英語民間試験が延期となった大学入学共通テストですが、もうひとつの大問題と指摘されていた「記述式問題」の採点方法が公平性や正確性の面で大学入試としてあり得ないレベルの問題を抱えていることが明らかになりました。詳細は以下から。
◆記述式問題の根本的な問題点
大学入学共通テストではマークシート方式のセンター試験と違い、記述式問題が出題されます。2020年度にまず国語と数学で導入され、2024年度以降は地理歴史・公民や理科分野にも広げる予定となっています。
ここで問題となるのが採点。記述式問題は人力で採点しなくてはなりませんが、大学入試に間に合わせるため約50万人の受験生の答案を20日是前後で採点する必要があります。
これに1万人程度の採点者が必要となりますが、プロの採点者や大学教授、大学院生らではこの数を確保できないため、大学生バイトにも採点を行わせるとされています。
記述式問題では当然ながら採点基準が設けられ、完全な正解でなくとも部分点が与えられます。誤字脱字や論理の飛躍などを含め、どの要素がどれほど減点対象となるのか、全ての受験生に対して公平に基準を適用できるのかが問題となります。
いったいどうするつもりなのかという批判はこれまでもありましたが、対策はちょっと考えられないレベルのお粗末な話でした。
◆ベネッセ「バイト3人がかりで採点すればミス防止になるよね」
記述式問題の採点は一般競争入札によにより61億6000万円で落札され、ベネッセの関連会社「学力評価研究機構」に委託されることが決まっていますが、ベネッセ側は設問ごとにアルバイトの学生などを3人以上割り当てることで、採点ミスが起きないように取り組むとしています。
確かにトリプルチェックによって単純なヒューマンエラーを防ぐことは可能かもしれませんが、問題は部分点の加点や減点をどの程度行うのかという判断を決定権も責任もないアルバイトがどこまで正確に行えるかが担保されないこと。
そして、そうした判断と採点の基準が1万人の全採点者間で共有され、正確に実施される保証がどこにもないことです。
ベネッセ側は「模擬試験などで年間3000万枚の採点を行うなど、会社には採点業務のノウハウがある」としていますが、リハーサルと本番の試験の重みは全く違います。
多くの受験生にとって大学受験は人生を賭けた大勝負となりますが、その試験の信頼性の土台が3人のアルバイトというのは何とも心許ないと言わざるを得ません。
◆正解例がベネッセ側に事前通知されてしまう
そしてさらなる大問題はベネッセの関連会社である「学力評価研究機構」が試験を実施する前に、正答例や採点基準の作成に関与するということ。
これは大学受験にも深く関わっている教育ビジネスの大手民間業者でが、試験前から問題と正答例が知らされる立場にあるということを意味します。この時点で大学入学共通テストの公平性は大きく損なわれることは言うまでもありません。
例えば「入試によく出る」と謳った参考書をベネッセが出版する時、そこに暗に込められる意味を無視することができるでしょうか?
加えて大きな問題は情報漏洩です。大学入試センターは「守秘義務などを厳守してもらうことで、問題の漏えいなどを防ぎたい」としていますが、学生バイトを含む1万人の採点者が存在するなど、極めて大勢の人間が採点に関与しているのが現実。
どこかで漏れて広まれば公平性は大きく損なわれますし、高額で「問題と正答例」が裏取引される可能性もある上に、詐欺や愉快犯が偽物を流して混乱が広がることも十分に考えられます。
大学入試センターは「こうした方法でなければ、20日間という短期間で大量の採点を行うことはできない」としていますが、だとしたらそのような記述式問題自体の採用を白紙から再検討する必要がありそうです。
英語民間試験に続き記述式問題でもここまでズタボロであることが明るみに出た以上、大学入学共通テスト自体の白紙化も含めて考え直す必要がありますが、私たちは日本を担う次世代のために「名誉ある撤退」を選ぶことができるでしょうか。
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ベネッセと大学入学共通テストのズブズブ過ぎる関係が明るみに出ています。
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