「賃金の節約のため」非正規雇用がついに4割にまで増大、所得格差もくっきり


Photo by Alexander Olm

厚労省が4日に発表した就業形態の多様化に関する総合実態調査で非正規雇用者の割合が史上最大となったことが分かりました。詳細は以下から。


厚生労働省は11月4日に2014年版の「就業形態の多様化に関する総合実態調査」を発表。これによるとパートやアルバイト、派遣労働者などの非正規社員の労働者全体に占める割合が1987年からの調査で初めて4割に達しました。

その非正規雇用の6割近くを占めるのがパートタイム労働者。これはいわゆるパートタイマーだけでなくアルバイトなどの「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」を指す言葉です。

いったいなぜ非正規雇用がこのように増大するのか。調査の中で正社員以外の労働者を活用する理由(複数回答)として最も高かったのが「賃金の節約のため」の38.6%。次に「1日、週の中の仕事の繁閑に対応するため」が32.9%となっており、安価な穴埋め要員として「活用」されているケースが少なくないことが分かります。

では実際に非正規雇用者の所得や待遇はどうなっているのでしょうか?2014年9月の賃金総額では正社員の賃金は「20万円~30万円未満」が33.7%で最も高く、次いで「30万円~40万円未満」26.8%。しかし非正規雇用者では「10万円~20万円未満」が41.5と最も高く、「10万円未満」が36.7%にも上ります。派遣労働者だけを取ってみても「10万円~20万円未満」は43.5%にも及び、正社員との賃金格差が浮き彫りになっています。

また、厚労省は調査のポイントとして非正規労働者が現在の就業形態を選んだ理由として「正社員として働ける会社がなかったから」が全開より4%程減少していることをピックアップしていますが、契約社員(専門職)と派遣社員ではそれぞれ31.8%、37.7%となっており、パートタイム労働者の11.7%を大きく上回ります。

なお、パートタイム労働者が現在の就業形態を選んだ理由は「自分の都合の よい時間に働けるから」「家計の補助、学費等を得 たいから」「家庭の事情(家事・育児・介護等)と両立しやすいから」がトップ3となっており、学生バイトや主婦らによるいわゆるパートタイマーが多いことが伺えます。

そして「正社員に変わりたい」と回答した非正規労働者は契約社員(専門職)で53.8%、派遣労働者で48.2%といずれも半数近くが正社員になりたいと考えており、非正規労働者全体で見ても2010年の調査から5%多い30.7%が正規雇用を求めています。

非正規雇用が増え続けた上に彼らの賃金が正規雇用者よりも低い水準に押さえられていることが如実に現れた結果となったわけですが、今年9月に成立した「改正派遣法」によって非正規雇用への固定化がさらに進むことは確実。日本の国内市場がさらに縮小する大きな要因となりそうです。

平成26年就業形態の多様化に関する総合実態調査の概況|厚生労働省

非正社員、初の4割 雇用側「賃金の節約」 厚労省調査:朝日新聞デジタル


(Photo by Alexander Olm

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