5月28日の国会で安倍首相が辻元清美議員の質問の際に「早く質問しろよ」などとヤジを飛ばした件で先ほど謝罪が行われましたが、全く謝罪になっていない酷いものだと炎上しています。
◆ヤジの経緯
問題となったのは5月28日の「戦争法案」こと安全保障関連法案の審議の際、民主党の辻元清美議員の質疑の際に安倍首相が「早く質問しろよ」などとヤジを飛ばした件。経緯については辻本議員の執筆した以下の記事に質疑の文字起こしも掲載されています。
安倍総理が「早く質問しろよ」発言、三権分立の基本をおわかりでないのか?
この際、直後に質問した民主党の緒方議員が反省の弁を求めたところ、安倍首相は
さきほど辻元議員が、時間が来たのに延々と自説を述べて、いわば私に質問をしないというのは答弁をする機会を与えないということですから、早く質問をしたらどうだということを言ったわけでありますが、しかし言葉が少し強かったとすれば、それはお詫びを申し上げたいと思います。
などと述べています。安倍首相はここで反省の弁らしきものを述べながら「時間が来たのに延々と自説を述べて」などとデマを飛ばしていますが、緒方議員に即座に「民主党の持ち時間の範囲内なんですよね」と否定されています。この件は誤った形で拡大し、一部まとめサイトなどでは「辻元が30分以上演説し、総理がいらだった」という突拍子もないデマにまで膨らんでいました。
◆安倍首相のヤジと答弁のダブルスタンダード
しかも安倍首相は27日には自らが長々と的を射ない答弁を行って身内であるはずの委員長から注意され、28日に「簡潔に答弁する大切さを踏まえ、留意する」と陳謝させられている他、27日の特別委では「与党側は礼儀正しく(答弁)聞いている。(野党の)みなさんも少しは見習ったらどうか」と野党に対してヤジをやめるように呼びかけてまでいます。
他人にダメ出しをしたことを自分は好き放題にやるという、まさに呆れるほどのダブルスタンダードと言わざるを得ません。この事態には野党からの批判のみならず、自民の高村正彦副総裁からも「勇み足だ。首相たるもの言わない方がよかった」と苦言を呈されてしまうというみっともない事態に。
なお、BUZZAP!でも以前お伝えしたように安倍首相には「日教組!」ヤジという前歴も存在しています。
【動画あり】安倍首相が国会で質問中の野党議員に「日教組!日教組!」とヤジを飛ばし叱られる | Your News Online
安倍首相「日教組!」ヤジ問題の背景に関する自らの説明を「正確性を欠く」と訂正するもなぜか「遺憾の意」を表明 | Your News Online
◆さらなる謝罪も謝罪にならず
野党は28日の謝罪は不十分だとしてさらなる謝罪を求めており、今朝安倍首相は衆院平和安全法制特別委員会の冒頭で謝罪を行っています。
ヤジ、首相「重ねておわび、真摯に対応」 特別委で謝罪:朝日新聞デジタル
国会戦争法案審議。安倍晋三「28日の辻本議員への質問の際に、私の不規則発言に関して、言葉が少し強かったとすればお詫び申し上げたい旨、申し上げました。更に先ほど、委員長のご指摘も頂きました。私の発言に関して、重ねてお詫び申し上げると共に、ご指示を踏まえ、真摯に対応して参ります」。
— YAF (@yagainstfascism) 2015, 6月 1
しかしこの謝罪も28日と同じ「言葉が少し強かったとすれば」との仮定の上に立ったお詫びでしかなく、しかも問題となっているのは言葉が強いかどうかですらありません。辻本議員の言葉を借りれば「立法府の委員の質疑を、行政府の長が妨げるということ」が大きな問題なのであり、それは「三権分立や民主主義の基本がわかってない」と言われても仕方がない基礎レベルの話です。この点に対して謝罪がない以上、これが謝罪になっていないのは明らか。
さらに安倍首相はこの「早く質問しろよ」ヤジに留まらず、戦後の安全保障の大きな転換となり得る同法案について、辻本議員が自衛隊員の被害や日本国内のテロの可能性といった「人の生死とか戦争にかかわる話」をしている最中に「大げさなんだよ」とヤジを飛ばしたことも決して忘れてはならないでしょう。
◆「戦争法案」の審議入から2日半での審議拒否・散会まで
この紛糾している「戦争法案」は27日に審議入りし、28日の共産党の志位委員長の兵站と戦闘行為に関する質疑を全文書き起こしたFacebookのポストが12000いいね!6900シェアされるなど、大きな関心を呼んでいます。
小原 美由紀 - 『俺別に共産党に特に肩入れないし、むしろあんまり近づきたくないぐらい思ってるけど、今日の国会答弁の志位さんの力強さっ...
そして29日の午前中、民主党の後藤祐一議員の質問に岸田外相が答えられずに審議がストップ。野党議員が退出し、審議開始からたったの3日で法案の致命的な矛盾が露呈して散会に追い込まれるという異例の事態となっています。これに関しては維新の党の柿沢未途幹事長が詳細を解説する連続ツイートを行っているので少し長くなりますが掲載します。
安保特、口永良部島の噴火で流会になる前から審議はストップしていた。民主党の後藤祐一議員の質疑への岸田外相の答弁をめぐって。これは今回の安保法制における「存立危機事態」の該当要件に関する「急所」を突いたもので、政府も容易に答えられないだろう。これについて私の見解を少し解説したい。
— 柿沢未途(維新の党幹事長) (@310kakizawa) 2015, 5月 29
後藤議員の質問のポイントは、平成10年のガイドラインをめぐる岡田克也氏の質問に「軍事的波及がなければ周辺事態には該当しない」と政府が答弁している点にある。そしてこの答弁は「今も変わらない」と岸田外相は今回、答弁されている。つまり「軍事的波及がなければ周辺事態にならない」。
— 柿沢未途(維新の党幹事長) (@310kakizawa) 2015, 5月 29
で、周辺事態改め重要影響事態=わが国の平和と安全に重要な影響を及ぼす、放置すればわが国への武力攻撃に至る恐れのある事態と定義される。で、これは「軍事的波及がなければ重要影響事態にならない」。じゃあ、武力行使の新3要件の「存立危機事態」では「軍事的波及」は該当要件になっているか。
— 柿沢未途(維新の党幹事長) (@310kakizawa) 2015, 5月 29
「存立危機事態」では、国民生活に死活的影響を与える経済被害の恐れがあれば「軍事的波及」がなくてもわが国の武力行使が可能となるような答弁を政府はしている。けれどおかしい。わが国に影響を与える軍事衝突である「重要影響事態」に、わが国により深刻な「存立危機事態」は包含されるのだから。
— 柿沢未途(維新の党幹事長) (@310kakizawa) 2015, 5月 29
ちょうど同心円を書いて、外側の円が「重要影響事態」とすると、その中でもっと狭い、もっとわが国に深刻な円が「存立危機事態」だ。外側の円の該当要件が「軍事的波及」であるにもかかわらず、もっと狭い内側の円が「軍事的波及がなくても可」とはなり得ない。ましてやこれは「武力行使」の要件だ。
— 柿沢未途(維新の党幹事長) (@310kakizawa) 2015, 5月 29
日本が海外に行って自ら武力行使する時の要件が、他国の武力行使を後ろから支援する時の要件より緩くて良い訳がない。「重要影響事態」は「軍事的波及のみ」で「存立危機事態」は「軍事的波及なしでも可」という答弁は、政府に致命的な矛盾をもたらしている。
— 柿沢未途(維新の党幹事長) (@310kakizawa) 2015, 5月 29
この致命的な政府の矛盾を克服するには、①「存立危機事態」も「軍事的波及のみ」とする(同心円の中にすっぽり収める)、②「存立危機事態」だが「重要影響事態」でない事態をひねり出す(内側の円を一部、外側の円からはみ出させる)―の2つの考え方があり得る。だがそれで新たな矛盾が生まれる。
— 柿沢未途(維新の党幹事長) (@310kakizawa) 2015, 5月 29
①の場合、「軍事的波及」のないホルムズ海峡の機雷掃海は「存立危機事態」に該当せず新3要件の下では実施不可能になる。これは政府には致命的だろう。②の場合、わが国の存立が危ないのに平和と安全に重要な影響はない、なんてアクロバティックな話はそもそも論理として成り立たない。これも致命的。
— 柿沢未途(維新の党幹事長) (@310kakizawa) 2015, 5月 29
だから、政府は困ってしまって、岸田外相はろくに答弁できず、審議もストップとなった。机上の空論で箱庭のような観念的な軍事絵図で安保法制を描いた(しかも少人数で急いで)から、四方八方から見てみるとこういう詰まっていない致命的な矛盾点が次々に見つかる。政府は本当に前途多難だと思う。
— 柿沢未途(維新の党幹事長) (@310kakizawa) 2015, 5月 29
「戦争法案」の中身についても政府案にこれだけ多くの矛盾やデマが露呈している状況ですが、この戦後の風景を一変させる重要法案の審議における安倍首相の態度は見るに耐えないもの。謝罪ひとつまともにできない人物が、実際の武力行使が発生した際に事態をアンダー・コントロールの状態に置けるのか大きな不安が残ります。
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