産経新聞の中高生に向けた「国民の憲法講座」と題された記事で全く意味不明なLGBTへの差別イラストが掲載されて物議を醸しています。詳細は以下から。
4月12日の産経新聞オピニオン欄に連載されている「中高生のための国民の憲法講座」の「海外渡航の自由は無制限か」というテーマで掲載された記事に、なぜか女装したお父さんを引き合いに出したイラストが掲載されており、批判が広まっています。
問題はこのイラスト。「女装は憧れだったんだ。一度だけこの格好で出かけたいんだ。」というお父さんに対してお母さんが「ちょっとお父さん!家族の迷惑も考えて!」と激怒するというもの。キャプションには「海外渡航をめぐっては”お父さんの自由”ではすまされない問題があります」と書かれています。
まず異性装の自由に対する家族の理解度のなさと海外渡航の自由とその制限についての関係が全く意味不明。性自認とカミングアウトの問題は非常にプライベートでセンシティブな問題ですが、どこをどうすれば海外渡航の問題に結びつくというのでしょうか。
トランスジェンダー的な傾向を持っているように描かれているお父さんが自由を行使して家族に迷惑をかけていると揶揄する差別的なイラストを掲載することがいったいどのように海外渡航制限への理解に寄与するというのか、なんら説明も補足もありません。
まさか、憲法をタテに海外渡航の自由を主張することは「お父さんが女装して家族に迷惑をかける」よりもひどいワガママだとでも言いたいのでしょうか。どのみちここで異性装の問題をわざわざ引き合いに出す必要は全くなく、単に差別的な意識をチェックなしに紙面に垂れ流す結果となっています。
なお、この記事の内容は、平成国際大学法学部元教授の高乗正臣氏による、憲法22条による海外渡航の自由とその制限についての解説。
ISによる日本人人質殺害事件の際にシリアへの渡航計画を表明したカメラマンに外務省が旅券返納を命じた問題に絡めて憲法の認めた自由と、公共の福祉を理由にした制限について述べています。
高乗正臣氏は渡航制限が憲法違反であるとする見解に触れながらも、外務省による渡航制限の根拠として「わが国が築いてきた諸外国との信頼関係を維持することや外交・防衛問題に関する国際秩序に反しないことが重要」として、さらに裁判所が「国際情勢の推移や外交上の影響などについて十分な資料と的確な判断能力、責任をもっていないのが普通」として、「外務大臣の判断を尊重することには相当の理由がある」と論じています。
三権分立を考えれば、司法の憲法に関する判断を行政府が対外関係を理由に逸脱することが妥当であるとするには無理があります。
また、記事の最後に述べられている最高裁判所が旅券法規定による海外渡航の制限について合憲の判決を示した例として挙げられているのは帆足計事件のこと。
帆足計事件 上告審
サンフランシスコ講和条約発効直前の1952年3月、判決文の表現を借りれば「占領治下」にある日本から社会主義国であるソビエト連邦(当時)の国際経済会議に参加しようとビザ発給を申請したところ、当時の吉田茂外務大臣に拒否された事件です。
最高裁はこのビザ発給の拒否について「著しくかつ直接に日本国の利益又は公安を害する虞れがある」として上告を棄却したというもの。ケースが異なると但し書きは付いていますが、あまりにも違いすぎて同列に論じるのは不可能です。
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