河村市長「リコール署名運動中心人物だったか証明しろ!」→証拠を片っ端から集めてみました



刑事事件として捜査が進められている大村知事リコール署名運動での大量署名偽造事件。高須クリニックの高須院長と名古屋市の河村市長がタッグを組んで大々的に始めた運動だったはずですが、河村市長はどうやらそう思われるのが気に入らないようです。

実際に河村市長はリコール署名運動で中心的な役割を担っていたと言えるのか、ファクトチェックしてみます。詳細は以下から。


3月4日の名古屋市議会本会議で、共産党市議がリコール運動における河村市長の役割について河村市長がリコール署名の中心人物だったと質問。すると河村市長が代表を務める減税日本の市議が「河村市長への侮辱、名誉棄損だ」と応戦します。

根拠なしに「署名偽造の中心人物」とすれば確かに名誉棄損となりそうですが、この市議はなぜか「リコール署名の中心人物」とすることを「侮辱、名誉棄損」と捉えているようです。

さらに不思議なことに、河村市長もこの発言に(私が署名の活動の)中心人物だったか証明しろとぶち上げるに至りました。

言うまでもなく、このリコール署名運動は高須院長と河村市長が中心となって行ったもの。その「証拠」を見ていってみましょう。

◆リコール運動の「応援団長」として設立時から参加
河村市長は立場上は「応援団長」としてコロナ禍の真っ最中にもかかわらず、極めて密な状態の中で街頭に立ったり商店街を練り歩いて受任者はがきを配るなど、運動の「顔」として極めて積極的に推進してきました。

こちらは7月26日にリコールの会アカウントから投稿された署名のお願い動画。公式サイトにしっかり掲載されています。


お辞め下さい大村秀章愛知県知事 愛知100万人リコールの会【公式】」ツイッターアカウントも高須院長と河村市長を「リコールの会ツートップ!」と正式に認めており、名実ともに中心的存在であることがよく分かります。


リコールの会発足会見には自称保守界隈の論客たちも集まりましたが、彼らの多くはその後この運動には近づかず、もっぱら高須院長と河村市長の2人が中心となって活動を続けていきした。


そんな中で会見に同席したひとり、一流ジャーナリストの有本香氏が10月24日に掲載した記事

「大村(秀章・愛知県)知事リコール、大村知事リコール! 河村たかし71歳、高須克弥75歳。年寄りが頑張っとるがね。若い人たち、リコール署名お願いしますよ~」


という河村市長の街頭での呼びかけから始まります。記事では「街宣車のウグイス嬢ならぬ「カラス(=男性の場合はこう呼ぶ)」役を自ら買って出て、名古屋駅から栄周辺までのルートを一回り半する間、ずっと街の人たちに語りかけた」としており、精力的な活動の様子が分かります。

「応援団長はメンバーではないから中心人物ではない」という主張もあるかもしれませんが、河村市長に関してはそれが通るような関係性ではありません。さらに見ていきます。

◆署名用紙、受任者願いのはがきに大きく河村市長の顔
こちらは佐賀での偽造署名報道の際にも大きく報じられたリコール署名用紙。そこには高須院長と並んで河村市長の顔が大きくプリントされています。まさに運動の「顔」であることが分かります。

名簿の束「書き写して」、会議室に数十人 リコール署名偽造、バイト男性証言:中日新聞Webより引用)

こちらの受任者を依頼するはがきでも、高須院長と並んで河村市長の顔がプリント。こちらには「なんと驚き!!名古屋市は大村知事に3,300万円しはらえと、コロナ中に訴えられた。署名集め応援してちょう!!」と、誰がどう見ても河村節でのメッセージが添えられています。


◆河村事務所からリコール事務局に名簿も貸し出し
河村市長は自身の事務所が管理する約3万人分の名簿をリコール事務局に貸し出したことを2月22日の定例記者会見で認めています

その名簿は2011年名古屋市議会議員選挙の際のリコール受任者約3万人分のもので、これを元にリコール事務局が受任者募集のはがきを出したとのこと。

こうした名簿は政治活動において個人情報保護法の適用はないため違法ではなく、これまでも国政選挙や地方選挙で応援を求める際に利用してきたと河村市長は述べていますが、この時点で個人ではなく事務所ぐるみの運動であることが分かります。

◆「名古屋市の公務として」リコールを推進
また「河村市長ネットワーク」は上述した2011年名古屋市議会議員選挙の際のリコール受任者宛に、今回の受任者を依頼する文章を送付しており、そこではリコールを「名古屋市の公務として主張」していることが明記されています。


これは極めて重要な文面で、河村市長が支援団体「河村市長ネットワーク」を巻き込み、しかも「名古屋市の公務として」リコール運動を推進していることが明記されているわけです。

つまり、いかなる意味でもこれは個人的な活動ではなく、政令指定都市の市長が支援団体と共に名古屋市の公務として名古屋市長が同じ県の知事をリコールしようとしていることになります。

◆リコール運動代表の予定?事務局長も紹介?
そもそも論として、高須院長は2月22日の会見の時点で「大村知事のリコール運動の応援を頼まれてお供しますと当日会場に行ったら河村市長はいなくて僕が代表になっちゃった。僕は応援団長だと思っていたのに河村市長がその位置に付いた」(会見動画22:00頃から)と発言。あくまで河村市長のリコールに自分がお供として乗ったつもりだったとの立ち位置を力説します。


加えて高須院長はこの会見で「事務局・事務局関係者の関与は無いか?」という質問に対して「事務局長を信じます。事務局長を信じないで組織は動きません。何で信じるかというと、河村市長が紹介した人材なんです」(会見動画21:00頃から)と回答。田中氏を事務局のトップを据えたのも河村市長の主導との認識を示しています。

この2つの部分に対しては高須院長と河村市長の発言は食い違っており、時系列でも微妙に変化しているためどれが真実かを現時点で確定するのは困難。

とはいえ、リコールの会の設立と実働部隊のトップである事務局長の選出という運動の中心となる部分について河村市長が関与していることは間違いありません。

◆河村市長はリコール運動の「中心人物」と呼ばざるを得ない
ということで、河村市長は「応援団長」という肩書ながらもその会の設立から事務局長の紹介、受任者集め、そのための名古屋市内での名簿の貸し出し、動画や街頭での演説、各種資料や署名用紙への顔出しなど、あらゆるレベルで深く関与していることが分かります。

結論として、ここまで深く関わりながら「中心人物ではない」とするのは極めて困難。むしろなぜこんなにリコール署名に関わっていながら「中心人物」と呼ばれることを嫌うのか疑問に思われるレベルです。

署名偽造を見抜けなかったことを批判されたくない気持ちが先になっているのかもしれませんが、この事件が民主主義の根幹を揺るがす挑戦的な組織犯罪である以上、そこは受け止めるしかなさそうです。

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