【追記あり】安倍首相「テレビがどこも呼んでくれない」ためニコ生で連夜「戦争法案を丁寧に説明」、コメ欄の「ガースー」コールに大喜び



全方位から「違憲」の「戦争法案」として鋭い批判を浴びている「安保法案」。安倍首相が「国民に理解を求める」ためにニコ生の自民党チャンネルの番組に出演しましたが、残念な結果となってしまったようです。


安倍首相が強行採決をしてでも今国会での成立を目指す「戦争法案」。6月頭の憲法学者の「違憲」指摘に始まり、国会の内外から多くの批判に晒されてきました。

これに対し、強行採決をしてでもなんとか今国会で同法案を成立させたいと願う安倍首相は「法案の説明が不十分で理解が深まっていない」ため国民が反対に回っていると考えたためか、「国民に丁寧に説明し、理解を求める」ために自ら説明することを決意。

安倍首相:ネットで安保説明 政府・与党に危機感 - 毎日新聞

しかし産経新聞によると「本当はテレビ番組に出たいのだが、どこも呼んでくれない」とのことで、安倍首相が説明をする媒体として選んだのはニコニコ生放送。しかも自民党チャンネルの放送する「CafeSta」でした。

ニコ生ではNGワード設定があることから、特定の批判的なコメントが削除されている可能性があります。また質疑や討論形式ではなく、あくまで首相の言い分のみを流すという放送スタイルは異論や反論で炎上し、裏目に出ることを防ぐためとの指摘もされています。

こうした一見オープンながらも異論や質問をはさみようのない空間であっても、放送したという形を作ることで、「国民に丁寧に説明した」と言える証拠をひねり出した、そうした批判も既に上がっています。

安倍首相は放送で「戦争法案とか、怖い法案じゃないかとか、残念ながらそんなイメージが広がってしまった」と弱音を吐きながらも「いざというときのための法律で、つくっておけば安心だ。戦争や紛争の抑止力にもなる」として今国会での成立をあくまで目指す方針は変えていません。

安倍首相は集団的自衛権を「戸締まり」に例えて説明。

備えあれば憂いなしというのは、一般の家庭でも戸締まりをしっかりしていれば泥棒や強盗が入らない。またその地域、町内会でお互いに協力しあっていく。隣のお宅に泥棒が入ったのが分かったらすぐに警察に連絡する。

そういう助け合いがちゃんと出来ている町内は犯罪が少ない。そんなところに入ったら泥棒は捕まってしまうから入れませんよ。それが抑止力なんですね。



としていますが、違憲か合憲かの話を置いておくとしても、この論法では「地域、町内会で助けあい、協力しあうべき」という話になってしまい、隣国である中国の脅威を持ちだして集団的自衛権の行使を語る安倍政権の姿勢とは矛盾してしまっています。

また、仮に同じ町内会の隣人である中国を「泥棒」だと考えるのであれば、ホルムズ海峡のような隣町まで出かけて泥棒の警戒をながら、近くの「泥棒」に対して自宅の戸締まりを手薄にするのは本末転倒となってしまいます。もちろんどちらも堅固に守るのであれば自衛隊員の増加や軍事費の増大は避けられません。

もちろん「そんな時はアメリカ合衆国が守ってくれる!」という話になるのでしょうけれど、そうであれば従来の日米安保条約と個別的自衛権で話が済んでしまうため、今回の「戦争法案」を成立させる意味がなくなってしまいます。

というわけで、20分間の番組でしたが残念ながらこれまでの自民党の国会答弁以上に国民にとって分かりやすい説明がされたとはお世辞にも言えません。また、今回のニコ生は安倍首相直々に出演する肝いりの「国民への丁寧な説明」であったはずですが、来場者は11730人しかおらず、残念ながら国民の1万人にひとりも見ていない計算となります。

6月28日時点で8割以上にも上っている「説明不十分」と考える国民を、この程度で「丁寧な説明をした」として理解が深まったとするのはさすがに無茶。高村副総裁は理解が十分得られなくても強行採決で法案を成立させる考えを示しましたが、国会の内外でこうした強硬姿勢を貫くことは今後の政権運営に大きな障害を残すことになりそうです。

なお、自民党は同放送をYouTubeにもアップしており、以下より視聴可能。

【CafeSta特番】「安倍さんがわかりやすくお答えします!平和安全法制のナゼ?ナニ?ドウシテ?」【第1夜】(2015.7.6) - YouTube


以後は今夜7日の21:30分からと、8日、10日、13日にそれぞれ放送が予定されていますが、果たして「国民への丁寧な説明」は行われるのでしょうか?

【CafeSta特番】安倍さんがわかりやすくお答えします!平和安全法制のナゼ?ナニ?ドウシテ?【第1夜】 - 2015 07 06 21 00開始 - ニコニコ生放送

【追記】
「本当はテレビ番組に出たいのだが、どこも呼んでくれない」とぼやいた安倍首相の発言に対し、The Chronicle of Higher Education紙、Irish Times紙、The Economist紙でジャーナリストを務めるDavid McNeill記者は「日本外国特派員協会は繰り返し安倍首相を招いているんだけど、ずっと拒否され続けてるんだよね」とコメントしています。




両者の利害が完全に一致しているので、ぜひとも安倍首相には日本外国特派員協会で海外のジャーナリストの質問に答えながら日本と世界に向けて戦争法案の合憲性と必要性を丁寧に説明し、今国会での円満な採決を目指していただきたいものです。

【さらに追記】
2夜目にはスガさんの家に強盗が入ってなぜかお友達のアベさんの家に助けを求める電話がかかってくるなど、斜め上の例え話が炸裂しています。国家間の話を個人間の話に例えるのはあまりに無理が大きいのではないでしょうか。なお、「戦争法案」でできることとして

「『安倍は生意気なやつだから今度殴ってやる』という不良がいる。友達のアソウさんと一緒に帰り、3人ぐらい不良が出てきて、いきなりアソウさんに殴りかかった。私もアソウさんを守る。これは今度の平和安全法制で私たちができる(ことだ)」



とも語っていますが、このたとえ話の文脈で言うのであればアベさんにできるのは安全な場所から絆創膏やレッドブルを投げてあげることだけで、しかも不良がアベさんに襲いかってきた場合は即座にアソウさんを置き去りにして逃げると国会で答えているのですが、大丈夫でしょうか?

時事ドットコム:スガさんは助けない?=安倍首相、集団的自衛権で例え話

第2夜の映像はこちらです。

【CafeSta特番】安倍さんがわかりやすくお答えします!平和安全法制のナゼ?ナニ?ドウシテ?【第2夜】(2015.7.7) - YouTube


【さらに追記】
安倍首相の秘書により、第2夜のニコ生放送上で巻き起こった「ガースー」コールに安倍首相が喜んでいたと報告されています。なお、この写真は投稿した秘書によると「帰宅後に皆様のご意見ご感想等をPCにてチェックする安倍さん」です。

安倍 晋三



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