アベノマスクを超える惨状が、新型コロナと闘う最前線のはずの医療機関で繰り広げられているようです。詳細は以下から。
◆政府あっせんの消毒液、「濃度低くて使えない」と苦情が殺到
新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、政府が都道府県を通じて医療機関などに優先的に供給をあっせんしている消毒用エタノールに「濃度が低い」などの苦情が数十件寄せられていることを5月23日に共同通信が伝えています。
当然ながら、濃度が不十分であれば新型コロナウイルスを消毒できず医療従事者の感染を予防できない上、院内感染を引き起こすきっかけともなり得ます。
こうした新型コロナ対策としてまったく役に立たない政府あっせんの消毒液が少なくとも全国で数十もの医療機関に送り付けられていることになります。
◆高額で返品もキャンセルも不可、詐欺との「誤解」も
この政府による「消毒液あっせん」問題は、5月21日の時点で神戸新聞が取り上げていますが、濃度が低く役に立たないだけでなく、まるで詐欺事件のような状況になっています。
神戸新聞によると、通常1リットル1000円程度のはずの消毒液が、神戸市や加古川市などの約950ヶ所の診療所に1リットル約4000円+手数料+送料の代引きで送り付けられたとのこと。
県医師会は「極めて高額」と指摘しており、詐欺と誤解した診療所などもあった上、受け取り拒否のケースも続出。当然ながら返品を求める声も多く上がっています。
◆政府の消毒液あっせんとはどのような政策か
いったいどうしてこんなことになったのでしょうか。そもそもこの政策は新型コロナの感染拡大を受けて医療機関で消毒液が不足したため、政府が3月に優先供給を都道府県に通知したことを受けたもの。
政府は医療機関や高齢者施設などの需要を都道府県が取りまとめ、国に協力する製造販売業者がそれぞれに売るという仕組みを作りました。
上記の兵庫県の事例によると、4月中旬までに県医師会が診療所に希望分量を調査。その時点で国や県からは製造元や商品名、価格、配布時期は示されず、のちに約十種類の製品リストや価格が分かったものの届く製品は選べない上に返品もキャンセルも不可という文字通りのクソ仕様でした。
兵庫県医師会は「すでに通常ルートで格安な商品が流通している。(今後は)国の供給計画に従う必要はない」と一蹴。県医師会の足立光平副会長も「製品の内容を確認できず、国の計画そのものに無理があった。受け取り拒否も当然だ。(県にも)しかるべき対応をしてほしい」と怒り心頭といった模様。
厚生労働省の担当者は「非常事態のため、製品の種類や価格など個別の要望に応えられず申し訳ない。ただ、キャンセルや返品は受け付けないと都道府県には通知しており、理解してほしい」と説明していますが、民間企業ならばクーリングオフどころか消費者庁に通報するレベルのビジネスを政府主導で「理解を求めて」いることになります。
◆新型コロナと闘う最前線でのアベノマスク以下の惨状
多額の税金をつぎ込みながら配布もおぼつかないアベノマスクが大きな批判の的となっていますが、こちらは医療機関という新型コロナと闘う現場での必需品の消毒液であり、当の医療機関が高額な代金を負担させられるという点でさらに悪質。
最前線に補給される弾薬が不良品だらけであれば戦線維持はままなりませんが、政府が新型コロナ対策をどのように捉えているのかがよく分かるエピソードとも言えそうです。
なお、現時点でこれらの消毒液を供給した「国に協力する製造販売業者」がどこなのかは明らかにされていません。アベノマスクと同様にどの企業が請け負い、どのような理由でこの非常事態にぼったくり価格で送り付けたのか、徹底究明する必要があります。
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