北方領土返還拒否をプーチン大統領が明言「憲法に違反する行為は一切しない」



安倍首相は「平和条約が締結されていない異常な戦後を私と(プーチン)大統領の手で終わらせる」としていましたが、「我が国固有の領土」であったはずの北方領土喪失という形での決着となりそうです。詳細は以下から。


ロシアのプーチン大統領が2月14日までに、日本との北方領土交渉について憲法に違反する行為は一切しないと明言しました。

これは2020年7月に発効した改正憲法に盛り込まれた「隣国との国境画定を除き、領土割譲に向けた行為や呼び掛けを容認せず」とする条項を念頭に、日本の領土返還要求に応じない立場を明らかにしたもの。

この映像は2月10日に行われたロシアメディア編集幹部らとの会合での発言を国営テレビが14日夜放映したもので、対日交渉を直接指揮するロシアのトップであるプーチン大統領の明言により、日本の北方領土は名実ともに「消滅」したことになります。

◆北方領土返還問題は安倍政権時に頓挫
日本政府はこれまで平和条約締結後の歯舞、色丹両島の引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言を基礎に交渉。自民党政権は北方領土の全島返還を前提とし、その帰属問題が解決しない限り平和条約の締結はないという姿勢で臨んできました。

特に安倍政権はプーチン大統領と26回の首脳会談を行い、3000億円の経済援助を行うなど、積極的にこの問題に注力してきました。

ですがそうした中で安倍首相は2018年9月、東方経済フォーラムでのプーチン大統領との共同記者会見で平和条約が締結されていない異常な戦後を私と大統領の手で終わらせると発言。

公式ツイッターでも「この戦後70年以上残されてきた課題を、次の世代に先送りすることなく、私とプーチン大統領の手で必ずや終止符を打つという、その強い意思を大統領と完全に共有いたしました」と宣言していました。


ただしこれに対してプーチン大統領はまず平和条約を結ぼう。今すぐにとは言わないが、ことしの年末までに無条件でと応答。続いて「その後、この平和条約をもとに、友人として、すべての係争中の問題について話し合いを続けよう」と述べています。

これを飲むと自民党政権が掲げ続けてきた日本の立場が全て180度覆されることになり、結果的に平和条約の締結もないままに、その後北方領土問題は頓挫することとなりました。

◆北方領土はロシアは新憲法下では「終結済み」問題
ロシア側は日本との交渉で、北方四島について「第2次世界大戦の結果、ロシア領になった」と認めるよう要求し続けていました。新憲法には第2次大戦の旧ソ連の勝利に関し「矮小化を許さない」とも記されており、ここにロシア側に北方領土を返還しない強い意志を見て取ることができます。

外務省は「領土交渉は既に始まっており、改憲の影響は一切ない」との立場を示し、別の政府関係者も「条文はウクライナやクリミア半島を指しており、日本とは関係ない」としていましたが、ロシア側が日本の外務省の見解を受け入れることはありませんでした。

実際にロシア上院・国防安全保障委員会のフランツ・クリンツェビッチ前・第1副委員長は憲法改正を受けて、北方領土交渉について領土交渉は終わった。今後10年、20年、100年、誰が権力を握っても、誰もこの交渉のテーブルに戻ることはできない。ロシア国民はそれを許さないと発言しています。

◆ロシア改憲以前から腰折れだった日本の北方領土問題
なお菅義偉官房長官(当時)もロシア改憲を受けた7月2日の記者会見で「領土問題を解決して平和条約を締結するという基本的な考え方の下、引き続き粘り強く取り組みたい」と従来の立場を繰り返しましたが、実際のところは、2019年版外交青書の時点で「北方四島は日本に帰属する」との文言が消滅しています。

2018年版にあった「未来志向の発想により、平和条約の締結を実現する」との目標も「問題を解決して平和条約を締結」とトーンダウン。日本の法的立場に関する説明も回避していました。

これに先立つ2018年12月に河野外相がこの北方領土問題について質問され、「次の質問どうぞ」と4回連続で無視した珍事を覚えている方も多いのではないでしょうか。


「外交の安倍」前首相が鳴り物入りで推し進めていた北方領土返還交渉ですが、実際にはロシアの改憲以前に腰折れとなっており、昨年の改憲で返還の可能性は事実上消滅。今回のプーチン大統領の発言によりとどめを刺された形です。

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