「江戸しぐさ」「サムシング・グレート」などのトンデモでお馴染みの育鵬社の教科書に関し、アンケートで同一文面で「支持」を訴えた回答が多数発見されました。
大阪市教育委員会は2015年8月に育鵬社の歴史・公民の教科書を採択し、今年の4月から市立中学129校で使われることとなっています。
育鵬社の教科書は歴史修正主義的であるとの批判がある上、かつては「江戸しぐさ」というデマを平然と掲載、現在も「サムシング・グレート」については掲載し続けているトンデモ教科書として採択に反対する意見が途切れた試しがありません。
その育鵬社版教科書の大阪市での採択に関し、アンケートの回答に大きな問題が発覚しました。
大阪市教委は採択の際の審議冒頭に、アンケートで肯定的な意見が約7割(779件)、否定的な意見が約3割(374件)と報告していましたが、市民団体が情報開示請求によって回答の写しを入手、共同通信が分析したところ、ほぼ同じ文面で筆跡の似た回答が10枚以上あるケースが少なくとも8例、計118枚にも及んでいました。
共同通信は企業動員の可能性に言及し、採択の公正さをどう担保するかという問題を提起しています。
確かに総数1000件前後のアンケートであれば、組織的な動員で結果を少なからず左右することは難しくありません。今回「ほぼ同じ文面で筆跡の似た回答が10枚以上」というケースに限っても全体の1割以上に及んでおり、全体の動員による結果の操作はより大きなものだった可能性もあります。
大阪で育鵬社というと思い出されるのが、大阪府岸和田市に本社を置くフジ住宅が会長名で社員らに太平洋戦争を「欧米による植民地支配からアジアの国々を解放」するとの目的が掲げられた点などを強調した育鵬社の教科書を称賛する文書を配布していたこと。
さらにフジ住宅は社員らに対して各地の教育委員会が育鵬社の教科書を採択するよう、住所地の市長や教育長らに手紙を書き、各教委の教科書展示会でアンケートに答えるよう促し、「勤務時間中にしていただいて結構です」とまで書き添えていました。
これはフジ住宅で働く在日韓国人女性が、社内で民族差別的な内容や「自虐史観」を攻撃する内容を含んだ新聞や雑誌のコピー、「嫌韓本」「嫌中本」といったヘイトスピーチが記された文書を数年間に渡って連日配布されたことを巡って会社を訴えた際に明らかにされたもの。
そうした一連の文書配布の中にあったのが育鵬社の採択運動への協力要請であり、女性はフジ住宅の会長が社員に対して協力を求めることは事実上の強要に当たると訴えていました。
現時点ではこのアンケートに対するフジ住宅の関与の有無は明らかにされておらず、この要請が「強要」に当たるかの判断もなされていませんが、大阪に本拠地を置く上場企業が会長名で社員に対して育鵬社の教科書採択に向けて強い働きかけを行っていたことはれっきとした事実。
こうした働きかけが公立校の教科書採択という大きな問題に影響を与えていたとすれば、そこに公正さは担保されていないと言わざるを得ないでしょう。
同一文面で育鵬社「支持」 大阪市教科書アンケート、動員か - 共同通信 47NEWS
育鵬社支持に動員か 大阪市の教科書調査で 沖縄タイムス+プラス
育鵬社教科書の採択運動「強要され苦痛」勤務先を提訴:朝日新聞デジタル
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