東日本大震災の後、ツイッターでは震災について、復興について、多くの情報が共有され、議論が行われ、またデマも流されました。
「東日本大震災からの復興に強い思い入れ」があるとされ、自民党衆院選候補に内定した元タレントの森下千里さんはいったいどのような発言をし、活動をしていたのか、当時を振り返ってみました。
◆元タレントの森下千里さんが自民党衆院選候補に「内定」
まず大元の情報として、自民党宮城県連が空席の宮城県第5選挙区支部の支部長に元タレントの森下千里氏を充てる方針を固めたことを報道各社が報じました。これは事実上、次期衆院選で宮城5区の公認候補となったことを意味します。
県連会長の西村明宏衆院議員や県連幹事長の菊地恵一県議らが森下氏と面会して異論が出なかったことから月内にも党本部に申請する予定。森下さんは3月14日に記者会見を開く見込みとのことです。
森下さんは名古屋市出身で、2019年12月に芸能事務所との契約を解除して芸能界を引退。読売新聞は関係者の話として「森下氏は東日本大震災からの復興に強い思い入れを持っている」との評価を掲載しています。
◆森下さんの震災と復興への思いをツイッターで辿ってみました
さて、東日本大震災や震災からの復興については芸能人を含めて多くの人がツイッター上で言及してきましたし、活動もしてきました。被災地の復興や原発事故の取材を含め、この10年間のそれらの活動はひと言で表せないほどです。
そんな中で森下さんの「東日本大震災からの復興に強い思い入れ」はどのようなもので、これまでどんな活動をしてきたのでしょうか。ツイッター上の軌跡を追ってみます。
まず基本情報として、森下さんは2010年2月にツイッターの利用を開始しています。震災時には1年以上の利用歴があったということで、今から見れば古参ツイッタラーと呼んで差支えのない長さです。現在のフォロワーは6万2000人ほど。
森下さんの2011年3月11日から1ヶ月間のツイートを見ると、当然のことながら地震に関わる話題が並んでおり、当日はロケで海岸付近から高台に避難したとのツイートが。それ以外もファンらと地震について会話をしたり、知人の安否に関するツイートをしていますが、これは当時のツイッタラーであれば誰もがやったことで不思議はありません。
復興支援に関しては、サンドウィッチマンの義援金への賛同やBEAMSの義援金の紹介などが見られる他、4月末に「芸能人カレー部」の一員として元格闘家の武蔵さんやタレントの石田純一さんらと共同で炊き出しを行う旨が報じられている程度です。もちろん義援金もボランティアや炊き出しも万単位の一般人も行ってきたことで、ことさら特別な話ではありません。
なお、ツイッター上のワードで検索してみると「義援金」に関するツイートは11年4月以降は見られません。
また「復興」に関しても自分でつぶやいたのは震災翌日以降は今年2月の東北の地震の際のツイートのみ。
「震災」は今年1月の田中将大選手の楽天イーグルスとの契約の際の1回のみとなっています。
「福島」「宮城」「岩手」で調べてみても震災関連は非常に少なく、「原発」も2つのみと、「森下氏は東日本大震災からの復興に強い思い入れ」を持っているとの触れ込みとは温度差があるように感じられます。
なお、森下さんは2014年には自身のブログに「防災女子、始めました~」とポストしています。
ですがこのポストでの表明後は特にツイッターでもブログでも防災についての言及はなく、今年の3月7日に「防災士」の試験を受けることを #東日本大震災から10年 #防災ガール のハッシュタグ付きで表明したのみ。今回の出馬報道の前日という、なんとも取ってつけたようなタイミングです。
もちろんすべてがツイッター上で拡散されるわけではありませんが、震災前からの古参ツイッタラーとして見ると、情報「拡散」ツールとして震災後に非常に大きな役割を担ってきたツイッター上で復興や防災についてのつぶやきほとんどないことには大きな違和感を覚えざるをえません。
震災から10年経った今年の衆議院に立候補するのであれば、震災復興への思い入れではなくこれまでの活動や実績を求められるタイミングなのではないでしょうか。
◆「トランプは人権問題に力を入れていた」発言やウイグル問題への言及も
なお、森下さんのツイートで興味深いのは2月3日の「トランプ前大統領が人権問題に力を入れていたのは周知の事実」というもの。
トランプ前大統領は就任直後から難民の入国を禁止し、メキシコとの国境に壁を作って不法移民の子どもを親から引き離すなどの不寛容政策を取ってきました。北朝鮮の金政権について 「他の国々も悪事を働いてきた」と人権侵害を軽視した発言も。
またトランプ前大統領はセクシャルマイノリティの権利保護を否定する政策を進めてきましたが、これは米連邦最高裁に違法と判断されています。
こうした状況がありながら「人権問題に力を入れていた」ことを「周知の事実」と明言する状況認識能力には疑問符が付けられそうです。また、こうした主張はQアノン陰謀論の信奉者に多く見られるもので、同問題への意見も気になるところ。
大統領不正選挙デマを垂れ流しまくった評論家、門田隆将氏を擁護する石平氏のツイートをいいね!しており、現在のアメリカ大統領が誰か質問してみたくなる状況です。
なお、上記ツイートにもあるように、森下さんは今年になってからウイグル問題について3回言及しています。
ですが、日本の外務省はウイグル問題を「日本として『ジェノサイド』とは認めていない」とし、「人権問題で後ろ向きという批判は当たらない。関係国と連携しながら対応していく」と突っぱねています。
当然ながらこの回答は日本政府として公式に行ったものとなり、つまりは菅首相の率いる自公政権の公式見解ということになります。森下さんの問題意識はウイグルでジェノサイドは起こっていないとする菅政権の見解と真っ向から対立することになりますが、この辺りの主張についてもぜひとも明らかにしていただきたいところ。
もちろんウイグル問題は極めて重大な人権問題ですが、この問題は右派が左派やマスコミを攻撃する際に「ホワットアバウティズム」的に唐突に持ち出されることがおおく、これは「ウイグル話法」とも名付けられています。
なお森下さんは「門田氏と百田尚樹氏の出演する虎ノ門ニュースのウイグル問題の動画をツイートするDappiを引用リツイートしてマスコミ批判をする北村弁護士」をいいね!するという、グランドスラムな数え役満も達成していることも指摘しておきます。
加えて森下さんがツイッター上でフォローしている人々もかなり壮観ですが、この先どうなるでしょうか…。
最後にウイグル問題に関しては、共産党は2019年時点で中国大使館に「ウイグルにおける人権抑圧の中止」などを求めて申し入れを行った他、今年に入ってからも痛烈に批判。
またチベット議連の会長も務めた立憲民主党の枝野代表も20年1月時点で「香港や中国新疆ウイグル自治区、チベットなどの人権問題でなかなか納得しがたい問題を抱えている」として、安倍前首相の習国家主席の国賓待遇を批判しています。
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