ストーカー対策のはずがとんでもない話になっています。詳細は以下から。
森友学園問題に絡む財務省の公文書改ざん問題で大揺れとなる国会。今週になってからは連日官邸前や国会前で数千人から1万人規模のデモが行われています。
しかし、東京都でそんな国民の憲法に保障された権利であるデモすらも規制する迷惑防止条例の改正案が成立してしまう可能性があり、大きな批判が浴びせかけられています。
◆迷惑防止条例改正案が恣意的過ぎて危険なことに
問題となっているのは2018年2月21日に始まった都議会定例会に警視庁が提出した「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の一部を改正する条例案(迷惑防止条例改正案)」。
警視庁は概要で「スマートフォンの普及やLINE、Facebookなど新たなコミュニケーション手段であるSNS利用者の急増により場所的・時間的な制約なくつきまとい行為が行われるようになり、現行条例の行為類型では対応できない相談事案が増加」「人身安全関連事案(重大事件)に発展するおそれがあり、早急な対応が必要」として2016年に改正されたストーカー規制法に対応させるかのように改正案の提出理由を述べています。
それによると繰り返し「みだりにうろつくこと」「監視していると告げること」「電子メール(SNS 含む)を送信すること」「名誉を害する事項を告げること」「性的羞恥心を害する事項を告げること」を規制の対象として、罰則を重くするとのこと。
ストーカー対策であればこれらはある程度納得のいくものですが、大きな問題はその対象がストーカー規制法の対象となる「特定の者に対する恋愛感情その他好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」をはるかに超えていることにあります。
迷惑防止条例改正案の規制対象は「正当な理由なく、専ら、特定の者に対するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的」という極めて曖昧模糊とした、取締当局の判断でいくらでも拡大解釈できる恣意的なものになっています。
何が問題かというと、ストーカーであろうとなかろうと、路上をうろついたりメールを送ったりSNSに投稿することが「特定の者に対するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する」ために行ったとされれば、乙前逮捕される危険があるということ。
当然ながら何が「正当な理由」なのかは提示されておらず、誰が当人が「ねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的」で行っているかを判断するのも当局です。そしてこれは親告罪ではないため、対象者からの告発がなくとも当局の判断で逮捕される可能性があります。
ねたみや恨みでなかったとしても「その他の悪意の感情」という謎の抽象的な表現にお前は当てはまるのだと言われた際に、何のことだか分からないため言われた側は否定のしようもなく、まったく心当たりのない状態で逮捕されることも文面上は十分にあり得るのです。
◆国会前デモの規制にも直結
ではこの改正案が成立したらどうなるのでしょうか?まず対象への恋愛感情が関係ないということは、その対象は例えば安倍首相や自民党であっても成立します。つまりは公文書改ざん問題で国会や首相官邸付近でデモや抗議行動を行う事は「みだりにうろつく」行為とされる可能性が否定できません。
またSNSなどのネット上で、政府や国会議員、企業やメディアなどを繰り返し批判することも「ねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的」で「電子メール(SNS 含む)を送信すること」に当たるとされかねないため、これまでどおりにネットを使っていても突然該当するとされるケースも考えられます。
さらには「名誉を害する事項を告げること」の「害する」が意味するものは名誉棄損よりも幅が広いため、明確なデマを用いて他者を攻撃する百田尚樹のような卑劣漢でなくとも、主観的に名誉を害されたと感じれば適用される可能性が残されています。しかもそれが親告罪ではなく、当局側の判断で行われてしまうという恐ろしいことになっています。
ということで、今回の東京都迷惑防止条例改正案はストーカー対策を装ってはいますが、事実上デモを萎縮させ、参加者を逮捕するハードルを大きく下げるものになると同時に、企業に対する不買運動ややメディアに対する批判も含めた言論や表現自体を封じ込めることになってしまいます。
警察が抽象的で恣意的に活用できる法律を持てばどうなるか、風営法改正に関わった人であれば先日警視庁が六本木のDJブースすらないショットバーに改正風営法違反の疑いで立ち入ったニュースを思い出すでしょう。これは思想の違いに関係なく、誰にとっても非常に危険な改正案ということがご理解いただけたでしょうか?
この改正案に対してのより法的に詳細な意見は自由法曹団東京支部による「東京都迷惑防止条例改正に反対する意見書」で読むことができますが、改正案はデモを行う権利を含む憲法21条の表現の自由に反する上に、法律によって禁止されていない行為を禁止し処罰をするものであり「法律の範囲内で条例を制定することができる」とする憲法94条にも反すると批判しています。
自由法曹団 東京支部 〔東京都迷惑防止条例改正に反対する意見書〕
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