自らが市長を務める市の内情すら把握せずにデマで生活保護受給者らを攻撃していたことが明らかになりました。詳細は以下から。
事の発端は2017年7月、大阪市と大阪市立大が共同で生活保護受給者に関する「ビッグデータを活用」して分析した結果が発表され、2015年度に住民登録日から受給開始日までの期間が6カ月未満と短かったケースが、男性の19.8%、女性の10.6%に上る事が明らかにされました。
◆「生活保護目的で流入している」と問題視
吉村洋文市長はこれを受けて以下のようにツイートし、「大阪市の審査が緩いということがあってはならない。一生懸命働き、税を納めている市民は納得しない」とも述べました。
生活保護が必要な人に最後の砦として生活保護を認めるのは当然。しかし、大阪市に転入してすぐ保護申請するケースが突出して多い。なんでだ?これを適正に審査するのは当たり前。だって大阪市民の税を使うんだから。https://t.co/do0S490mdX @YahooNewsTopics
— 吉村洋文(大阪市長) (@hiroyoshimura) 2017年7月20日
(魚拓)
定例会見でも「生活保護を目的で大阪市に入ってくるって、それちょっと違うんじゃないと僕も思いますから」などと同様の発言をしています。動画では50:15から。
2017年7月20日(木) 吉村洋文市長 定例会見 - YouTube
◆市長発言の問題点
この吉村市長の発言については既に昨年9月時点でも「『生活保護目当ての困窮者が押し寄せてくる』と嘆く大阪市の邪推」などで問題点が詳細に指摘されていました。
発言自体の問題点については記事に譲りますが、改めて指摘しなければならないのは吉村市長らは最初から「生活保護目当てに大阪市に流入してくる人々がいるのでは」との仮説を持った上で「ビッグデータ」の分析に進んでいたということ。つまりは予断です。
この記事内では大阪市大の研究者らの「こういうトレンドは見られるが、だからといって『これが原因だ』とは言えない」「方法や元データの限界を考えると、『だから、こう対策すべき』とは言えない」という指摘があったことが示されていますが、吉村市長が行った発言は上記の通り。
なお、大阪市は「生活保護目当てに流入してきた以上、生活保護受給期間は長くなるであろう」という仮説も立てていたものの、「生活保護目当てに流入」とされた生活保護受給者の受給期間が長いという事実はありませんでした。
◆大阪市の調査の結果デマと判明
そして大阪市が2018年3月28日に「転入直後に生活保護の受給を始めた世帯」を調べた結果、不自然な転入はなかったとする調査結果が出され、市は「保護目的での生活困窮者の流入はなく、大阪市が不当に負担を押しつけられている事実もない」と指摘。
この調査は2017年4~6月に大阪市で生活保護の受給を始めた全4148世帯を対象に行ったもので、保護申請に訪れた際の面談記録などを改めて精査した結果、転入から1ヶ月未満での新規受給者が220世帯あることが判明。
このうち136世帯は「以前住んでいた」「親族を頼ってやってきた」など、大阪市に縁のある人たちと判明。残る84世帯も「仕事を探しに来た」(22世帯)などの事例が目立ち、不自然な転入はなかったとのこと。
2016年度の大阪市の転出入でも保護受給世帯の転入超過は12.7%と市全体の数値(18.4%)を下回っており、「受給者の流入が特別に多いとは言えない」と結論づけました。
◆「首長が思い込みのデマで攻撃」という地獄
吉村市長がこの件で行ったのは、自らが予め抱えていた思い込みを正当化するのに都合のいいデータをつまみ食いし、研究者らの指摘を無視して「大阪市に転入してすぐ保護申請するケースが突出して多い」と槍玉に上げたということ。
つまりは「審査が甘いからと大阪市に生活保護費をたかりに来る貧困層」という、本当は存在しない藁人形をせっせとこしらえて「大阪市の審査が緩いということがあってはならない。一生懸命働き、税を納めている市民は納得しない」と攻撃してみせたのです。
そもそも生活保護自体は条件を満たせば受けることのできる当然の権利であり、行政にとやかく言われるようなものではありません。むしろ生活保護を受けなければ生活できないような環境しか提供できない自治体の不備が責められるべきところ。
デマを吹聴する前に大阪市として取り組むべき事が多々あるのではないでしょうか?
大阪市:生活保護目的の転入なし 受給世帯を再調査 - 毎日新聞
「生活保護目当ての困窮者が押し寄せてくる」と嘆く大阪市の邪推
「生活困窮者が流入」生活保護の審査強化へ 大阪市、受給目的なのか調査 - 産経ニュース
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