形です。

「都構想」住民投票の2回連続での敗北を受け、松井大阪市長は敗因は僕の力不足だ。次の世代には頑張ってもらいたいと述べて23年の任期満了での引退を明言。吉村大阪府知事は否決という判断を尊重したい。僕自身が都構想に挑戦することはもうないと公言しました。

反対票を投じた大阪市民は「これで大阪市が消滅することはない」と胸をなでおろしているかもしれませんが、残念ながらこの「大阪都構想」は三度復活する可能性が高い状況です。

◆前回の住民投票も「ラストチャンス」のはずでした
2015年5月17日に行われた「大阪都構想」の最初の住民投票。この際、橋下大阪市長(当時)は「大阪府、大阪市、一つにまとめるラストチャンス。前に進めましょう」と全力推進していましたが敗北し、政界引退を表明しました。


この際「受け入れられなかったことで、やっぱり間違っていたということになるんでしょうね」として「都構想」はもう持ち出さないとしていましたが、たった4か月後の9月3日に「都構想」の実現に再挑戦することを明言。

しかもその際「『ラスト』とは、都構想以外では二重行政はなくならない、唯一という意味だ」などと中学生でも首をかしげる謎解釈を強弁。加えて住民投票の結果が得票率で0.8%差であったことを持ち出し

「全部否定されたわけではない。『ラストチャンスと言ったんだから二度とやるな』と言うのは政治を知らない人の意見。ダブル選で有権者の意思が出ればバージョンアップをやるべきだ」


とぶち上げました。これが今回の2度目の住民投票に繋がる最初の一手となります。つまり維新の会は5年前にも「間違っていた」「もうやらない」と言いながら、舌の根の乾かぬ内に真逆の事を言い出していたことになります。

◆維新として「都構想」再挑戦しないとは言っていない
そして今回の2度目の否決を受けた吉村大阪府知事の発言にも注意が必要です。吉村知事は前述したように否決という判断を尊重したい。僕自身が都構想に挑戦することはもうないと発言しています。

これは「吉村知事自身が都構想に挑戦しない」というだけの意味しかなく、維新の会として、吉村知事以外の首長や議員が都構想に再度挑戦することはまったく否定していません。

また吉村知事が「都構想」から名前を変えて細部を少し変更した、例えば「大阪副首都構想」などをぶち上げ、その中のひとつの施策として「大阪市廃止・特別区設置」を盛り込むといった変化球を用いる可能性も十分にあり得ます。


実際に松井市長は次の世代には頑張ってもらいたいと発言しており、開票速報の際MBSの出口調査で反対派有利の数字を見た維新の馬場幹事長も「喧嘩は勝つまでやる」と発言。

また維新の総務会長で参議院国対委員長も務める東とおる参議院議員も「必ず3度目の挑戦をする時が来ます」とツイートしており、維新の会として「都構想」という喧嘩を今回で終わりにするというつもりはさらさらなさそうです。


もちろん5年前の橋下元市長という前例を見れば、数か月後に華麗に前言撤回して3度目の「都構想」住民投票にまい進する可能性も十分ありますし、そう考えれば松井市長の引退も「やめへんでー!」の一言で撤回する可能性も否定できません。

毎日新聞は「都構想」に関連し、この7年の間に人件費や選挙などで公金100億円超がつぎ込まれてきたことを指摘しています。3度目の投票となればまたもや推定50億円という大金が次ぎこまれることになり、多くの職員のマンパワーもそちらに取られてしまうことに。

それだけのヒトとカネがあれば大阪市のために何ができたのか、過ぎたことだと忘れることなく、じっくり検証する必要がありそうです。

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