「週55時間以上の労働」で74万人以上が過労死、2000年から3割増とWHO報告



長時間労働が健康に直接影響すること、また世界的に労働環境が悪化していることが明らかにされています。詳細は以下から。


◆週55時間超の労働で深刻な健康被害に
週55時間を超える長時間労働を原因として、2016年に世界で74万5000人が死亡したことが国連の世界保健機関(WHO)国際労働機関(ILO)による研究で明らかになりました。

これはジャーナル「Environment International」に掲載された論文で、長時間労働と過労死に関する初の世界規模での調査です。

研究によると39万8000人が脳卒中により、また34万7000人が過労を直接の原因とする心疾患により死亡。

週55時間労働は週35~40時間の労働に比べ、脳卒中のリスクを35%高め、虚血性心疾患のリスクを17%高めるとのこと。

週55時間労働する人は世界人口の8.9%、約4億9000万人にも及び、地域別では日本を含む西太平洋地域と東南アジアが最多です。

(人口に対する週55時間労働人口の割合、Global, regional, and national burdens of ischemic heart disease and stroke attributable to exposure to long working hours for 194 countries, 2000?2016_ A systematic analysis from the WHO_ILO Joint Estimates of the Work-rより引用)

またこの過労死の72%を45歳から74歳の男性が占め、中高年男性が特に大きなリスクに晒されています。

2000年のデータと比較すると脳卒中が19%、虚血性心疾患は41.5%増え、全体で29%増加。21世紀に入り世界の労働環境が悪化していることが分かります。


研究では、現在のコロナ禍で賃金の保証のないギグワークや、仕事と生活の境目があやふやなテレワークが増加し、この傾向がより強まっていると警告。

WHOのMaria Neira博士は「週55時間以上の労働は深刻な健康被害です」とし「すべての政府と雇用者、被雇用者は長時間労働が早すぎる死を招くと認識すべきです」としています。

またWHOのテドロス事務局長もこの研究を受けて「脳卒中や心疾患のリスクに値する仕事などない」と表明しています。

注意点として、この研究では直接の死亡のみを対象とし、心身の健康の悪化や間接的な死亡は取り扱っていないため、実際の健康被害はさらに大きい可能性もあります。

◆実際にどれくらいの労働時間?
週55時間労働は週休2日なら連日11時間労働で、月に20日働く計算だと月間220時間。1日8時間労働の20日勤務で160時間となるため、月60時間残業がこの研究の「週55時間労働」ラインとみなせそうです。

なお日本では「過労死ライン」は月80時間残業とされ、2017年に働き方改革で残業の上限が「月100時間未満」と改定(2019年施行)されました。


日本には週55時間以上の長時間労働を続けている人も大勢いると思われますが、リスクはしっかり覚えておいた方がよさそうです。

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