自衛隊が「後方支援」で拘束されてもジュネーブ条約の「捕虜」としての保護は受けられない、岸田外相が明言



「戦争法案」に関し、自衛隊が海外で「後方支援」を行っている際に捕虜になったとしても、捕虜の人道的待遇を義務付けたジュネーブ条約が適用されないことが明らかになりました。詳細は以下から。


問題の答弁が行われたのは7月1日の衆院平和安全法政特別委員会。民主党の辻元清美議員から岸田外務大臣への質問で「自衛隊が拘束されたらジュネーブ条約の『捕虜』として扱われるのか?」との質問に対し、岸田外務大臣は「後方支援は非紛争当事国として武力行使に当たらない範囲で行われるので想定されない」とし、自衛隊は捕虜の人道的待遇を義務付けたジュネーブ条約が適用される「捕虜」にはならないとの認識を示しました。

これに対して辻元議員は「実際に拘束された場合、ジュネーブ条約上の『捕虜』でなかったら民間人の人質と同じ扱いなのか」と質問。岸田外相は「その身柄は少なくとも国際人道法の原則及び精神に従って取り扱われるべきであることは当然」としましたが、上記の答弁を繰り返すのみで議事は一時中断しました。

その後再び答弁に立った岸田外相は「自衛隊員は紛争当事国の軍隊の構成員ではないのでジュネーブ条約上の『捕虜』となることはありません」と明言しています。

問題の質疑は以下動画の15分30秒から。

2/2 辻元清美(民主)《安保法制》平和安全特別委員会 平成27年7月1日 - YouTube


政府の指す「後方支援」が兵站と呼ばれる武力行使の一環であることはこれまでの国会質疑で繰り返し指摘されてきました。

しかし政府がこの事実を認めず、「後方支援」を武力行使ではないとし続けることで、そこに参加する自衛隊が捕虜の人道的待遇を義務付けたジュネーブ条約の適用対象から外れるという事態が起こりうることとなります。

時事ドットコム:後方支援時の拘束「捕虜に当たらず」=岸田外相

また、問題は「加害者」となった時にも発生します。例えば自衛隊員が現地で非戦闘員を過失で誤射してしまうなどの事件が起こった際は国際人道法違反とみなされます。

しかし自衛隊には軍法がない(軍事法廷の設置は違憲)ため、日本の刑法で裁かなくてはならなくなります。その際日本の刑法は国外犯規定があり、海外での日本人の過失を裁けないため、自衛隊の過失は当該個人の犯罪として裁くしかなくなります。

国連PKO元幹部として東ティモールやシエラレオネで実際に活動を行った東京外国語大大学院の伊勢崎賢治教授が同じ7月1日に参考人質疑でこの件について詳細に意見陳述。

「自衛隊の活動のような、軍事行動という個人の意志が極度に制限される国家の命令行動の中での過失が自衛隊員個人の犯罪として責任を負わなければならないことは重大な矛盾である」と厳しく指摘しています。

【安保】伊勢崎賢治(参考人) 平和安全特別委員会 2015年7月1日 - YouTube


この「戦争法案」に対しては「違憲」との指摘を始めとした反対意見が多いだけでなく説明不足との意見も未だに根強く残ります。この法案が成立すれば実際に海外に派遣される自衛隊が、現地で拘束される、民間人を誤射する、といった起こり得る事態に対してどのような問題が起こるのか、法案への賛否を問わずしっかりと認識されなければなりません。

日本の国防に命を掛ける自衛隊が、海外での活動の中で、拘束された際に捕虜として人道的に扱われない、任務中の過失で「犯罪者」の烙印を押される、そうした可能性が放置されたままで果たしてよいのでしょうか?

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