昨年消滅したサイパンへの直行便をスカイマークが復活させるというニュースが入ってきていますが、当のサイパンの状況は大きく変わっています。それはレクリエーション目的の大麻の合法化。これまで遠い海の向こうの話だった「大麻ツーリズム」が一気に目の前のものになってきました。詳細は以下から。
◆スカイマークがサイパン直行便を復活へ
サイパンは以前はハワイ、グアムと並ぶ日本人御用達のビーチリゾートでしたが、いつしか日本人の旅のスタイルもより幅広いものとなり、いつしか少しずつ忘れ去られていきました。
そうした中で2018年には最後の直行便を運行していたデルタ航空が撤退し、成田から3時間半で飛べていたこの南国の島へは現在ソウルやグアムなどを経由しなければならず、片道10時間を超えるフライトが当たり前という状況になっています。
こうした中でスカイマークが3月22日に成田とサイパンを結ぶチャーター便の運航を開始。夏頃には1日1便の定期運行を目指しているとのことで、再びサイパンへのアクセスが容易になる可能性が大きくなってきました。
◆変化するサイパンの事情と「大麻ツーリズム」
ですが、去年と今年では状況は大きく変化しています。サイパン島を含む米領北マリアナ諸島は2018年8月に医療とレクリエーション目的の大麻を合法化。9月に北マリアナ諸島の知事がこの法案に署名を行い、現在は議会が大麻委員会を設置して細かい法整備を進めている段階です。
これにより、サイパンではおそらくは1~2年の間にカナダやアメリカ合衆国の大麻合法化州と同じように、21歳以上の大人であれば合法的に大麻を所持・売買・使用することができるようになります。
大麻が合法化された国や地域では当然ながら、大麻が非合法の国や地域から大麻を楽しむための「大麻ツーリズム」が生まれます。例えばアメリカ合衆国で最初にレクリエーション目的の大麻が合法化されたコロラド州では、1年後の時点でデンバー地域のレクリエーション目的の大麻の客の半分が観光客で、観光地として有名な山岳地帯では9割にも上っています。
つまりサイパンにとって、「大麻ツーリズム」はまたとないインバウンドとなる可能性がある産業だということ。合法的に大麻を楽しめる南国のビーチリゾートということになれば、スペインのイビサ島やタイのパンガン島に引けを取らないデスティネーションと認識されるかもしれません。
◆「大麻ツーリズム」導入へのサイパンの悩みとは
ですが、日本からの直行便がなくなった後のお得意様の観光客は中国と韓国です。日本も含めた東アジアの国々では欧米諸国と違い、現時点でも大麻がハードドラッグと同等に危険な薬物であると認識されています。
この事から、レクリエーション目的の大麻合法化が中国や韓国の家族連れ観光客に対してマイナスイメージとなる事を北マリアナ観光協会のChristopher Concepcion会長は懸念しています。
もちろん既にカナダやアメリカ合衆国の大麻合法化州という前例がある以上、それらに倣った「大麻ツーリズム」をビジネスとして始める動きが起こることは間違いありませんが、メインの顧客である中国人や韓国人、そして日本人がどのように反応するのかは現時点ではまだ未知数です。
それでも韓国では先年11月に医療大麻が合法化され、タイも12月にこれに続くなど、アジアでの大麻への認識も少なからぬ変化の途上にあると言いえます。
◆「大麻ツーリズム」は日本に上陸するのか
スカイマークが復活させるサイパン直行便は、結果的に日本人に合法化されたレクリエーション目的の大麻への最短でのアクセスを提供することになります。
言うまでもなく現在の日本では、大麻は医療目的かレクリエーション目的かを問わずに禁止されています。しかし弁護士でもある甲南大学法科大学院の園田寿教授によれば、大麻取締法で大麻が合法化された国や地域での大麻の所持や売買、使用を逮捕・処罰することはできません。
また同様に日本の旅行代理店などが「サイパン大麻体験ツアー」のようなツアーを企画したとしても罪に問うことはできません。これは日本では違法なカジノや射撃場を訪れるツアーを日本の企業が組んだとしても犯罪にならないのと同じ事です。
であれば「大麻ツーリズム」が上陸するかどうかは、最終的にはいわゆる「倫理的な問題」になります。日本ではご存じのように、覚醒剤などのハードドラッグと共に大麻に対しても古くから「ダメ・ゼッタイ」キャンペーンが続けられてきました。
一方で、G7の一角であるカナダやアメリカ合衆国の2割を超える州がレクリエーション目的の大麻を合法化していることがテレビでも報じられて知れ渡るようになり、医療大麻で主に用いられる大麻有効成分CBD入りのオイルなどのプロダクトは日本国内でも以下のように簡単に入手可能となっています。
意外とあっけなく日本人の認識が変わり、サイパンへの大麻体験ツアーが夏のバケーションの定番となる日が来るのかもしれません。
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