何年も前に否定されたデマを得意げに吹聴する人がいる理由がよく分かります。詳細は以下から。
人間ならば誰でも、間違ったことを正しいと信じてしまうことはあります。大切なのは、それが間違いだと分かった時点で知識や信念を修正することのはず。
ですが「権力大好きな右翼」にはそれが困難であるという研究結果をデューク大学のAlyssa Sinclairさんがジャーナル「Psychonomic Bulletin & Review」に掲載しました。
SinclairさんはAmazon Mechanical Turkを通じて集めた278人のアメリカ人を被験者として研究を行いました。
被験者らは「ダイヤモンドは高圧化で炭素から形成される」「犬が見ているのは白黒の世界」「抗生物質はインフルエンザのようなウイルスを殺す」といった120問の日常的な小ネタを提示されて正解か間違いかを判定。またそれぞれの自分の回答にどの程度自身があるかも回答します。
ここでは回答した直後にそれらの小ネタが実際に正解か間違いかの答えが被験者らに提示され、全て回答後に被験者らは政治的な考え方や人間性についてのアンケートを受けます。その後120問うち60問について再度正解か間違いかを尋ねられ、1週間後に残りの60問についてまた正解か間違いかを尋ねられることになります。
全体としては、予想どおり被験者らは最初のテストの時よりも2度目のテストの方が正答率が高くなっていました。
ですが、アンケートで「右翼」かつ「権威主義者」のスコアが高かった被験者では、間違った信念を間違いであると提示された後の正答率が他の被験者らよりも低いことが判明しました。特に、自分が自信をもっている信念に対してはかたくなに訂正しようとしない傾向が判明したのです。
つまり「権力大好きな右翼」は、自分が自信たっぷりに信じている間違いを指摘された際、その間違いを認めて修正しようとしない傾向があることになります。
なお、「右翼」で「権威主義者」ではない被験者においては、自らの回答に自信があるかどうかは信念の訂正とは関連性が見られませんでした。
研究では被験者らの政治的な保守性と社会的優位性への志向も計測されましたが、いずれも信念の訂正との関連は発見できませんでした。ですが、より能動的で公平な考え方の人ほどより間違った信念の訂正が容易であることも分かりました。
Sinclairさんがあえて政治的なトピックではなく日常生活での小ネタを選んだ理由は、「権力大好きな右翼」は政治的信念に関係ないことがらでも、潜在的な認知過程によって信念の訂正ができないのではないかという見立てによるもの。
こうした見立てはアメリカ社会での「権力大好きな右翼」による社会の分断の深刻さを受けたものです。「権力大好きな右翼」が差別主義、国家主義、排外主義、政治的分断に深く関与していることはこれまでも指摘されてきました。
それが現在の新型コロナの蔓延やBlack Lives Matter運動によってはっきりと可視化されました。ノーマスクのコロナパーティが開催され、ミネアポリス暴動の背後にアンティファが暗躍しているというデマを大統領本人が流すなど、差し迫った現状があります。
日本でもネット上を中心にずっと前にデマだと確定したヘイトスピーチや誹謗中傷が乱れ飛んでいる様子を見たことのある人は多いはず。いったいどんな人がそうしたデマ拡散の中心にいるのか、もう一度よく見てみる必要があるのかもしれません。
(Photo by John Kittelsrud)
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