菅首相や河野大臣の「9月末までに16歳以上の対象者分のワクチン確保」という言葉とは大きなズレがあるように見えますが、どういうことなのでしょうか。詳細は以下から。
◆菅首相・河野大臣「ワクチン9月まで供給にメド」
新型コロナのワクチンについて菅首相は4月19日午前、ファイザー社のブーラCEOとの電話協議について「9月までに供給されるメドがたった」と発言。
これに先立つ4月18日、河野太郎ワクチン担当相はフジテレビ「日曜報道 THE PRIME」で「9月末までに対象者分のワクチンの供給が受けることができるようにした」とし、菅首相とブーラCEOの間で「実質的に合意」がなされたと発言。
◆下村政調会長「高齢者だけでも接種に来年までかかる」
一方、自民党の下村政調会長は4月19日、高齢者向けワクチン接種に対し「自治体によっては医療関係者の協力が足らず、65歳以上に限定しても場合によっては来年までかかるのではないか」と発言
これは下村氏が本部長を務める自民党のコロナ対策本部役員会での発言。加えて「全国民が接種できるのは来年春くらいまでかかるところもあるかもしれない」とも述べています。
ということで、自民党としては全国民がワクチンを接種できるのはおよそ1年後との見通しを立てていることが分かります。
◆「供給」から「接種」までのあまりにも遠い距離
政府と自民党の発言が噛み合っていないように見えますが、理由はワクチンが日本に供給されたとしても速やかに摂取できるとは限らないため。
日本では2月17日から医療従事者への優先接種が始まりましたが、4月13日現在で2回の接種が終わったのは、対象者約480万人中の1割程度というのが現状。
4月12日に高齢者への接種も始まったものの、初日は全国で1139回と極めて少なく、9割近いワクチン未接種の医療従事者が高齢者に接種するという高リスクな状況が続いており、完了時期も未定です。
これについては「遅れを表面化させないため、高齢者もアリバイ的に同時並行でスタート」させたとの批判もでています。
なお河野大臣は上記番組で「9月末までに対象者分のワクチンを日本国内に供給することができる。そういう状況にした」と発言したものの回数への言及は避けており、接種時期の展望についても語っていません。
9月末までに実際どれだけの数のワクチンが日本に入るのか、そして実際に国民が摂取できるのはいつになるのか、「実質的に合意」の意味と合わせて非常に気になるところ。
当初は2021年東京オリンピックに間に合わせるはずだったワクチン接種、2021年内に無事摂取できると考えないほうがよいのかもしれません。
【4月20日追記】
立憲民主党などの野党合同ヒアリングによると、厚労省はファイザー製ワクチンについてあくまで「今回お願いをした」「要請した」「メドが立った」とのみ答えており、「合意した」「供給される」とは答えていません。
また国民全員分のワクチン数は決まっているはずですが、具体的な数量についても「詳細な数字ついては申し上げられない」としています。
(ツイート内に動画あり)
なお、NHKの報道でも菅首相は「9月までに、わが国の対象者に対して確実にワクチンを供給できるよう追加供給を要請した。CEOからは、協議を迅速に進めたいという話があった。9月までに供給されるめどが立ったと考えている」と発言。
ファイザー側の「協議を迅速に進めたい」という話を菅首相や政府が「9月までに供給されるめどが立った」と解釈した段階と考えるのが妥当と言えそう。
供給から接種までの時間の開き以前に、「国民全員分の9月までの供給」自体が確定していない可能性も十分ありそうです。
加えて、田村厚生労働相は20日の参院厚生労働委員会で、菅首相とファイザー社の実質合意は「合意書を交わしているわけではない」ことを明らかにしました。
菅首相の発言と合わせて考えれば、合意どころか口約束すらされていない状況と言えなくもありません。
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