9月に大きな反対運動の中で採決された安保法制に対し、自民党から社協に政治的圧力が掛かっていたことが判明しました。詳細は以下から。
「戦争法案反対」の大きなうねりが国会前を埋めた2015年8月、北海道美瑛町では自民党からこの問題を「皆で考えよう」としただけの町社会福祉協議会(社協)に強い圧力が掛かっていたことが明らかになりました。
美瑛町の社協が8月末に町内2700戸に対し新聞各紙の朝刊に「皆で考えよう安全保障法案 いま、世界では紛争により尊い命がうばわれています。今の平和と幸せを次世代につなげたい。私たち 美瑛町社会福祉協議会は争いのない 助けあいの社会を目ざします」とのメッセージが記された折込チラシを配布。
経緯としては複数の社協の理事が「平和を考える上で、安保法案について社協として何らかのメッセージを発信したい」との提案を行い、出席者15人全員が承認。会長・副会長を含めた理事6人が属する三役会が作成し、費用の約3万円を6人で自己負担したもの。チラシは法案への賛否には触れておらず、社協側も政治的に偏らないように配布したと語っています。
しかしこれに対して激しく反発したのが自民党美瑛支部。法案成立後の9月下旬に「メッセージの内容や、理事が政治的内容の意思決定にかかわることに問題はないか」との質問状を提出。社協側は「あくまでも平和で幸せな社会の構築を皆で考えようという啓発活動」としましたが、後に混乱を招いたことを文書で謝罪。
ですが自民党美瑛支部はこれに飽きたらず、10月中旬には「協議会の社会的存続をも危ぶまれる大失態」として、チラシ作成に関わった副会長2人と理事1人を名指しして「役員としての資質欠如」「町民を混乱させた」とし、処分を求める「要望書」を町社協に提出するという強攻策に打って出ます。
社協はその要望書の5日後に理事会で協議、その後開かれた三役会で批判を受けた3人を含む理事4人が「混乱の責任を取る」との名目で退任が決定。会長は厳重注意に処せられました。
政治的な偏りを避けるために法案の賛否も明記されないという配慮がなされた上に、単に「今の平和と幸せを次世代につなげたい」として安保法制を「皆で考えよう」としただけのチラシに対し、政権与党の支部から執拗な圧力が存在していたことは驚くばかり。
この件について自民党美瑛支部の福井努支部長は「両者で話は済んでおり、取材には応じられない」として一切釈明を行うつもりはない模様です。
平和という誰もが願う最も基本的な希望について皆で考えようというメッセージが「町民を混乱」させるというのはどういったことなのでしょうか?政府が作ろうとする法律や政策に対して国民が考えることを「混乱」と呼ぶのであれば、その先にあるのはオーウェルの「1984」で描かれたようなディストピアにしかならないのではないでしょうか?
美瑛町社協の安保チラシに自民横やり 処分要求 「混乱招いた」4理事退任 どうしんウェブ/電子版(政治)
社協のチラシ「政治的」、自民指摘で4理事退任 北海道:朝日新聞デジタル
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