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「客にダンスをさせる営業に関する風営法の規制の見直しに当たって考えられる論点」に対するパブリックコメントの募集が本日から始まりました。FAXや電子メール、ウェブ上のフォームから受け付けています。詳細は以下から。
警察庁が秋の臨時国会に提出予定の風営法改正案。この中でダンス営業の規制緩和を議論する有識者勉強会が15日に開かれ、業界側や地域住民らからヒアリングも行われていく予定ですが、「時間が限られており、幅広く意見を集めたい」とのことからパブリックコメントの募集を開始しました。
パブリックコメントは本日から8月7日まで募集しており、募集方法(pdf)は郵送、FAX、電子メール、電子政府e-Govの送信フォームからとなっています。
郵送:〒100-8974
東京都千代田区霞が関2-1-2
警察庁生活安全局保安課企画係
パブリックコメント担当
FAX:03-3581-5936
電子メール:hoan@npa.go.jp
WEB:パブリックコメント:意見募集中案件詳細|電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
ダンス規制 25日からパブリックコメントを募集 - 毎日新聞
なお、注意すべき点はこのパブリックコメントが「客にダンスをさせる営業に関する風営法の規制の見直しに当たって考えられる論点」に対する意見の募集との形をとっていること。
(別紙)客にダンスをさせる営業に関する風営法の規制の見直しに当たって考えられる論点(pdf)
これに対し岩村健二郎早稲田大学法学部准教授は以下のようにTwitterで指摘しています。
風営法パブコメ「論点」について(終)警察のナラティブには、「風営法の何が問題なのか」についての言及はない。「改正に伴って出現するかもしれない問題」の対処を問うている。しかし問題が法の不備である場合、原因と結果を取り違えているかのようなこのアプローチでより良い改正になるのだろうか。
— 岩村健二郎 (@Quenchan) 2014, 7月 24
風営法の問題点についてはNOON裁判でも繰り返し指摘されており、NOON訴訟弁護団は無罪判決を受けた声明の中で風営法の問題点を
「ダンスに対する社会の評価が大きく変わり、社会や文化のありようが変動しているにもかかわらず、終戦直後の混乱期の価値観を引きずり、曖昧な根拠で人を罪に問う風営法の規定のいい加減さにある」
【判決文リンクあり】NOON裁判報告集会・記者会見レポート、大阪地方裁判所はいかにダンス営業規制を判断し無罪判決を言い渡したか BUZZAP!(バザップ!)
と指摘しています。風営法の時代に則さない社会認識や価値観、そしてダンスの定義などの根拠の曖昧さについての言及、指摘がないままに改正によって起こると想定する問題にのみ論点を置いています。
なお、警察庁の「論点」の中では
風営法の規制に違反して営まれている3号営業の中には、騒音・い集、年少者の立入り、店内外における傷害事案、もめごと等、薬物売買・使用容疑、女性に対する性的事案等の問題がみられるものもあり、過去には、地元住民から警察に対して強い取締り要望が寄せられています。
警察では、地元住民からのこのような取締り要望等を踏まえ、営業者に対して指導・警告を行うとともに、この指導・警告に従わず、同様の問題を起こしている悪質な営業者に対して取締りを行っているところです。
とされていますが、大阪地裁は判決の中でわいせつ行為が行われる危険、性風俗秩序を害する危険が実質的に認められるものだけが風営法の無許可営業罪の規制の対象になり得るとしています(現在控訴中)。
ここで取り上げられている「風営法の規制に違反して営まれている3号営業」が大阪地裁の判決を受けたものであるかが不明である上「騒音・い集、年少者の立入り、店内外における傷害事案、もめごと等、薬物売買・使用容疑、女性に対する性的事案等」とある中で「女性に対する性的事案」「年少者の立入り」以外は明確に風営法とは関係がないと明言されています。
また、この「論点」の中で警察庁はクラブなどの「客に飲食をさせダンスをさせる営業」である3号営業の見直しについて風俗営業から除外し、別途の法的規制を設ける事に関して
別途の法的規制を設ける場合には、どのような営業を対象とし、どのような規制を設ける必要があるか。その場合には、客にダンスをさせる営業のみならず、客に遊興をさせる営業全体について見直しをする必要があるのではないか。
としてこれまでのダンスに関しての規制だけではなく「客に遊興をさせる営業」全体についての見直しの提案が行われています。遊興とは警察庁によると
風営法では、深夜(午前零時から日出時までをいいます。)において飲食店営業(風俗営業等を除きます。)を営む者は、深夜において客に遊興をさせてはならないこととされています。
遊興とは、営業者側の積極的な行為によって客に遊び興じさせることをいい、具体的には、不特定多数の客に歌を聴かせたり、ダンス、ショウ等を見せたりする行為、生バンドの演奏等を聴かせる行為等が該当し、客にダンスをさせることも遊興に当たると考えられます。
したがって、深夜において客にダンスをさせる営業の規制の在り方を検討するに当たっては、深夜において客に遊興させる営業の規制の在り方を検討する必要があると考えられます。
とのこと。より規制の網を広げようとしているとも受け取れるこの叙述、「客にダンスをさせること」が遊興に当たるものなのか、そして突然提案された飲食店営業の深夜に「客に遊興をさせる営業」の見直しの問題についても注意深く考える必要がありそうです。
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